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Look back on Paris2024 vol.2
パリ2024パラリンピック競技大会 のロードレース種目は、クリシー=スー=ボワを始発点、そして終着点とする14.1kmの周回コースで行われる。
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フランスの空の下、公道を舞台に繰り広げられるこの種目に心血を注いでいたのが、MC3クラスの藤田征樹である。
右膝の炎症により出場予定だったトラック種目を全て回避した藤田は、得意種目であるロードレースに全身全霊で挑むこととなる。
逆風からのスタート
ロードレース初戦は個人タイムトライアル。藤田はコースを2周する平坦基調の28.2kmを走る。
「距離も28kmと長めの設定で、本当に今日のコースはタフでした」
そうコースを振り返る藤田。トラック未出走の影響もあり身体のコンディションが未知数の部分もあったという。
しかし、さすがは熟練のレース勘とも言うべきか。適応は早かった。コース中盤に控える登りを終えてからの平坦で重いギアを踏むことが求められると考えていた藤田。レース後、その走りに小さな手ごたえがあったようだった。
「実際の身体のコンディションはトラックに出場出来なかったので未知のところもあったんですけど、平坦区間でしっかり身体に負荷をかけて踏むことはできたのでそこは次につながると思います」
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1周目を8位で通過した藤田は、その後も調子を崩さない。一時は走ることすら危ぶまれていた藤田は、支えてくれるすべての人の思いを背負い、藤田はさらに力強くペダルを踏む。
「出国日から膝の調子を悪くしてしまっていたので、本当にレースに出られるかどうかもわからなくて、事実トラックは欠場してレースに出られずに帰ることも覚悟したくらいだったんですけれどもドクターやチーム、日本で応援してくれている皆さんに支えられて回復して、なんとかスタート台に立つことが出来ました」
自身のペースを維持し続けた藤田は、1周目よりさらにひとつ順位を上げ7位で入賞を果たした。レース後、藤田はこの日のレースについて語った。
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「7位という順位は残念ではあるんですけれども、今日のコンディションでしっかり走ることが出来たのは良かったと思います」
レースすることすら困難な状態から、入賞まで果たした藤田。しかし、パラリンピック5大会連続出場のベテランはあくまで自分の走りにシビアな評価を下した。
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一方で藤田は、次に控えるロードレースにむけた冷静な分析も欠かさない。この日の走りで、ライバルのコンディションも分かったという。続くロードレースに向けて、藤田は改めて決意を語る。
「(5大会連続のパラリンピック、まずは初戦を終えて)本当にあの、何度も出場出来るという事は、それだけ家族だったり、会社の方だったりとか、周りの沢山の人たちに支えてもらっての今回だと思うので、本当にそういう人たちへの「ありがとう」の気持ちです。
次のロードはチャンスあると思うのでしっかり結果でも恩を返せるように、喜んでもらえるように、また日本でパラリンピックを見て楽しみにして下さっている方々にも良い結果を届けたい、そういう風に走りたいと思います」
支えてくれる人たちへの「ありがとう」の気持ち。そして、日本で応援してくれるファンのために、藤田は続くロードレースに向けて集中を高める。
(選手からのコメントは パリ・パラリンピック ロード初日 個人TT 杉浦6位 藤田7位 川本8位 厳しい戦いも揃って入賞に漕ぎつける - 自転車動画シクロチャンネル CYCLOCHANNEL.より引用)
「諦めない」ということ
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他選手たちの力を見極め、臨むロードレース。藤田はフランス、イギリスの動きに呼応して自ら仕掛けようと考えていた。
しかし、母国開催のフランスを初めとする強豪国のペースアップは苛烈で、最初のアタックで全てが決まったといってもいいほどだった。
レース序盤にフランスのMC2アレクサンドル・ルオテ、MC3トマ・ぺイロトン・ダルテが先行。それにイギリスのMC3フィンリー・グラハム、カナダのMC3アレクサンドル・ヘイワードが追従すると、強烈に他選手を引き離す。
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結局、その集団に追走は追いつくことはなく、先頭集団が勝ち逃げとなった。
レース後、悔しさをにじませ藤田は語る。
「イギリス、フランスの動きに合わせて中盤から自分から行ければと思ったんですけども、フランス勢のペースアップからのアタックでちょっと離される形になって、追走グループの後ろに入ってそこから追い上げるつもりでいたんですけど、脚が動かなかったです。それが悔やまれます」
単独での追走となり、苦しい耐えの時間が訪れる。それでも粘りの走りで前を追った藤田は、15位でレースを終えた。
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表彰台、入賞は果たせなかったが、出走も危うい状況からレースを完走したことは、驚異的というほかない。今大会を終え、5大会連続出場を達成したレジェンドは、「諦めないこと」が、走り続ける原動力だという。
「諦めないことは大事です、諦めたら終わっちゃうので。努力しても一歩前に進めるかどうかってわからない。
結果が出ないと、やって来たことが全てダメだったのかと感じてしまいますが、でも決してそうじゃないと思うし、そうしちゃいけない。
だから、やって来たことは全て必ず自分の前に進む力になるっていうことを信じてやり続けることだと思います」
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鍛えられた肉体のみならず、その心もまた鋼のように固く、揺るがない。藤田が鉄人たる所以がこの言葉に詰まっているだろう。
そんな藤田だが、大会後のことについては、そう簡単には決められないとしながらも、支えてくれたサポーターや家族について次のように話す。
「パラリンピックを目指す、パラリンピックで戦うってすごく大変なことで、周りで支えてくれている家族だったりが、選手以上に頑張って支えてくれていることもたくさんあると思うし、そういう人たちの力があって目指せるものなので簡単には決められないです。
まずは、無事に走り切れたことを、ありがとう、と一緒にきちんと伝えたいですね」
支えてくれた全ての人への感謝も忘れない。こうした高潔な精神性もまた、藤田が戦い続けられる重要なファクターなのかもしれない。
(選手からのコメントは パリ・パラリンピック ロード最終日 個人ロードレース杉浦佳子がパラ連覇 涙の金メダル - 自転車動画シクロチャンネル CYCLOCHANNEL.より引用)
リザルト
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藤田征樹選手コメント
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会場いっぱいの観客の中で走れたことはとても嬉しいことでしたし、配信等を通じて日本の皆様へもパラリンピックの魅力が伝わったのではと思います。
私自身は膝のコンディションや体調に苦しんだ大会となりましたが、選手団の医療・トレーナー、自転車チーム、たくさんのご声援やサポートを頂いて2種目を走ることができました。心からありがとうございました。
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