地域猫活動 その7
いつも記事をご覧いただいている皆様、ありがとうございます。かなり春らしい天候が続いている地域もあります。私たちにとっても、外猫にとっても過ごしやすい季節になっているものの、まだまだ、油断すると、朝晩と日中の気温差で風邪をひきそうな今日この頃です。
さて、本を読んで知り得たことや、テレビ番組から得た情報など、さらに最近ですと、欠かせないのがネット上にある情報でしょうね。これらのメディアを駆使して、今では学ぼうとすれば、資格の取得などの場合は別として、かなりのことを自分一人で学べる世の中だと思います。そんな中で、人それぞれ、好みのジャンルや求めている内容に違いはあるかと思いますが、「自分でも試してみたい」とか、「本当なのだろうか」と思うことはありませんか? 私は、猫の習性や行動パターンのようなものに関心を持ち、調べたりテレビで見ているうちに、いくつか実際に自分の手で試してみようとした事柄があります。ただ、当たり前のことですが、猫をいじめることになりそうなことや、ご近所様に迷惑になるようなことは論外とし、後々の地域猫活動に役立てることができそうなことを選びました。
猫は、寝泊まりできる場所を提供したら利用するか
外生活をする猫たちに、寝泊まりできる(居場所にできそうな)場所を作って提供したら、本当に使ってくれるのかどうかということを試してみたくなりました。きっかけは、うちの庭に小さな物置を自作することにしたので、ついでにその実験ができて、かつ、その後も使える設備を考えてみたくなったからです。
いくらDIYが得意とは言え、笑われるのがオチではないかと思いますが、凍結防止剤や除雪用具など、冬しか使わないような物の収納場所が、うちにはなかったので作ることにしました。ちょうど、大きさの感覚としては、以前は街角のあちこちにあった、「電話ボックス」をひとまわり小さくしたような大きさです。(電話ボックスは最近非常に珍しくなりましたね)
なぜこんな設計にしようとしたかと言うと、NHKの「ダーウィンが来た!」で紹介された相島のことを思い出したからです。民家の物置で猫が出産と子育てをした話題がありました。つまり、そういう民家の物置と似たような条件の場所を、意図的に作っておくと、この辺に住んでる猫たちが、それを使ってくれるものなのかどうか知りたくなったからです。これはただ単に猫の生態を調べたいという目的だけでなく、近い将来実施する予定である「捕獲作戦」のために、猫たちを徐々におびき寄せる目的もあったからです。さらにもうひとつ言うと、地域猫を捕獲しようとすると、多くの場合は捕獲器を使用することになります。その猫が入った状態の捕獲器を、動物病院に収容するまで、一時的に保管する場所として使いたかったためでもあります。捕獲器を一時的に保管するには、我が家の場合には玄関でも、何とか置くことはできるんですが、きちんとノミ・ダニ駆除薬品をまだ施していない外猫を扱う時は、一応警戒した方がいいと思いました。マダニが媒介すると言われている、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)ウイルス陽性のマダニが、関東地方の各地でも、チラホラと確認され始めています。西日本の地域から発生し始めたこの感染症は人に感染すると死亡例もあり、今後の詳しい調査で、我々の身近な所に危険があることがわかるかも知れません。また、最近の研究で、この感染症が猫にも感染することがわかっており、その感染した猫に噛まれた飼い主や獣医師が、気の毒にも感染してしまったということもあったそうです。猫や人に対する思いやりから行う地域猫活動で、重篤になる恐れがある感染症をもらってしまって病院通いでは、何のためのボランティア活動なのかわからなくなってしまいます。
猫ハウスを自作している人が、結構多いらしいです。
動画投稿サイトなどで見ると、自宅の庭などに猫ハウス(外猫用)を作ってニャンたちの居場所を確保してあげているという方は、結構多いようですね。特に寒い季節は、震えながら丸まっている外猫を見ると、「このままではかわいそうだ」と考える人は多いかと思います。ただ、私の場合は、それもあるのですが、猫たちが「自分の居場所にもできる」という場所を、どうやって見つけるか、あるいは、どんなタイミングで見つけるのかが、特に興味がある内容でした。
これならコストも手間もあまりかかりませんね。猫探偵の方の言葉じゃないけど、この際「猫目線」になって考えて見ましょう。人間でもそうですが、たまたま通りかかった場所に、おもしろそうな場所(ほしいものを売ってるお店など)があったら、寄ってみたくなることはあるはずです。それは猫もきっと同じだと思います。しかし、このような低い場所に設置した猫ハウスだと、通りすがりの猫も視野に入る範囲なので、当然見つけやすく、利用してくれる猫も多いことが予想されるわけです。ですから危険な外敵などからも丸見えで、こんな環境では、母猫が子育てに使う場所としては、ふさわしくないと容易に想像できます。そのために、私は説明図1のように、物置の上部に猫ハウス(「保護ボックス」と呼んでおきました)を設定してみたのです。つまり、通りすがりの猫には簡単に見つけられないけど、その場所に興味を持って探検したら見つけられるという設備にしたかったのです。
それではいよいよ実験開始です。
実は、説明図1で示したような物置+「保護ボックス」は、この親子がうちの庭に来る前に、すでに完成していたのですが、しばらくは様子を見るために、入り口を閉めて、運用していませんでした。ただ、説明図2で示した、段ボールの箱に穴を開けた簡易な猫ハウスは、すでに物置のすぐ下に置いておいたので、それはそのまま、この親子に使ってもらうことにしました。
このナナは、地域猫の中でも、比較的人間に慣れていて、観察のしやすい個体でした。この時点で、推定3歳ぐらいかと思いましたが、2019年に調査を開始する前からいましたので、詳細はわかりませんでした。
一方、息子のサスケは、この時点で生後2ヶ月から2ヶ月半ぐらいかと思いました。性格は人懐こく、ベランダを開けると、うちに上がり込んで来ようとすることが何度もありました。
ガラス窓越しに撮影したので少々不鮮明ですが、私はできるだけ大きな音などで脅かさないように、そっと様子を見守りました。
子猫サスケも、すでに歯が生え揃っていますし、ドライフードでも猫缶でも、何でも母親のナナと同じ物が食べられるようでしたが、時々このように、まだお乳も飲んでいました。それから、2匹は私のうちの庭を、しばらく間の「仮の住まい」に決めたようでした。
猫の学習能力と好奇心にびっくり!
この保護ボックスは、入り口を閉めておくことができる構造にしてありました。ですから、この日まで、この中に寝泊まりできる場所があるのは、2匹とも知らなかったはずなのです。それを、ある日親子がどこかに出かけている時間帯に、さりげなく入り口を開けて、保護ボックスの中には、小皿にドライフードを入れて置いておきました。するとどうでしょう。その日の夕方には、すでにこの親子は、しっかり見つけて施設を利用していたのです。
母猫のナナは、まるで見張りをするかのように、この場所にいて、実はこの時、写真の画面に写ってませんが、中にはちゃんとサスケがいたんです。と言うわけで、この親子が当家の保護ボックスが落成してから、最初の「お客様」としてご利用になった猫様でした。長くなりましたので、この先は、次回に続けます。
最後までお読みいただいた皆様、お付き合いありがとうございました。