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父の死後、次から次に起きる不思議体験。

前回、父の死をきっかけに想像もしなかった未来を歩むようになった話を書かせていただいたのだが、

その中でサラリと飛ばした父の死、父のお葬式について書いてみようと思う。

余命宣告からの流れを見ていただいてもうすうす分かっていただけるかと思うが、私の父はとても個性的な人だった。

まだ私が小さい時、父が顔に真っ白の絵の具を塗って窓から顔を出し、母が腰を抜かしたことはわすれもしない。とにかく発想が独特で、喜怒哀楽がはっきりとした父だった。それが理解できず反発したことももちろんあった。決して100点満点のお父さんではなかった。けれど唯一無二の人。それが私の父だ。

父の死は私にとって特別なものだった。自分にとって影響力がとても強く、その存在を無くすことによって自分の足元が消えてなくなるような、そんな存在。そんな父のお葬式をあろうことか私は笑いをこらえて迎えることになる。

前置きをしておくが、私に霊感なるものは一切ない。見たことがあるのは、顔を白く塗ったおばけに扮した父だけである。

不思議なことは、父を看取ったその夜から始まる。その日は僧侶である父が亡くなったと聞き、近隣の僧侶の方々が深夜まで集まってくださっていた。今後の通夜や葬式をどうするかが決まり、一旦休もうととにかくクタクタで布団に入った。悲しみと疲れで泥のように眠る、、はずだった。

夢を見ることもないくらい疲れているはずなのに、眠りに落ちたその瞬間から、夢を見るのだ。夢の中で父がはっきりと話しかけてくる。待ってましたと言わんばかりに。
「お母さんにも話しかけてんねんけど、ぜんぜん聞こえへんねん。俺な、いま待合みたいなとこにおるねん。旅館みたいなとこの2階でな、窓から綺麗な紅梅が見えてるわ。」  

慌てて飛び起きる。父の声がはっきりとまだ残っている。そこで初めて夢だと気づく。あぁ、夢か。。お父さん死んだんやった。。もうどこにもいないんや。。涙が溢れて、泣きながらまた眠りにつくと父がまた話しかけてくるのだ。

お父さん死ぬの怖くなかった?夢の中で父に聞くと
「怖いかどうかは置いといて、死ぬってな、簡単ちゃうかったわ。思てた以上に大変なことやったわ。
せやけどな、どうしようもないんやて。大きい力が決めてしもたことには逆らえへんらしいわ。」と答えてくれる。

お母さんが私も連れてってほしいって泣いてたで。
そう伝えると、
「そらあかんあかん、あんたらこれから寺継ぐのにお母さんおらんかったら大変やん。まだまだ先や言うといてー。」

ある時は、せっかく出てきたのに、どこからかお経が聞こえてきて、全く父の声が聞こえない。父が大きい声で「ばーちゃんが本堂でお経あげとんねん、ほんまに、おいっ!!」父の怒った声で目覚め、本堂にいくと、本当におばあちゃんが本堂にいたり。

といった感じである。寝ると父と話せる。起きたら父の遺体がある。なんだかどっちが夢でどっちが現実かわからない。そんなふうに思えるほど、父との会話ははっきりしていて、現実とつながっていた。

こうして、いつのまにか、私は想像していたのとは違う形で、父の死を迎えることになっていたのである。


                   続く。




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