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声をあげるのがしんどい時はやめてもいい~WOWOW「フェンス」

WOWOWプライムで放送されている、連続ドラマ『フェンス』を見ている。
簡単に言うと沖縄の基地問題と性暴力に関するドラマ。

元キャバ嬢で、下世話な男性向け雑誌のライターをしているキーこと小松綺絵(松岡茉優)
編集長に突然「沖縄で性被害を訴えている女を取材してこい」と言われ、出会ったのが日本人と米軍のブラックミックスである大嶺桜(宮本エリアナ)

この2人が問題にどう対峙していくかというのが大筋の内容。

2023年4月9日放送の第4話「マブイ」を見ていない方はネタバレになるかもしれないのでご注意を。

※記事中に登場する方は敬称略


「沖縄の文句を私に言わないで」

ある時、桜がキーに言ったひと言。
ハッとした。
それでこのnoteを書こうと思った。

桜は見た目からして明らかに、いわゆる普通の日本人とは違う。
ブラックの血が入っているのがわかる。
沖縄に住んでいるからこそ、「きっと米軍との間に生まれた子なんだろうな」と容易に想像がつく。

差別を受けている人は、一身に差別を受け続けている。
恐らく沖縄に住んでいなければ「ハーフなの?」「どこの国?」「英語ペラペラでしょ?」なんていつも聞かれるだろう。

「沖縄の文句を私に言わないで」は基地問題を含め、考え方が違うなら言葉にしなきゃわからないよ!というキーの思いに対する言葉。

でも本当にそうだろうか。
違う考えの人が共存するためには、無駄な衝突を避けることも必要なのだ。

人は何気なく差別的な発言をしてしまう

私は風俗嬢が差別されていることを知っている。
「どうしてこんな仕事してるの?可愛いのにもったいない」と何度言われたことか。

『もったいないってなんだよ!自分の意思で仕事してるのに!』という思いをグッとこらえて「可愛いなんて…」と謙遜したり「この仕事大好きなんです♡」とかわしたりしていた。

直接言われなかったとしても「この仕事をするのには相当な理由があるのだろう。可哀想に」と思われているかもしれない。
それをなんとなく感じたこともあった。

もちろん、桜のケースや沖縄に生まれ育った人と、風俗嬢は違う。
生まれたときからその状況に向き合わなければならない場合と、人生の途中で差別される側に行ってしまった場合。

でも、風俗嬢としての社会的な問題を、風俗嬢本人に言われても困る。

福祉につながればいいのに。
借金があるなら自己破産すればいいのに。
生活保護を受ければいいのに。

それができないことだってある。
もちろん私のように、風俗で働くのがなんとなくちょうど良かったってことも。

実は私もマイノリティofマイノリティ?

私は見た目は普通だけど、21歳の時からずっと精神科にかかり続けて、現在は障がい者手帳2級を保持している。
これは一応マイノリティだと思う。わからないけど。

元風俗嬢でWebライターなんて肩書も、マイノリティだからこそ一応重宝されている。

たとえば何らかのアンケートに答えている時に
「職業は?」「前職は?」「お勤め先の役職は?」と聞かれたらうーんと考えてしまう。

沖縄に住んでオスプレイが日常的に飛んでいて、ブラックミックスのハーフの人とは全然違うけれど。
私は色んなマイノリティな部分が重なって今を生きている。

誰もが被差別者になり得る世界

たとえば今これを読んでいるあなたが事故に遭ったとして、足が動かなくなったとする。
途端に松葉杖か車いすでマイノリティになると考えたことがあるだろうか?

初体験が遅くて(もしくはまだで)コンプレックスを抱えていないだろうか。
逆にたくさんの人と交わりすぎて後悔しているかもしれない。
言わなければわからないことだけど、次にパートナーができたときに不安なのではないか?

夫婦で子どもを育てているそこの夫さん。
もし妻さんに何かあったらシングルファーザーになりますよ。
現実的に考えたことがありますか?
シングルファーザーはまだまだマイノリティです。

そして誰もが年をとって、社会的弱者になる。
電車で「お前は若いんだから立ってろ」と毒を吐く50代のあなたが、いつか外出すらままならなくなるかもしれない。
何かの病気で声が出せなくなって「席を譲ってほしい」と言えなくなる可能性だってある。

いつ誰がどんなマイノリティになって辛い思いをするかは誰にもわからない。

差別はいけない…でも…

もちろん差別は良くないこと。
だけど「自分は差別をしていない」と言い切れるだろうか?

恥ずかしい話だが、身体障がいを持つ女性と出会ったときに「どうしたらいいんだろう」と思ったことがある。
結果的には特別扱いなんてせず、ただ困っているときに手を貸すだけで良かった。
何の問題もなく仲良くなれた。

これは自分が思い出せることの一例に過ぎない。
正直に言うと、たまたまテレビで見た男性を「この人は早そう」「デカそう」とか勝手に思うこともある。

「~そう」ってなんだろう。
何がどうなのか全然わからないのに。
それが差別なのかどうかは別として、決めつけは良くない。

沖縄の問題も、うちなーんちゅ同士で決めつけないから何とかやってこれてるのだろう。

まとめ

私は北海道出身のため、正直に言って沖縄のことには明るくない。
ただ、最近は「自分はアイヌだ」と発信する人が増えてきた。
アイヌ語は発音だけで継承されてきた文化のため、発信しないとそれが途切れてしまうのだ(なんとかカタカナで表記はしている)

WOWOWプライム『フェンス』は、かなりリアルを追究しているが、沖縄出身の人だけが沖縄の人物を演じているわけではない。

うちなーんちゅと本土の人間、お互いを知ろうとする気持ちが大事なんだと思う。

差別に声をあげなければいけない気持ちはわかる。
口を閉ざしていれば、被害も何もなかったことにされる。

でもなんとなく感じている偏見や居心地の悪さに、いちいち声をあげるのもしんどい。
何か差別的な言葉を言われたら、スルーするか説明するかのどちらかだ。
スルーすれば差別はそのまま残る。

辛いなら、無理に声をあげなくてもいい。
それで自分が救われるなら。

あとがきに変えて注意点

もしこのドラマを見てみようと思っても、特に性被害に遭ったことがある方は注意してください。
性暴力のシーンが、人によってはとても生々しく感じることもあるかもしれません。

私は過去、法律に照らし合わせても被害とは言えない被害に遭いました。
そんな程度でも、このドラマを見ていると時々辛くなることがあります。
その被害は風俗を始めて以降のことなので「普段からそういう仕事してるくせに」と思われても仕方ないと思ってしまうんです。
自分で自分を差別したのかもしれません。

このドラマを知ったとき、今ノリにノッている野木亜希子脚本で、主演は松岡茉優。
さらには沖縄返還50年にあたって作成されたドラマなのに、なぜ地上波でやらないんだろうと思いました。

見ていればわかります。
沖縄の基地問題、日米地位協定による表に出ない犯罪、性暴力描写。
逆に言えば、WOWOWといえどよくここまでやったなとも思えます。

まとめでも触れたとおり、私は沖縄のことに詳しくありません。
でもそれだけリアルを感じました。
野木亜希子ドラマのいちファンであるから、取材には絶対手を抜かないと知っています。

少し勉強してみたいと思いました。
上辺だけじゃ出てこないこともあるのだろうけど。


連続ドラマW フェンス


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