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ウラ・フォン・ブランデンブルク展

先日のお休みは、エスパス ルイ・ヴィトン大阪で開催されているウラ・フォン・ブランデンブルク展へ行ってきました。

このヴィジュアル、とてもカッコイイです。

パリを拠点に活動するドイツ人アーティストのウラ・フォン・ブランデンブルクは、映像やドローイング、壁画、インスタレーションなど多岐にわたる作品で知られており、展示空間をさまざまに形作るために「垂れ幕」のような演劇的な要素を繰り返し用いています。

今回の展覧会でもそんな空間を作り上げていました。


本展では、現代劇場以前の形態、神秘主義、19世紀のオカルティズムと20世紀の合理主義の変遷に対する彼女の関心を反映したモノクロのビデオインスタレーション作品《Singspiel》(2009年)と《Chorspiel》(2010年)の2作品が展示されています。


《Singspiel》は、18世紀後半のドイツで上演されていたオペラの形式を参照し、フォン・ブランデンブルク自身が歌う2曲に合わせて、さまざまな年齢層の人々が集う家族の食事風景や、野外劇場での奇妙なパフォーマンスを描き出しています。

撮影地は、ル・コルビュジエが手掛けたサヴォア邸。

家の家具までも建築に合わせて作られたという、コルビュジエの初期の代表作として有名な建築物です。

もともとは、サヴォア夫人が体調を崩した息子の為にコルビュジエに依頼したものらしいです。
しかし、当時としては斬新なデザインで設計された為、実際住んでみると頻繁に雨漏りがしたり、部屋の中でも寒さが酷かったりと、息子の体調はさらに悪化したそうです。
夫人はコルビュジエに苦情の手紙を書きましたが、コルビュジエからの返答は「モダニズム建築というのは、そういうものだから」という心無いものだったらしいです。

そういったエピソードからの着想も本作には込められているそうです。


僕が独立して美容室を始めた当時は、カッティングエッジなヘアデザインを主とする美容室なんて特に関西圏ではほぼありませんでした。

その頃は自分も若かったですし、カッコイイ髪型を作るヘアサロンにしたいという思いもあってエッジの効いたモダンなデザインの髪型を自分から好んで作っていました。(今ならお客様の要望に合わせてもう少し上手くデザインのバランスに振れ幅を持たせます)

たまにお客様から、「ここはこういう感じでいいんですか?」というような戸惑いのお声をいただくこともありました。多分、そのお客様に対してカットラインが強過ぎたのだと思います…
でも、その時は「あ、ごめんなさい。もう少し崩しておきますね」としか僕には言えなかったです。
コルビュジエのような返答は本物の人だから言えることであって、僕なんかがその時「モダニズム・カットとはこういうものだから」みたいにお客様に返してたら、その先そのお客様との会話は凍結され、今頃僕は美容師ではない別の仕事をしていたでしょう。

僕は、ヌーヴェルヴァーグとかニュー・ジャーマン・シネマとかのアンチ・ブルジョワな作品も好きでよく観るのですが、この作品がアンチ・ブルジョワなものなのか、それとも新進気鋭の建築家,ル・コルビュジエにオファーした結果悲惨な思いをしたブルジョワ側に立ったスタンスのものなのかはわかりませんが、僕は現代アートなのだからアンチ・ブルジョワな視点で作られたものだという見方で鑑賞させていただきました。

この内容をルイス・ブニュエルとかに映画化してほしかったな、とか思ったりしました。
ブニュエル的シュールレアリスムの世界観とコルビュジエのモダニズムの融合した映像が観てみたかったです。

天井から垂らされているスピーカーも面白かったです。


来場者の為に置かれている椅子も、映像で出てくるサヴォア邸のものと同じものでした。

もはやフォン・ブランデンブルクが凄いのか、ベルナール・アルノーが凄いのか、わかりません。
とにかくアルノー会長が現代アート好きだということはわかります。

こんな力の込もった展覧会を毎回無料で見せていただいて、本当にありがとうございます。

もうひとつの作品《Chorspiel》も観ましたが、個人的には《Singspiel》の方が興味深かったです。

本展は来年3月まで開催されていますので、ご興味のある方はぜひ足を運んでみてください!

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