シロクマ文芸部/副業
「働いてみたいのよね。私」
7人組グループの紅一点である彼女の発言に6人のメンバーは驚いた。
「働く?何言ってんだ。これ以上何をするっていうんだい」
「そうだよ。僕らもう充分働いているじゃないか」
「突然何を言い出すやら。全くアーティスト気質のある奴は
いつも変なこと言い出すよね」
反発するメンバーに彼女は首を曲げて腕を組んだ。
「これが働いていると言うの?愛想笑いしてお金もらってるだけじゃない。
私は労働をしたいの。汗を掻いて人の役に立ちたいのよ。
だからもうアルバイトに応募してあるの。ファミレスのウエイトレスよ。
今日から行くわ。新しい世界を見てみたいの」
ちょっと!と止めるメンバーの制止も振り切って彼女は出ていった。
そして大手チェーンのファミレスで勝手に働き始めてしまったのだ。
ミニスカートの制服に身を包んだ彼女はよく働いた。
やかましい女子高生やママ友軍団にも笑顔で対応する。
ミスもしない真面目な彼女はあっという間に店の看板店員となった。
美しい笑顔に優しくも凛とした人柄も評判。
その噂を聞き付けた芸能事務所からスカウトされた彼女は
特技のギターを弾いて歌うとすぐにスターの座に上り詰めた。
彼女の歌声は人の心を揺さぶって時に生き方まで変えた。
それほどの力があった。
その姿を見ていた6人の他のメンバーの気持ちにも変化が訪れた。
「僕たちもそれぞれの特技を活かして働いてみようか」
「そうだな。与えられた特性があるものな」
「ただ笑ってるだけなんてもう飽きたよ」
「今の時代は誰でも副業はしてるしな」
「じゃあ僕らも仕事を見つけよう」
「よし。ではしばらく解散だ」
そうしてみな船を降りた。そして個性を活かした副業を始めた。
金運財運の神の大黒天は投資コンサルタントに。
漁業作物の神の恵比寿天は気象予報士に。
戦いの神の毘沙門天は総合格闘家に。
人望の神の福禄寿は大統領に。
長寿の神の寿老人は医師に。
夫婦円満の神の布袋尊は結婚相談所所長に。
そして芸能の神の弁財天は人気歌手として世界ツアーを回っている。
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こちらの企画に参加させて頂きました。
神様がストライキ起こしたら?という発想から書きました。