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美術・小道具・持ち道具スタッフの声(JFP取材vol.05)

映画業界で働く女性を守る会(以下swfi)を立ち上げ活動する代表のSAORIさんと副理事の畦原さんにお話を伺いました。

SAORI(代表)
2001年ボランティアスタッフとして映画業界に入り、以降様々な映画やドラマの小道具を担当。
自身の出産を機に、映画業界で子供を育てながら働くことの難しさに直面し、NPO法人映画業界で働く女性を守る会を設立。
現役の小道具として現場で働くスタッフの感覚を持ちながら、映画をはじめとする芸能・映像業界で働く女性の労働環境をより良くするため奮闘中。主な作品
「TRICK劇場版2」「ALWAYS 続・三丁目の夕日」「八日目の蝉」「ヒミズ」「少年H」「希望の国」「新宿スワン」「チア男子!「不要不急の銀河」「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」「ツーアウトフルベース」ほか(写真撮影:下林彩子)
畦原 友里(副理事)
元映画美術スタッフ。
妊娠を機に映画の仕事から離れ、その後生命保険業界に転職。
子育てと仕事を両立する中で育児休暇等を利用し、社会保障の大切さを実感。
映画業界にも女性を支える制度が必要と考え、NPO法人設立に参加。
現在は美術会社UNeの経理を務めつつ、特撮美術で培ったミニチュア作成の技術を活かし立体クッキーの製造販売も手がけている。自身は諦めざるをえなかった映画業界がよりよい環境になることを目指して奮闘中。

1. キャリアの入り口

ーSAORIさんはどんなお仕事をしてきましたか?

SAORI:私は主に、映画やドラマの小道具・持道具の仕事をしています。持道具というのは、衣裳以外の装身具を調達・準備・管理・現場操作する仕事です。具体的には、俳優部がつける靴、鞄、帽子、腕時計、アクセサリーなどを用意します。

小道具としては、携帯電話や手帳、劇中に出てくる消えもの(食べ物・飲み物など)の準備や現場操作もやります。小道具・持道具は装飾部の一員で、装飾部とは、分かりやすく言えば、持ち運べる範囲のもので劇中に登場するものを用意する部署です。スポーツものだと、ボールやラケットも用意するし、殺人事件だったら、ナイフとかも用意する。やることが多い部署です。テレビと映画で、部署の住み分けが微妙に違ったりもしますが、大まかに言うとこういった仕事になります。

セット撮影時の持道具ベース

ー業界に入ったきっかけは?

SAORI:私は一般的な入り方と違って、当時通っていた高校の講師が漫画家の古屋兎丸さんで、園子温監督の映画のポスターを描いていて、見に行ったところで園子温監督を紹介していただきました。その頃、映画が好きだったのもあって、園子温監督に「じゃあ、俺の次の映画来いよ」と言って頂き、高校を辞めて、「自殺サークル」の現場にボランティアで入るという入り方をしたので、映画の大学や専門学校を経ずにキャリアをスタートさせました。当時は10代だったので、その場が楽しかったという感じです。右も左も分からないまま、ただ楽しそうという気持ちで入った後、「もともと自分が好きだった美術的な仕事か、もしくは監督のどちらかをやってみたい」と思うようになりました。

当時はボランティアスタッフで業界に入るというのが一般的でした。その後、「自殺サークル」で知り合った人たちに手伝ってもらって、自主映画を自分で監督している時期もありました。ただ、私が出会った自主映画を撮っている方たちの中には自己満足で完結してしまっている方もいて…。

「俺の映画は面白いから観て!」と言われて観てみたら、つまらない、ということが多かった。そうはなりたくないなあ、勉強したいなあと思ったんですが、当時、助監督は現場で色々な部署から厳しく扱われていたのでやりたくないなあ(笑)と思った時に、興味を持った仕事が小道具・持道具だったので、そこから勉強していこうと思って始めました。その後は、仕事が絶えず、小道具・持道具のスタッフとして今に至るという感じです。

若いと人件費が安くて、声をかけられやすいというのもあります。そういう時にコネクションを作って、最初はVシネなどの小規模な作品だけだったのが、次第に中規模・大規模な作品にも関わるようになって。そうなってくると結構楽しくなっていきました。低予算も低予算なりの楽しさがありますが、今まで扱えなかったような予算で小道具を準備できるのが楽しくて、嫌々という訳ではなく、楽しさは見出しつつ、続けてきたという形です。

ー畦原さんはどのようなきっかけで映画現場で働き始めましたか?

