毎週ショートショート/月夜の寝ぐせ

こちらの続編です↑

「来月映画のオーディションあるから。よければお友達も一緒に」

池袋のパルコ前で名刺をもらい、行った会場で別室に呼ばれた私は

「君だけ合格。お友達には内密にしておいて」と言われた。

声を掛けられたのはゆっこちゃん。「絶対受ける！」と燥ぎ、
永瀬なんとかと付き合える未来まで瞬く間に辿り着いていた。

日時を覚えてなかった私は文字通りゆっこちゃんに叩き起こされ、
服を選ぶ暇もなく、トレーナーにジーンズのノーメイクで出掛けた。
全身バッチリのゆっこちゃんは愉快そうに「すぐ帰れるね」と私に言った。

「飾らない雰囲気がイメージに合う。小川月夜って名前もいい」

プロデューサーと名乗る男性は頭の右上を指差して笑った。
触ると髪が立っていた。

ゆっこちゃんを待つ間にトイレに行くと、Cの形の寝ぐせがついていた。
気付いてたのにゆっこちゃんは教えなかった。月夜、髪立ってるよと。

このことを話したらゆっこちゃんは怒るだろうな。
クリームシチューは作ってくれない気がする。

「顔ぶたないで。私女優なんだから」

昔の映画のセリフを真似して言ったみた。
エラスティカを口ずさんで鏡の前でぐるぐるステップを踏むと
風の草原を駆ける子供みたいに寝ぐせも無邪気に跳ね回った。



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こちらの企画に参加させて頂きました。
武器屋の餌付けの続編です。お読み下さりありがとうございました。
たらはかに様。宜しくお願いいたします。

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