喫煙所巡り
ふと、煙草を吸わなくなって2年以上経過していることに気が付いた。
かつては朝起きて一服、飯を食べて一服、音楽を聴きながら、小説を書きながら、部屋で映画を観ながら……とにかく煙草に火をともしていた。喫煙者の周りには喫煙者が多く、自然と喫煙者と行動を共にするようになった。コンビニに足繁く通い、番号を告げて買っていたが、そのうち店員さんに顔を覚えられて会計の時に箱がスッと出されるようになった。ありがたい。
喫煙者でなければ喫煙所に立ち寄ることはないかもしれない。友人が「わり、ちょっとヤニ休憩(笑)」とか言ったときに吸わないけど隣で待つ時くらいだろうか。友人はさぞ美味しそうに煙草を吸っているはずだ。しかし、大抵「煙草は体に悪いからやめとけよ」「百害あって一利なし、だ」と言うだろう。恐らく彼らは本気でそう言っているのだ。
喫煙者のほとんど全員が「煙草は嗜好品」「煙草は健康を害する」という事実を理解している。理解しているが今日も煙草に火をともす。夜の喫煙所を離れて見ると蛍が飛んでいるように錯覚する。
煙草を吸っていて,できた友人がいる。喫煙所はコミュニケーションの場になる。友人の友人と話すきっかけになる。友人がいない時に出会っても自然と会話できる間柄になれる。煙草を口に咥えながら無目的にスマホを眺めるより、誰かと話す方が退屈しのぎになるかもしれない。同じ銘柄を吸っているだけでシンパシーも感じる。逆に全く見たことがない銘柄の場合もそれはそれで盛り上がる。紙煙草と加熱式煙草の違いもある。ぼくは紙煙草ばかり吸っていた。
時は流れていく。人の暮らしが変わるように街も変わる。
以前は煙草を吸えた空間で吸えなくなり、喫煙所だった場所が別の施設になったり、休憩所に変貌していった。商店街の直線を歩いていればどこかしらで灰皿を見つけられたがいつの間にか撤去された。喫煙者たちで吸える場所を共有した。ぼくたちと同じ考えの人が各々の煙草に火をつけた。煙は空に、あるいは換気扇に吸い込まれていく。喫煙者を減らす方法としてそもそも外出先で煙草を吸える場所を減らすのは効果的だと思った。
現在、煙草を吸いたいと思う瞬間は意外にもない。これは自分でもびっくりだ。禁煙は難しい、また煙草を吸ってしまう……というイメージがあった。まぁ個人差としか言いようがないのだろう。ぼくは大丈夫だった。煙草を吸う代わりに何か始めたってこともない気がする。環境の変化もあり、周りに喫煙者がいないのも大きい気がする。
でも、絶対に吸わない! ってわけではない。何かきっかけがあればまた煙草を吸うかもしれない。それくらいの気持ちでいる。
そんな感じ!
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