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毎週ショートショート/世界一しょぼいタイムスリップ


亜紀子はさっきから休む暇がない。
酒飲みで大食いの男が四人もいればどれだけ料理を作ってもすぐになくなるので、キッチンは大わらわだ。瞬く間に減ってゆくアルコールや氷も
当たり前のように亜紀子が補充しなければならない。

元野球部の夫は高校卒業して20年経った今も当時のチームメイトと仲が良くたまに家に連れてくる。
昔話に花を咲かせる彼はお喋りに夢中で何も手伝ってくれない。
一度だけ出場した甲子園の栄光にまだしがみついてる。

「もしタイムスリップできたら、準決の七回裏に戻りたいよ。
 おれがあの時ライトフライをキャッチしていればなあ…」

 自分のエラーで勝利を逃したのをずっと悔やんでいる。
 それを友人たちは慰めたり励ましたりしていた。

 あほくさ。
 亜紀子はシラケた思いで心で呟く。
 妻の気持ちもキャッチできない夫だからボールだって落とすのよ。

 もしタイムスリップできたら13年前に戻るわ。
 そしてこんなしょぼい男と結婚しない未来を選ぶわね。
 

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こちらの企画に参加させて頂きました。
一度だけタイムスリップできるなら
テリー・ホールが元気だった頃のSpecialsのライブに行きたい。
そのまま戻ってこれなくてもいい。
お読み下さりありがとうございました。
たらはかに様。宜しくお願いいたします🤗🐧


#世界一しょぼいタイムスリップ

#毎週ショートショートnote  



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