生きろ vol.1.5

いつの間にか、寝てたみたいだ。

しかしそんなわけが無い。だって今までレコーディングが終わったとは思えない。まだ音楽は続いてる。
でもみんな、それが何時からやってるかも不明なくらい集中力を出してる。

スタジオのスタッフはガチャガチャと扉を開けようとしてる。

(鍵かけてたな)

そう思って僕はヘロヘロになっていたので精一杯の力で扉の鍵を開ける。

「生音、取れたぞ」

起きろが最初じゃないのがさすがディレクター。それを求めてたんだもんな。

みんながそれを聞いてもまだなんの反応がないのは、必死だったからで、壊れたわけじゃない。

「まじ?」

最初にメンバーでそう聞いたのは齋藤だった。

「なんか気が付いたらスティックは折れてるわ、みんななんかどこまで行くかとかもわかんなかったから、叩いてはいたけど」

米原は、
「何回かベース触ったことはあったけど、ここまで声だけで引っ張られてGACKTの「Another World」的に持ってかれちゃった」

ギターの2人は、
「同じく。ドラムもベースも早くてフレーズを無視してスクラッチしちゃったよ」
と、リードギターの深雪と、
「始まってからオープンコードで思うまま弾いてたよ。それがベストだと思ってた」
「え、みんなそんなの覚えてるの? 私、もう何やってたかわかんなかった。何が起こってもやりきるって決めてたんだけど」

「試しに配信してみる? みんなぐちゃぐちゃだったけど、動画は回してた」

「えーっ! ヨダレ出てたりするからやめて欲しかった」

そう言った双子は髪とか服とかが、早着替えみたいなボサボサになってた。

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