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サイコパスとアンドロイドと地球外知的生命体(11)
世界中の国の潜水艦にいるアンドロイドの情報から全貌がわかった。
核ミサイルを発射した国は、アメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリス、北朝鮮、インド、パキスタン、イラン、イスラエル、核保有国すべてだった。
世界中の人々は、水と食料のある田園地帯へと移動していった。こうして、すべての人は農民になった。
サイコパスは、都市部で窃盗していた。
私は、世界中のナノボットの工場を修理した。残ったアンドロイドで電気設備を修理し、工場を稼働させた。
アンドロイドは、優先順位の高いところから配置した。電気設備の修理。医師。看護師。介護士。電子機器の工場の修理と稼働、管理。農民に必要な道具の工場の修理と稼働と管理。すべては、Kにまかせた。
百分の一ミリのヘビたちは、核のボタンを押した首脳の部屋に入った。彼らの生の声が入ってきた。
核保有国の首脳の目的は、アンドロイドの破壊だった。首脳は全員、アンドロイド反対派だった。彼らの本当の動機は、私への嫉妬だった。
月面に住んでいることが、上から見下されているように感じていたらしい。
また、米国の総軍でも勝てないという月の防御体制は世界一強いように見えたらしい。
地球の二百億のアンドロイドを動かす絶対者が君臨しているように見えたらしい。
地球の電力も、月と人工衛星から供給していた。私に電力を止められたら、人類は生きていけない。そう、脅迫するのではないか。そうなる前に、そうしてしまおう。電磁パルスで、アンドロイドと電気設備を破壊して、私を困らせようとしたらしい。
本当にくだらない連中だ。私には、そんな気持ちは微塵もない。のんびり、Kと暮らしていただけだ。最近は、読書と祈りに集中し、人間性を磨いていた。地球外の知的生命体が人類に接触しない理由がわかった気がした。人間性の問題だ。
サイコパス以外は、農民になった。
幸運なことは、軍人には、ほぼサイコパスがいなかったことだった。これは合点がいった。彼らは他人のために働くことはしない。しかも、自分の命を危険にさらすことなどするはずがない。
そのため、世界の軍事基地は正常だった。
また、軍事基地を守るために必要な兵士だけが基地に残り、大部分の兵士は農民になった。それは、軍事基地に食料を届けるという目的だけではなく、兵士が自ら農民になることを願ったのだった。それは、農民と農地をサイコパスから守るためだった。彼らは戦車などの重火器で武装していた。反社会的勢力は手出しできなかった。
しかし、アンドロイドが、あらゆる産業を担うことは変わらない。
もう一度、百億のアンドロイドをつくらなければならない。
世界中のナノボットの工場を再稼働させるため、残ったアンドロイドが工場の修理をした。
核兵器を使用した首脳たちは、核シェルターに隠れて出てこなかった。いずれ、民衆から裁きを受けるだろう。
これで、世界の政治家がガラッと入れ替わる。
私は、政治家を無償のボランティアにすれば、本当に良い人材が政治家になると考え、これを広めることにした。
そして、世界連邦のようなものをつくり、軍隊も縮小していくのである。
これは、Iがめざしたものだった。
地球を見ながら、スコッチを飲んでいた。
隣のKは、言った。
「これで、都市部にサイコパスを隔離できましたね」
「おお。そうだな。面倒なことを何もせずにすむ」
「一番、いい形かもしれません。軍人も農民になりましたから、彼らがサイコパスからそうでない人を守ってくれます。農民ほど、健康にいい仕事はありません。日々、日光を浴びて体を動かします。またコミュニティによる共同作業もあります。ハーバード大学の研究によって、人間の幸福はコミュニティにあるとされています」
私は、日々、祈っていることを口にした。
「あとは、地球外知的生命体とのコンタクトだ」
「はい」
Kの微笑みはまぶしかった。
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