【祈願上手】神様に好かれたら
神様に好かれる人間っているよね。
性根がまっすぐで日頃の行いが良いのか、たまたまそういう星の下に生まれたのかは知らないけれど。
例えば不思議と幸運が続くとか、九死に一生を得るとか。
「あとはそうだな、願い事が叶うとか」
眼鏡の奥の目を細めて男が笑う。
駅ビルの軒先から見上げる空は土砂降りで、だけども男のささやくような声はよく耳に届いた。
ワイシャツに灰色のスラックス姿、一見地味な男だった。印象に残らない、と言ってもよい。ぼんやりと考え事をしていた佐倉などは、いつから隣に立っていたのかすら分からない。
「でもあまり羨ましく思わない方が良い」
どこか遠くでサイレンが鳴っている。甲高い狂騒は悲鳴だろうか。
懺悔室の神父のように、説法を説く僧侶のように、男は笑う。
ーーそういう人間は側に呼ばれてしまうからね、長生きは出来ないものさ
こちら参加させて頂きました。(本文356文字)
今回はほんのりブラックめを目指しました。神様の愛が人間にとっていつでも良いものとは限らないのだよ、というお話。