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【連載】私の執筆スタイル 「執筆はお籠もりとともに」 赤澤ムック
📖この記事について
この記事は……
会報「ト書き」の人気連載、「私の執筆スタイル」拡大版!
日本劇作家協会の広報委員会Webチームの編集により、2024年度中に8本のエッセイをお届けする予定です。
「私の執筆スタイル」とは……
執筆時習慣やこだわりについて綴る連載エッセイ!
劇作家の創作の場を垣間見る企画です。
今回の執筆者は、赤澤ムックさんです!
私の執筆スタイル 「執筆はお籠もりとともに」 赤澤ムック
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書き物を始める前の儀式は、飲み物の支度だ。わたしは大量の水分を摂る。基本的にお茶あるいは水と珈琲になるのだが、選択肢は多いほうがいいので、台所にいつも複数の飲み物を用意している。甘い紅茶の原液、レモネード、柚茶、ココア、食事代わりにもなるプロテイン、乳酸菌飲料。若い頃はアセロラドリンクを好んでいたことを思い出す。お茶は、ルイボスティー、麦茶、寒くなるとペパーミントティー。
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そして無くてはならない牛乳だ。単体でもおいしくいただくが、カフェオレやミルクティーにすることが多い。加工乳や乳飲料ではなく、牛乳でなくてはならない。道産子の性分か、せめてもの意地なのか、いいや味がまったく違うからだ。あれとこれは別物である。値段も鑑みつつ、できればおいしさにもこだわりたい。かつてはそのバランスの良さから協同乳業の「東京牛乳」一筋だった。現在はその時の販売価格によって選んでいる。手ごろな価格帯でいえば「農協牛乳」や「近藤牛乳」のような、すっきりしつつ後味の強いものが好きだ。劇作家をしながら牛乳の値段を気にせず買い物できる日が訪れたなら、それがわたしにとって成功の証だろう。それを目指して精進を続けていきたい。
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稽古現場へお邪魔する際には最寄りのローソンを事前に調べる。目当てはメガサイズのカフェラテだ。どのコンビニ、コーヒーチェーンよりも、ローソンのカフェラテを好んでいる。まず、夏はクジラで冬はホッキョクグマという見た目が良い。そして珈琲とまったり合体しつつクリーム感のない牛乳みが良い。これを年始あたりの極寒時期以外はアイスでいただく。胃腸は強い方だ。食べることが大好きな健啖家でもある。ああ、執筆について書くべきエッセイが、牛乳語りになってきているね。しかしわたしの執筆に、牛乳は斬って離せない仲なので仕方がない。
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さて「きって」の変換第一候補が「斬って」となってしまうのは、時代劇を執筆していたからだ。わたしは劇団時代から現在を描くことが少ない。以前は、題材が古いほど資料が少なく、描くことが難しいと感じていたのだが、最近では近現代を描くことの方が難しいと考えている。特に完全な創作やSFでない限り、その時代を生きた方々や子孫にあたる方々がご健在だからだ。
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わたしは芸術家ではなくエンターテイメントを提供する作家と自負している。観客に楽しんでもらうための作品で、誰かを傷つけることはあってはならない。しかしそれは史実通り描けばいいという話でもない。モデルとなる人物や出来事を、物語を動かすためだけの駒としないこと。侮辱をしないこと。どんなとんでも設定であろうとモデルが大切にした、護ったものを尊重すること。自分と同じように生を受けた人間であることを忘れない、それが大切だと考えている。書き出してみると、これは遠い昔の、伝説級の人物たちにも当てはまるなあ。
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ともかく。手あたり次第に調べる。創作物も読む。そして自分がイタコ状態になれる時を待つ。わたしは数少ない自身の武器を“台詞”だとも自負しているので、この状態に入ることが非常に大切だ。たいていの台詞は考えて書いておらず、下りてくる。わたしはそれを書き留めるだけというわけだ。時にプロットと相反する台詞が下りてきたりもするが、そんな時は台詞に合わせた方がうまくいくことが多い。発想はいわゆる「浮かぶ」でしっくりくるのだが、台詞だけは「下りる」あるいは「書き留める」がぴたりとはまる。登場人物たちが脳内で喋り始めないうちは、書き出さない。なので書き出してからは早い方だと思う。多分。
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執筆は自宅でする。古い家が好きなので、和室であることが多かった。そこに文机を置くと気分はもう文豪である。だが、原稿用紙ではなくパソコンでものを書くとなると、かつての人々と文机に向かう姿勢が違うので(前のめりにならない)、座椅子が必要となってくる。ふかふかの座椅子は腰に優しかったが見た目が悪く、憧れの文豪スタイルは、座椅子がぺったんこになると同時に終了し、すごすごとテーブル派へ戻った。
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今、使用しているのは十五年前、黒色綺譚カナリア派『義弟の井戸』終演後にスタッフから、別現場で必要がなくなったからと譲り受けたテーブルだ。わたしは物持ちが良いようで、今、着ている上着は二十五年ものだったりする。
朝、弁当を拵えたりする。執筆期間は外に出る必要がないけれど、日中の時間節約と、弁当が待っているという楽しみの為だ。あと単純に料理が好きなので、自炊を好んでいる。料理は劇作と似ている。演出と、とも言える。だから好きだ。
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わたしの執筆姿勢は、籠ることをいかに快適にできるかに尽きる。自宅に、脳内に、長く長くいられる状況を作ること。と言いつつ最近、ようやくカフェ執筆が楽しめるようになってきていて、それは牛乳の次に必須である喫煙に関係する話なのだが、また別の機会に。
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今までの記事は……
・「机に向かって書かない」 竹田モモコ
・「独房」 福原充則
劇作家の皆様の執筆の様子を、どうぞ、ご覧ください。
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・日本劇作家協会FAQ
・劇作家座談会「子育てしながら仕事するってどんな感じ?」
・『あの町この劇場』
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70号「特集 三十年、四世代」
(2024年3月末発行/全68ページ 37MB)
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69号「特集 いま演劇を取り巻くもの」
(2023年3月末発行/全60ページ 27MB)
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