シロクマ文芸部/星降注意報
星が降る。本当に降る。
僕らの町の家の屋根はみんなぼこぼこ。
必ず一ヶ所は穴が空いてて、ブルーシートを掛けて凌いでいるけど
次の星が降ったら僕ん家の屋根も潰れるだろうってお婆ちゃんが言ってた。
ここは危ないからって、町の半分の人達はどこかへ引っ越していった。
たー君も、はやて君も、よっちゃんも、みんないなくなっちゃった。
天気予報が星降注意報を出してる。一週間以内にまた星が降るだろうと。
十分気をつけてくださいとセミロングのお姉さんは言った。
天井に貼った黒い防水テープはまるで大きな蜘蛛みたい。
先月直撃した星が作ったひび割れは今までで一番大きい。
木板の模様がずれてて稲妻になってるけれど
その日のうちに修理したお父さんは、まだ大丈夫と言った。
でも次が落ちたら絶対大丈夫じゃない。
「僕らは引っ越さなくていいの?」
夕食のカレーライスを食べながら聞いた。
今日のカレーは僕の好きなチキンカレーで骨付き肉が二つも入っている。
8時間煮込んで作るお父さんの得意料理だ。
肉は前歯で噛むだけでホロホロ崩れるやわらかさ。
「ここはみんなの故郷だから引っ越しはしない。
屋根は壊れたら直せばいい。明日からまたお婆ちゃんの家に
お邪魔させてもらおう。学校のもの忘れないようにな」
分かった、とすっかり裸になった骨をライスの横に置いて指を舐めると、
お父さんがティッシュを抜いて差し出した。
夜のうちに僕は荷物をまとめた。
もしかしたら星が降ってくるのは今夜かもしれない。
部屋に落ちたらお婆ちゃん家にいる猫のミーに会えないな。
そしたら寂しいな。お婆ちゃんも僕が来なくてがっかりするだろうな。
僕は仰向けのままお祈りのポーズをして
明日にしてね、と星に願った。
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こちらの企画に参加させて頂きました。
星が降る。本当に降る。道草を食う。本当に食う。
ロマンチックなお話じゃなくてすいません😆