インドネシアのハラル表示義務化
2024年10月からインドネシアで販売・提供される飲食料品に関して、ハラル認証品か否かの表示が義務化される。これは2014年にハラル製品保証法が制定され、制度化が進められてきた事に基づいている。以下の時期に各製品に関してハラル認証品か非認証品かの表示義務が予定されている。
2024年10月 飲食料品
2026年10月 化粧品、伝統医薬、医薬部外品、サプリメント、化学品、衣料品、文房具など
2029年10月 市販薬など
各企業や店舗は対応が迫られる課題である。また対象となる商品は多岐に渡る為、今までよりもより厳格な対応が必要になると考えられる。日本に住む日本人にはあまり馴染みがない文化・意識だろうと思われ、インドネシアに進出している日系企業の苦慮も想像に難しくない。またこの認証取得には定められた機関での申請・審査が必要で、この先1年での申請・審査が大幅に増加される見込みで予定通り進むのか、不透明が現地でも懸念されている。
インドネシアで生活や生業をする以上、このイスラム文化を理解しないとうまく進まない事を分かっているつもりでも、中々どこまで厳格なのか、どの人がどこまでなのかという事を私も未だに感じる部分がある。幸いという言葉は適切ではないかもしれないが、私のインドネシアの知人の多くはイスラム教を信仰している者が殆どの為、自然とこの様な対応と配慮を理解しているつもりである。また相手方もこちらがイスラムではない事を理解してる為、配慮が十分あるので大きなトラブルや認識違いになったことはない。
一方で私が始めてインドネシアを訪れた2004年頃とは違う文化も生まれている。
その頃も日本料理屋や韓国料理屋では豚料理とアルコール類を提供するお店は少なからず存在し、久しぶりに食べてやはり豚の味を懐かしんだ記憶がある。しかし今はその頃では考えられない数の非ハラルの物を提供するお店が増え、高級モールには外国人向けに豚肉・アルコール類の陳列が多くなった。ずいぶん寛容になったものだと感じたのである。コロナ禍を除いて、インドネシアも外国人がさらに増え、それに伴い多様な文化を許容する空気感が増したのだ。しかし一方ではインドネシア最大の宗教であるイスラム教のイスラム化を厳格にするという動きもあるのがインドネシアという国なのだと改めて感じるのである。どちらが正解という事柄ではない為、どちらの動きが進むべきだという議論は行うべきではない。しかし、インドネシア建国の精神であるパンチャシラには「多様性の中の統一」が書かれている。この精神は絶対に守るべき事だと強く思う。以前の文章にも書いたが、インドネシアは政変を多く経験してきた、また当然の事だが、大統領が変わる政策の転換がある事も多い。その中で今のインドネシアがあるのだ。
このハラル表示義務化を通じて、インドネシア国民が更に多様性への理解が深まることを願いたい。またこれからのインドネシアを担う若い世代の意見・考え・感覚を大切にして欲しい。このハラル表示義務化が他宗教・多文化・多様性への理解の弊害になってはいけない、多様性の中の統一はこれまでもこれからも他を受け入れる・思いやる事で成り立つのであるから。