それぞれのシャワー・タイム 盲導犬と暮らし、盲導犬と語る(9)

私はこれまでに三頭の盲導犬と一緒に暮らしました。
「盲導犬」というと、多くの人は盲導犬というものは皆「従順で賢い犬」だという漠然とした似たようなイメージを持たれるのではないでしょうか。
でも盲導犬たちはハーネスをはずせばそれぞれ個性的な犬たちです。

私は月に一度、犬のシャワーをします。
シャワーの時の反応も、三頭それぞれ個性的でした。

●スースー、フードにつられる
一頭目のスースーは、大柄で脚が長く、優しくけなげで繊細で、よく「美人さんだね」と言われる女の子でした。
でも、爪切り、耳そうじ、歯磨きが大嫌い。もちろんシャワーも嫌いでした。
私は家のバスタブの中で犬のシャワーをするので、スースーをバスタブの近くまで連れて行くのが大変でした。
そこで私は、
「スースーは大の食いしん坊だから、フードを使えばうまくいくかも♪」
と思いつきました。
私はフードを掌にのせて、スースーに「ほら、フードだよ~」と見せました。
案の定、スースーはフードにつられて、いつのまにかバスタブの横にまでついて来てしまうのでした。
「はい、スースー、シャワーだよ♪」
そう言われてスースーが「しまった!」と思っても後の祭りです(笑)。
スースーはとても賢い犬でしたが、いつも食い意地には巻けてしまうのでした(笑)。

●だまされないシジミ
シジミは元気で明るく、人を笑わせるのが好きな女の子でした。
シジミもシャワーが嫌いでした。
でも私はスースーに使った「フードおびきよせ作戦」をやればシジミもバスタブまで誘導できるだろう、とたかをくくっていました。
ところが、シジミは勘が鋭く、私がシャワーの準備を始めるとすぐにそれを察知してケージの一番奥に引っ込んで動かなくなってしまいます(笑)。
なので、シジミのシャワー対策は、まずケージの鍵を閉めてシジミが入れないように退路を立つことから始めます。
それから「フードおびきよせ作戦」をやってみましたが、シジミは部屋の奥に立って首をかしげ、「なんだかあやしい」というポーズのまま動かないのでした。
こうしてシジミへの「フードおびきよせ作戦」は失敗に終わりました(笑)。

シジミは好奇心旺盛なので、私がお風呂掃除をしていたりすると見にくることがよくありました。そんな時は私が「あ、シジミ」と声をかけるとピューッと逃げてゆくのでした(笑)。
そこで、お風呂のところで私と妻が何か楽しそうに話している、というお芝居をしてみました。シジミはたいていそんな時、「何やっているの?」と寄って来るからです。
私と妻はできるだけワイワイと楽しそうにバスタブのところでの会話をしてみました。

「あれ、シジミが来ないね」
私たちはお芝居をやめてリビングをのぞいてみました。
するとシジミは思い切り首をかしげて「なんだかあやしい」ッポーズのまま、そこを動かないのでした。私たちのお芝居はどうやらバレバレだったようです(笑)

そこで私たちはシジミをおびきよせるのはあきらめ、おしりを落として抵抗するシジミのおしりをグイグイ押して、「はい、シジミ、シャワーするよ。すぐ終わるからね♪」とシジミをなだめすかしながらバスタブの横までシジミを押してゆくのでした(笑)。

シジミはシャワーは嫌いですが、体を洗った後は上機嫌になってしっぽをブンブン振ります。
そしてある時などは、身体を乾かしている最中にいきなり頭を思い切り下げたと思ったら、そのまま前にドデン!とでんぐり返しをしたのでした(笑)。
「わっ!でんぐり返しした!」
あまりのことに驚いた私が大笑いしていると、シジミは
「今のおもしろかったでしょぷ♪」とばかりにどや顔をしながらしっぽを振っているのでした(笑)。

●おりこうさんのシール
現在一緒に暮らしている三頭目の盲導犬シールは、きまじめでかわいい男の子です。シールの特徴は、まわりの状況をよく見て、私がこれから何をしようとしているかを的確に判断することです。例えば散歩中に右折ポイントで私が早目のタイミングで指示したりすると、これまでんの犬たちは「え?どういうこと?」とちょっと混乱してウロウロしてしまいましたが、シールは「おとうさん、たぶんこの先で右に曲がりたいんだよね」と判断して少し先の右折ポイントで曲がってくれるのです。

なのでシャワーのときも、最初のシャワーの時から、私が「シール、シャワーに行くよ」と言うと、私にぴったりついてバスタブの横までついて来てくれるのでした。
「いい子だなあ、シール、えらいね」わたしがほめると、シールは、
「この中に入ればいいんだよね」と、バスタブの中にジャンプしようとするのでした(笑)。

シャワーが終わった後は、、「ぼく、自分で出られるよ」とばかりにジャンプしてバスタブの外に出ようとするのでした。すべったりすると危ないのでわたしはシールの身体をキャッチして床におろします。

びっくりするほど賢いいい子のシールですが、脱衣所で身体を乾かす時は、やんちゃ坊主ぶりを発揮します。
脱衣所にかけてあるタオルを全部引きずり落とすは、木製の柱をかじろうとするわ、この時だけはこれまでの犬たちの中で一番のいたずらっ子に変身するのでした(笑)。

シャワー シャワー シャワー シャワー シャワー
盲導犬 盲導犬 盲導犬 盲導犬 盲導犬

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?