畦原:私は13年前、長男の妊娠を機に仕事を辞めていて、現役スタッフではありません。私はスタンダードな入り方をしました。日活の撮影所内にあった日活芸術学院に入学したんです。1年目は座学で、2年目から現場に入るというのが売りだったので、2年目はボランティアスタッフとして、現場を体験しました。卒業間際の面談で「私はモノを作るのが好きなんです」と言ったら、「特撮だったら色々作るから楽しいよ」と言われて、紹介されて行ったら、「ゴジラ」の特撮美術の現場でした。面白そうと思って、右も左も分からない状態でしたが、何年か働きました。

主にゴジラの周りにビルを並べたり、小物のデザインをしていました。それ以外は、造形屋さんにバイトに行ったりもしてました。特撮美術の仕事をしている期間が長く、いわゆる、本編の美術さんは2年程しかやっていないのですが、その時にSAORIと出会いました。

大変だった本編の現場のことが頭にあったので、ずっと大変だった気になったんですけど、今思うと特撮の現場は業界の中ではホワイトな働き方でした。多分、上司が良かったというのがすごく大きいんですけど、基本はセットだけの撮影になるので、朝8時からどんなに遅くても23時までで終わる働き方でした。週に一回は必ず休みを取るように、その時の上司がしてくれていて、自分も率先して休むような人だったので、今思うとすごく働きやすかったのかなと思うんです。

SAORIとswfiという団体を立ち上げて活動していく中で、「そういえば特撮現場の労働環境は良い方だったのかな」と思うようになりました。

ー畦原さんは、現在どんなお仕事をなさっていますか?

畦原:映画スタッフを辞めた後は、しばらく専業主婦をしていて次男も出産しましたが、家計のこともあり何か仕事をしようと思ったときに働きやすさを考えて、保険会社の外交員を選びました。10年ほど続けましたが、夫も映画美術のデザイナーで今年の2月に法人成りしたので、そちらの経理を手伝うために外交員も退職しました。なので現場の最前線にいる訳ではないですが、夫の法人やswfiの活動を通して間接的に映画業界に関わっています。

スタートアップメンバーの中の4人。中央左:SAORI 中央右:畦原
(撮影:下林彩子)

2. ハラスメントについて

ーハラスメントについて、何か見聞きしたことはありますか?

畦原:特撮も本編もセクハラはありましたけど、本編の方が酷かったです。特撮は、本編に比べて女性スタッフがすごく少なくて、現場に2〜3人しかいなかったので、良い意味で可愛がってもらえました。暴力とかもなかったですし、ひどいセクハラもなかったんですけど、「おはよう!」と言いながら二の腕を触られたりはしてました。当時は若かったので、それがセクハラだって気が付いてなかったんですけど、そこまですごく嫌な思いをしたわけではなかったです。だけど本編に行ったら、ひどいセクハラがありました。

上司に迫られて、「いやいや、仕事としては尊敬してますけど、そういうのではないんです」と断ったら、地方ロケにいたのに「東京へ帰って!」と言われたりとか。その時、私も若くて気が強く言い返したので、帰らなくて済んだんですけど。

本編はロケーション撮影もありますから、朝から晩まで忙しく、休みがない。そんな状況だと考える時間もなく、ハラスメントだと教えてくれる人もいないので、嫌だなと思っても自分でどうにかしなければいけない、それが当たり前だと思っていて・・・。

もちろん、楽しい部分も沢山ありました。大変だったけど、若いスタッフたちと仲良くなって現場で働いたり、好きな女優さんが演技してるのを間近で見て感動したりというのがあります。今思えば、美化されているんでしょうけど、楽しい思い出も多かったなあと思います。

ただ、前述の通り保険会社に転職してみると、大きな会社なのでパワハラやセクハラはちゃんとチェックされているので一切なかった。モラハラみたいなものは沢山あるんですけど、映画業界で受けた、蹴られる、叩かれるというようなわかりやすいものはなかったので、「あぁ、(映画業界は)すごく意識の低い業界だったんだなあ」というのを辞めてから実感したというのが正直なところです。

