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コロナ後に向かういま、従業員満足度向上のために重要な要因とは?
こんにちは。日本生産性本部主任経営コンサルタントの黒田です。
コロナ禍が加速させたトレンドとして、eコマース、仕事の自動化、そしてリモートワークなどが挙げられます。
私どもの従業員満足度調査ツール(NiserES) では、
総合満足度と同時に、「会社の理念」「人事制度」「上司」「職場環境」「仕事のやりがい」などの仕事を取り巻く項目についても調査しています。
今回は、コロナ禍(2020年4月以降)における各項目の変化や、総合満足度との相関関係を分析してみました。
※前回のレポート内容はこちら↓
コロナ禍で従業員満足度が向上した会社の共通点とは?
【コロナ禍初期の課題は物理的環境】
NiserESのデータを見ると、コロナ禍でスコアが悪化した項目には、
「職場の物理的環境」(-3.6ポイント)
「労働時間管理」(-2.4ポイント)
「上司の管理監督」(-2.1ポイント)がありました。
コロナ禍初期は、リモートワークの物理的環境や就業管理が未整備で、マネージャーも不慣れだったと推測されます。
しかし、2022年4月22日に当本部が公表した「第9回働く人の意識調査」では、在宅勤務に満足している人はいまや84.4%にまで増加しています。
【総合満足度と「教育機会」や「福利厚生」の相関が低下 】
コロナ禍で総合満足度との相関係数が低下した項目は、
「教育機会」(-0.16)
「福利厚生・施設」(-0.10)
「労働時間」(-0.04)
「有休取得」(-0.03)でした。
※「相関係数」とは、2変数のデータ間の関係性を示す指標のことです。つまり、「相関係数が低下した」とは、総合満足度との関係性が小さくなったことを意味します。
※「相関関係」は変数間のある要素が原因となって影響を与えているという「因果関係」を必ずしも意味するものではなく、あくまで関係性の大小を表したものになります。
「教育機会」や「福利厚生」は、従業員に一律に提供される「モノ」です。こうした一律的に提供される「モノ」と、総合満足度との関係性が低下していることが窺えます。
一つの仮説としては、従業員にとっての魅力が「モノ」から「心」へシフトしたということです。
【「能力開発」「仕事の改善」「仕事への愛着・誇り」の相関が強化】
一方で、コロナ後に総合満足度との関連が強くなった項目は、
「仕事での能力開発」(+0.86)
「仕事の効率化・改善」(+0.79)
「仕事への愛着」(+0.19)
「仕事への誇り」(+0.11)などです。
コロナ禍以前は、職場が物理的な居場所であり、ヒトとしての感情や関係の形成に影響していました。
しかし、職場に行く頻度が減少した今、自分の担当する仕事自体の影響が強まっています。これは、「個業化」と呼ばれる現象です。
「個業化」は、しばしば職場一体感の喪失の問題として紹介されます。
しかし、個人で仕事を改善し、改善活動によって自身の能力の発揮を確認し、それを通じて仕事に愛着と誇りを持つことで、総合満足度との関連を強める傾向があります。
こうした個業化の特性を上手に活用する施策が、組織・人事マネジメントに必要ではないでしょうか。
【常に重要なのは、帰属組織への誇り・仕事の達成感・トップの行動】
もともと総合満足度との相関が強く、今回さらに強まった項目は、
「組織の一員としての誇り」(相関係数は0.14増えて+ 0.92)
「仕事の達成感」(相関係数は0.11増えて+0.87)
「トップへの信頼」(相関係数は0.09増えて+0.88)
「トップの傾聴」(相関係数は0.03増えて+0.84)
です。
つまり、会社の社会的な評価や経営者の行動態度が、総合満足度を高めるために重要となる可能性が高いです。
そして、いつの時代や環境でも重要なのは、「仕事の達成感」です。
いかがでしたか?今後の組織・人事マネジメントを考える上で参考になれば幸いです。
次回は、個業化時代に役立つ施策としての「ジョブクラフティング」を紹介したいと思います。
※今回使用したツール・調査の詳細はこちら↓
NiserES:
第9回働く人の意識調査:
黒田 和光(くろだ・かずてる)
公益財団法人日本生産性本部 主任経営コンサルタント
日本生産性本部で経営計画策定および企業内教育プログラムの開発、海外での日本企業のグローバル化組織・人材に関する政府調査事業、各種プログラム開発、国内中小企業への個別支援、現地法人の支援等に従事。現在は経営コンサルタントとして、組織変革・組織開発のコンサルティング、中業企業診断士養成課程指導員、研修講師を主に担っている。
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