サイコパスとアンドロイドと地球外知的生命体(7)
サイコパス隔離計画は誰にも知られず、静かに進んでいた。隔離まで、数年はかかるだろう。
最大の懸念は、軍の指揮官や反社会的勢力の武力による反抗である。いかに軍隊を味方につけるかがポイントになる。順序としては、先に軍の指揮官のサイコパスを隔離する。次に、軍を動かせる力をもった大統領などのサイコパスを隔離する。軍の指揮官がまともな人間になり、大統領がサイコパスで逮捕されれば、大統領は軍に命令できない。
こうして、大統領、軍の指揮官にサイコパスがいなくなれば、圧倒的な数の軍隊で、反社会的勢力に圧力をかけ、投降させる。それでも、逃亡する人間はいるだろう。しかし、組織を失った人間は隠れるだけだ。それも、アンドロイドによって、すぐに見つかるだろう。
しかし、人類の男性の三パーセント、女性の一パーセントを隔離するという大きな計画である。何があるか、わからない。万全の注意が必要だ。毛穴一つの穴から情報が漏れただけで失敗する。それは何か。想定しなければならない。KのAIに失敗する要因を探させ、その穴を埋めさせよう。
Kは、隔離までの計画をたて、その第一段階を世界中の二百億のアンドロイドに指示した。サイコパス隔離計画において、各アンドロイドによって、やるべきことは違う。Kは、二百億のアンドロイドそれぞれに違った指示を、一瞬でおこなった。KのAIは、人間なら百億人分の仕事を一瞬でおこなった。
ただ、私には、Kの前世のシュミレーションのほうが楽しみだった。それは、Kも同じだった。
Kは、前世のシュミレーションを実感できる方法を考えた。シュミレーションするIの生まれてからの二十四時間、三百六十五日をすべて追体験することにした。九十五年間である。そのシュミレーションを数時間でつくった。同じように、数時間で体験した。体験が終わったKは、喜びに溢れていた。
「私は、この体験を無意識にしたくありません。想像を絶する大きさの喜びです。会う人、すべてを幸福にしてしまいます。これ以上の幸福はありません」