SAORI:明らかなパワハラ、セクハラが多いですよね。昔目撃したのは箱馬(撮影時に使用する四角い木箱)の角で殴られたり、脚立ごと吹っ飛ばされたりしている男性がいました。最近は流石に時代が変わり暴力はほぼ見聞きしなくなりましたが、じゃあ無くなったと言い切れるかというと、未だに耳に入ってくることはあります。女性の場合は、パワハラとセクハラの複合みたいなものが多い。セクハラを受け入れられないと、パワハラに転じるというのはよくありますよね。気に入って可愛がってくれていた既婚者の先輩が、私が他の部署の男性スタッフと仲良くしていたら、無視してきたり、「作品降りろ」みたいに言われた事もあります。

「恋人いるの?」「化粧バッチリだね」とか、ささやかなセクハラは全然無くならない感じです。言われている本人もセクハラであると気づいていない場合もまだまだあります。セミナーを開いても聞いて欲しい人は大体来ないと聞いたことがありますし、届けたい人に届かないというジレンマがありますよね。

畦原:ハラスメントセミナーをやっていけば、変わっていくと思うんです。大概は根が悪い人ではないと思うので、声を上げていけば、変わってくれる人が大多数なんじゃないかな。でも、みんな忙しすぎるから、現実的にはセミナーなどに参加するのは難しいですよね。

現場風景(撮影:下林彩子)

3. これからの働き方について

ー畦原さんは、旦那さんが現在も映画の美術部として働いてらっしゃる訳ですが、妻として夫の働き方をどう感じますか?

畦原:もう、母子家庭のようなものだと思ってます(笑)。休みがないのが当たり前。私は子どもとワンオペでやっていても平気なタイプなので大丈夫ですけど、そうじゃなければ、家庭にもヒビが入る働き方ですよね。本当に、撮影が始まっちゃうと休みがないので。

数ヶ月の地方や海外ロケだと、丸々いないです。子どもも、小さい頃は父親だけど人見知りしちゃうみたいな感じでした。最近の都内の仕事でも、私たちが寝た頃に帰ってきて、私たちが起きる時間くらいに家を出ていく感じで。2本掛け持ちとかをしていたので、特に忙しいんですけど。今でもそういう働き方をしています。

だから、今の“家事育児もシェアして”というような感覚でいうと、結婚できるような状況じゃないんだろうなと思います。

SAORI:子供を産んだ後に、復帰する人が少しだけ出始めたというのが、ここ10年の変化かなと思います。畦原の時は、「子供ができた、じゃあ仕事辞めるんだね」という当たり前でした。

畦原:私が現役だった頃は周りには、出産して(映画現場に)戻ってくる人は一人もいなかったですね。

SAORI:私も実際子どもができた時に「辞めよう」と思っていました。子育ての大変さがわかる前でも、この業界で子育てしながら、働ける訳ないだろう、という考えだったんですけど・・・・子育てで家に篭っている時に、また現場に戻って働きたいと思うようになったんです。

それで畦原にその話をした時、「続けられるんだったら、美術の仕事を続けたかった」と言われて、私自身も初めて気がついたんです。「もしかして、今まで出産で辞めていった人たちも、納得して辞めたんじゃなくて、本当は続けたかったんじゃないか」と。

以前の私は誰かが妊娠をした時は自然に、「じゃあ辞めるんだね」という思考になっていたんです。

そういう風潮を変えていきたいなあと思ったんです。それがswfiを立ち上げようと思ったきっかけの一つです。

また、昔より、入ってくる女性は増えたけれど、身体を壊して辞める人は男性よりも、女性が多いのは実感としてあります。そういった意味でも女性がこの業界で、子供を持つ選択肢も諦めずに長く働けるようにしていきたいという想いもあります。

畦原:私はすでに業界を辞めているので、正直、現場が良くなったところで、私には特に直接の変化はないんです。だけど、夫もそうですし、仲良い友達が業界で働いている中で、労働環境の酷さを実感したので、良くなっていって欲しいなあと思って、swfiに参加しています。

別に子供を持つことが必ずしも良い訳ではないですし、色々な選択が尊重されるべきですが、子育て経験がある女性が上司だったら違うのかなと思う時もあります。

SAORI:その方が理解はありますよね。本当はジェンダー関係ないはずなんです。男性でも理解してくれる人は理解してくれるし、女性でも理解してくれない人は理解してくれない。

