【海の日を】漁師町の思い出 #シロクマ文芸部【エッセイ】
海の日を知っている?
7月の第三月曜日で、“海の恩恵に感謝し、海洋国家日本の繁栄を願う日”であるらしい。
ーー海開きの日とか、そういうのだと思ってた。
昔は7月の第三週なんて、まだ泳ぐには肌寒い年もあったんじゃがのう……と、謎にご老人ムーブをかましてしまうが、昨今の暑さを思えば致し方あるまい。
子どもの頃は夏休みの度に母の実家がある漁師町へ行き、海でもよく遊んでいた。
そもそも祖母の家の目の前が船着き場だったので、潮の匂いと波音はよく覚えている。
海面に浸かった壁際にびっしり並んだフジツボとか、釣り餌をちょびちょび啄みながら全然食い付かないフグっぽい小魚とか、小型船を繋ぐすのこのような心許ない足場とか。迎え火の焦げ臭さと共に、海水浴場よりも印象深いかもしれない。
近くには小規模ながら卸売市場のような場所もあり、夜には盆踊り会場にもなっていた。よく叔父がベビーカステラのお使いと言ってお小遣いをくれたので、くじ引き屋台で光るブレスレットみたいな謎玩具を引き当てていた。
祖母も叔父も既に亡く、かの家も手放されて久しい。
顔馴染みのかき氷屋さんも今では銀行が建ったと聞くが、あの紺碧だけはこれからも変わらず在り続けてくれるだろうか。
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