祖母a.k.a.怒鳴り婆
私には祖母がいる。父方も母方も祖父は私が生まれる前に亡くなっているのだが、祖母に関しては両家健在である。
その中でも母方の祖母「たづ」はとてつもない人だった。
天真爛漫で元気旺盛、若々しくてエネルギーの塊のような私は友達が沢山おり、知るところ敵なしであった。たった一人祖母を除いて。
私の父母の結婚の際に母が嫁いできた形で家族が始まったわけだが、その中でもたづは権力者として猛威を奮っていた。
私は小学校を終えるとすぐに友達を家に集めていた。少ない時で五人多い時で十人ほど家に集まっていた。もちろん家は軽いお祭りごとになり以前にも書いた経年劣化のオンパレードである我が家は軋んだり、凹んだり、それがまた祭囃子のようで燃えたぎる子供心に薪をくべた。
しかし母や父も家が汚れること自体に対してはとくべつ何も思っていなかった。賃貸マンションや借家のように大家から文句の言われることのない祖父から継がれた実家である。今更事を荒立てて文句を言うことはなかった。しかし祖母であるたづは違った。
戦いはまず帰宅後から始まる。
帰宅後、家の門を潜り、庭を一直線に入っていくとすぐ玄関に辿り着く。それを見守るようにしてたづが様子を覗ける大窓の付近に門番のように鎮座している。
私の姿が見えた時は無論何も言わないのだが、後ろから、先に各々の家まで帰宅して遊びに来た子供達が私の後ろから一斉に押しかけてくる。
すると第一声はただいまという暖かい言葉ではなく
「来るなぁ!!!!」
という罵声に変化する。
ワラワラと集まってくる子供達が、彼女には百鬼夜行に見えていたことであろう。しかし百鬼夜行は夜にするものである。あくまで放課後、16時を過ぎの話であり、まだまだ明るい時間帯。子供にとってはそこから寝るまでゴールデンタイムなのだ。昔話で語られるまさに「全盛期」、私達は止まるところを知らなかった。
続々と集まりだす子供達とひたすら罵声を飛ばすたづ。これが日常茶飯事であった。
門番の罵声を潜り抜けた猛者達は家の中でどんちゃん騒ぎを始める。やれ流行のカードやゲームを始め、持ち寄ったお菓子をぼろぼろとこぼす。
気が変われば庭で鬼ごっこや隠れんぼをそれぞれの門限一杯まで遊んだ。あの時の夕焼けは未だに記憶の中にあるノスタルジックな一面だ。しかしそれはたづの怒鳴り声と紐付きである。
部屋で遊ぼうが、庭で遊ぼうがたづは止まらない。
今日はここまでにします。
続きは明日投稿します。
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