私たちは今までの映画業界を全否定するつもりはなく、自分がここまで来ることができたのも今の映画業界のお陰なので、感謝やリスペクトもあります。ただ自分たちの働きやすい現場では無いのも事実なので、今の映画業界の良い部分は残しつつ、自分たちで新しく作っていくというイメージが強いんです。若い世代から啓発活動をしていって、10年後20年後に上に立つ人がそういうマインドを持っていて欲しいと願ってます。

ー答えにくいかもしれませんが、ギャラについて、教えてください

SAORI:ギャラは悪い意味で変わらない。キャリアを積んでも思うようには上がらない。消費税や物価が上がっているのに、ギャラの相場は上がらない。あと、消費税を請求していい事自体知らない子も多いのは、問題だと思います。「額面を、税込金額で書いていいから、消費税の欄はつくらないで」と言ってくる会社もあったりします。

でも、コンスタントに仕事をする会社だったら、これからの付き合いを考えると、そこのところ強く言えなかったりしますよね。難しいなあと、いつも思います。私自身もその会社との仕事を次に繋げたい気持ちもあり、そのチーム内で若いスタッフに「ちゃんと消費税を請求してる?」って確認してまわるのは角が立ちそうでできない。機会があれば話題に出してアドバイスする程度です。若いスタッフが雇い主や制作会社に直接主張することって、すごく勇気がいることだと思うんです。だから、間接的にでも、それらの問題と向き合ってくれるような組織やプラットフォームがあったら良いですよね。

ある先輩が、「俺が30代だった頃のギャラと、今の30代のギャラが変わらないのが本当に可哀想」と言ってました。つまり、時代が違うと、ギャラが同じでもその価値は違いますよね。物価も消費税も違うんですから。本当は、生活に必要な水準に合わせて、ギャラは時代ともに変わっていかなければいけないのに。そういう意味での上がってなさを感じたりしますよね。

私が入った20年前は、最初の仕事は1ヶ月税込15万円程が相場で、そのあと18万円くらいになって、今はだいたい最低でも20万円くらいかな、という感覚がある。でも、お金ないところでは15万円でやらせていることも聞いたりします。だから、可哀想だなと思う。だって、今は都内の物価も消費税も上がってきていて、15万円から色々取られていったら、生活できないですよね。

「ド新人に20万円なんか、払えないよ」とかいう人もいるけど、「いやいや、そんなこと言ったら、新人は生活できないですよ」と私は思います。でも、上の人のギャラが上がっていないから下も上がらないんですよね。

でも、みんな比較する対象も知識もないし、考える時間もないくらい忙しいから、気がつかないのかもしれませんね。私はもう少しお金の話をオープンにできるようになれば良いなと思う派なんです。もっと会話すれば良いのに、なかなか難しい。会話しないせいで、安く買い叩かれている若手がいたり、ベテランが高いと思われて仕事が来なくなったりする。

フリーランスの現場スタッフが、そういう意見交換ができたり、会計や契約に関する基礎知識を学べる場もあるべきだと思います。職能団体に入らないスタッフが若い世代には多いから、そういう人たちが緩やかに繋がって、支え合えるようなプラットフォームがあったら良いですよね。

ー昨今の働き方改革について、現場スタッフとしてどう感じていますか?

SAORI:働き方改革も、会社のていをなしている所は変わったけど、大多数を占めているフリーランスや、現場最前線の人たちにそれが浸透していないので、結局は変わりきらなかったり、会社側が変わったことのしわ寄せが来ていると感じる場面があります。だから、昨今の流れを良い変化だと受けて入れている人は、現場には少ないような実感があります。そこがもどかしいです。

今は減りつつありますが、朝までやっているディスカウントショップやスーパーがあったりするから、前日や夜に発注してくるような事がたまにあります。「明日これ使いたいんだけど」って、前日夜の11時くらいでも、「ドンキ開いているからいけるよね!」という風になっちゃうから、便利になったおかげで無理をすれば対応できてしまう。

でも今は、「もう早く帰ろうよ」というのが若干許される雰囲気もあります。人にもよりますが、平均年齢が若いチームだと子どもがいる人も多いので、準備期間中などは早く帰るということも少し増えてきた実感があります。ですがもちろん撮影に入るとそうはいかないし、実際は「今日早く帰ろう」と言ったけど、結局終電で帰るということもまだ多いです。

