アヴァンチュールイズデッド
アヴァンチュールはフランス語で冒険の意。
そこから転じて日本語では男女の危険な恋愛を指す言葉になったらしい。春、新しい生活にも慣れ、夏、少し浮世立ちした男女が互いに惹かれ恋に落ちる、スリルを求めて。わけもなく新しい世界に飛び込ませようとする謎の勢力が私や彼女や彼らの背中を押すのだ。ホラー映画が未だに作り続けられるように、人はスリルには抗えない。人間の好奇心は常に暗い夜道の向こう側を見ようとする。見知ったコンクリートより知らない畦道の土を踏んでみたくなる。勇気を出してあなたの浴衣の袖を掴む。大いに結構。アヴァンチュールは冒険なのだ。しかし大半は暗い道の怖さを時が経って思いだす。引き返そうとする頃にはもう戻れないところまできている。夏の魔物は恐ろしい。私達の心をエサに陽炎のような幻を抱かせてくる。夏のアヴァンチュールが死んでから、いつしか指には君の袖の感触だけが残るのはかんべんかんべん。