まる風太

障害福祉や高齢者介護に関する執筆活動をしています。 福祉の支援で専門職たちは事例検討を…

まる風太

障害福祉や高齢者介護に関する執筆活動をしています。 福祉の支援で専門職たちは事例検討をして多くのケース対応を学んでいきます。 あらゆる場面をすべて一人で経験するわけにもいかないからです。 孤立しがちな相談業務の方たちに「あー、そうそう」一人じゃないって感じてもらえれば幸いです。

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介護に求めるもの(後編)

介護保険サービスの在り方に疑問を感じた。 認知症の方たちが求めているのは、援助と介護だけではない。 AIの時代に変わり、介護の世界にも合理性が持ち込まれ各個室の入り口をセンサーで管理するようになった現在。 スタッフは遠隔の部屋から全室のモニターを見て、危険な場面や必要のある時のみ訪問することができる。 たしかに今は慢性的なスタッフ不足で、募集しても集まらない。必然、高い紹介料を払わざるを得ない現状がある。 この方法なら最小限の人数で、無駄のない整然とした管理ができる。 だ

    • 介護に求めるもの(前編)

      介護施設に入所している方だが、住宅型のためケアマネジャーの音無茜が担当し毎月の訪問をする。在宅から担当していた男性で、学者を退任したのちは好きな研究をつづけながら、良妻賢母の妻をこよなく愛し暮らしていた紳士だった。 支援者や近隣の人からも「先生」と呼ばれるようになっていた。しかし認知症は残酷にもその人の人格を変え、どんなときにも大切にしてきた妻に暴言を吐くようになり、妻は逡巡し、葛藤のすえ施設入居を決めたのだった。 認知症状が動かないならあきらめもつくのだろうが、なにより辛

      • 盗癖(後編)

        どうやら、タエさんの希望で洗濯物を干していた間のことらしい。生活保護受給者が多く住んでいるワンKアパートで狭いベランダに部屋に背を向けて干していたときのこと。私物の置き場所を問うと、ベッドの端に座った本人の目の前のちゃぶ台の傍に置いていたという。 タエさんがわざとベランダに洗濯物を干させたのかどうかは知るすべもない。犯罪歴があったわけではないので、タエさんの盗癖は隠されたまま紹介されていたのだが、後に分かった性癖からして目の前のトートバッグは衝動を抑えきれない魅力だったに違

        • 盗癖(前編)

          独居の高齢女性タエさんを担当しているヘルパー事業所の管理者から電話が入った。 電話の向こうで、声をひそめる話し方にただならぬ様子を感じて胸騒ぎがする。 持病もあれば食事事情も最悪な環境だ、もしや不測の事態かと長年の条件反射が一瞬の良くない予感を感じる。 「お金を盗られました」と彼女が言った。なぁーんだよ、いっぺんで緊張感が抜けた。 いつも、ひょうひょうとしていて人を食ったところのあるバアチャンだ。 そして、リハビリの男性が訪問すると動けていたからだが急に動けなくなり、同情

        介護に求めるもの(後編)

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