若い世代から、感覚の変化は少しずつ感じられます。ベテラン世代だと、「そうやって変わっていかなきゃいけないよね」というスタッフもいますが、何時まででも働くという感覚の方もまだ多いです。「俺はやってくけど、みんなは帰っても良いよ」という方もいますが、下の立場からすると、上が帰ってくれないと、帰りづらいですよね。

あとは、働き方改革の影響の一つかなと思うのは、現実問題として、新人が入らなくなってきたことです。なので、この業界もいきなりは無理でも、もう少し環境が変われば、ここで働きたいと思ってもらえるのではないでしょうか。

Zoom インタビュー風景

4.言語に紐づいたヒエラルキーやジェンダー格差

JFPメンバーの増渕愛子さん(映画キュレーター)に指摘されて気がついたのですが・・・私たちが使っている言語がジェンダー格差やヒエラルキーに紐づいているケースもあるのではないかと。例えば、キャメラマンであって、キャメラウーマンとは呼ばないですよね?

あと、日本だと何かにつけて「監督」って、必要以上にヨイショしてしまう。つまりは、ジェンダーやヒエラルキーの問題も言語に紐づいてしまっているから、それらも時代に合わせてアップデートしていく必要があるんじゃないかと。その点、現場で働いている実感としてはどう感じますか?

SAORI:今指摘されて、確かにそうだなと思います。でも、浸透するのはだいぶ先だろうな。監督がヨイショされすぎというのは共感しますね。監督と呼ばれるようになって意見が通るようになり勘違いしてしまう、若い監督を見たことがあります。

畦原:それはデザイナーや技師にも言えると思うんです。デザイナーという肩書きになると、「デザイナー様だぞ」というふうになってしまう人もいる。どういうふうに名称を変えるかというのは、難しいなと思いますね。名称を変えるのもいいかもしれませんが、ヨイショしてしまう周りの姿勢も変わり、言語に対して良い紐付けになっていくと良いのではないでしょうか。

SAORI:実際の現場での呼び方で考えると、監督の事は監督と呼ぶけれど、その他の役職は、本人に対して役職名ではあまり呼ばないですよね。でも「言語に紐づいている」という感覚はわかる。慣習なんでしょうね。けれど、監督が船頭だとよく言いますし、監督がどっしりと構えた人で、現場に緊張感があって欲しいという気持ちもあります。

5.次世代の育成について

お二人のお話を伺いながら、映画現場で働くために必要なことや労働の実情などを若手に教える場があれば良いのかなとは思いました。

SAORI:若い人でよくあるのが、セクハラやパワハラされて嫌なんだけど、まだその世界しか知らないから、「そういうものなんだろう」と思って耐えたり、辞めてしまう子がいる。話を聞いてみて思うのは、「全然そういう現場じゃなくて、もっと良い現場もいっぱいあるよ」ということ。でもそれって、知識がなく視野が狭いから起こることですよね。

声を上げられないって思ってしまっている子もいるので、「こういう場合はここに相談できる」という窓口があれば辞めずに済むかもしれない。なのでswfiサイト内では相談フォームを設けています。

ハラスメント以外にも、実際にフリーランスとして契約書の無い映像の世界で働く場合の注意点や意識の持ち方を発信したり、またswfiでは「子育てしながら働ける映画業界」を目指しているので、これから結婚や出産を考えているスタッフには、子育て中の方が今どんなふうに業界で仕事をしているのかなど、そういう情報を若いスタッフにほど伝えていきたいと考えています。そういった知識があれば、撮影現場に行って嫌な思いをしてすぐ去っていくという事も少なくなるのではないでしょうか。

NPO法人映画業界で働く女性を守る会(swfi)
Support for Women in the Film Industry.
「子育てをしながら働ける映画業界を作りたい」という目標のもと、子育て世代の現役スタッフが集まり設立。子供の有無や性別にかかわらずさまざまなライフステージのスタッフで定期的に座談会を開催したり、啓発活動を行なっている。

(レポート作成:歌川達人)

※JFPが実施する本プロジェクトは、トヨタ財団 2021年度研究助成プログラム「日本映画業界におけるジェンダーギャップ・労働環境の実態調査」(代表:歌川達人)の助成を受けて実施しています。

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