【日本語教師】やたらと多い誤用「~はいいです」の話
こんにちは。
いつもの「斜め上の質問シリーズ」じゃないんですが、今回はある課を教えるときにやたらと目立つ誤用、そしてそれが根深く、上級レベルになっても間違ったまま使う人がいる「~はいいです」についてのお話。
「斜め上の質問シリーズ」はこちらから⇩
問題の「課」
その課とは…
「できる日本語・第6課」※て形未習
【会話例】
A:Bさん、今週末ひまですか。 〇〇でビールの祭りがあります。一緒に行きませんか。
B:へえ!いいですね!行きたいです。何曜日ですか。
A:ええと、土曜日です。
B:あぁ、土曜日はいいです。
むむむ。
この文脈では日本人だったら使わない…。
しかしまあ多いこと多いこと。
「いいよ!」「OK」という意味で「~はいいです」を使っています。
なぜ使わない?なぜ誤用扱いになる?
私なりに考えました。
「土曜日はいいですよ、は言いません」とただ言っても学生が納得しないからです。(納得しない理由は後ほど)
これは「は」が持つ様々な意味に関係があると思います。
文法的に「は」は主題・強調・比較などを表しますが、やっかいなのは日常生活で「断る」ときにも使うこと。
【例】
(友達同士で)
A:明日みんなで〇〇行くけど、Bどうする?
B:あー、私はいいや。
(コンビニで)
A:おにぎり温めますか。
B:あぁ、いいです。
【学生の会話例】
B:へえ!いいですね!行きたいです。何曜日ですか。
A:ええと、土曜日です。
B:あぁ、土曜日はいいです。
なので、この文脈で使ってしまうと、特に「断り・強調・比較」の要素が強く感じられて、日本人としては
土曜日「は」いい?じゃあ日曜日はだめなの?そもそも選択肢は土曜日だけだし…何の「は」?
土曜日「は」行きたくない?行けない?
大げさですが、こんな感じです。
もちろん、面と向かって顔を見て話してる場合、相手の表情や声色で「あぁ、行けるんだな」ってわかります。
じゃあ、もしこれが文字でのやりとりだったら?
日本語教師以外の日本人には、相手の言いたいことが伝わりにくいんじゃないかと思うんです。
「~はいいです」と言ってしまう理由
それは、
「直訳して考えているから」です。
私はメキシコでメキシコ人相手にクラスをしていて、学生の母語はスペイン語です。
以前、この誤用についてメキシコ人の先生たちと話していた時に
「スペイン語では、こういう状況で『土曜日はいいです/ El sábado está bien(直訳)』って普通に使うんだよ」と聞いて、「あーそれでか」と納得しました。
このスペイン語直訳のせいで学生たちは「~はいいです」を使ってしまうし、教師側が理由も言わずに「その言い方はしませんよ」と言っても腑に落ちないわけです。
どうやって「それは誤用だ」と学生に伝える?
て形未習で、「は」は主題・主語の「は」しか習っていない学生にどうやって伝えよう…。
いろいろ試行錯誤しているなかで、ぴったりのものを見つけました。
「NPOにほんごたどく」のウェブサイトにある「いいです」。
かなり重宝しています。様々な「いいです」の使い方が絵と簡単な文で書いてあり、て形未習でも問題なく読んで理解できます。
私はクラスで誘う文型「~ませんか」を導入して、会話練習したあと、フィードバックで「土曜日はいいですという言い方はしませんよ」と伝えたあと、この「いいです」を学生に読ませるようにしています。
これを読むと、みんな「なるほど~」と納得します。私の下手なスペイン語での説明よりよっぽど説得力があります😂
それを踏まえて答え方の例として
土曜日ですね。わかりました。行きましょう!
いいですね!行きましょう。
土曜日ですか。大丈夫ですよ。行きましょう!
これ👆を伝えるようにしています。
多読の「いいです」をクラスで使うようになってから「土曜日はいいです」と言う学生がだいぶ減ったように思います。
最後に
とはいえ「土曜日はいいです」みたいな言い方って100%誤用というわけでもないと思うんです。ここまで書いておいてなんですが。
ただ、100%誤用じゃなくてもネイティブが使わない言葉、違和感を感じる言葉ってどの言語にも必ずあります。
今回は100%誤用じゃなくてもネイティブが使わない言葉、違和感を感じる言葉「〇〇はいいです」について私なりに「より自然な日本語」へのもっていきかたを共有しました。
どこかで日本語教師として奮闘している誰かの参考になれば幸いです。
それでは今日はこの辺で🤗