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能動的な受け身な生き方
介護の仕事をしていると、日々さまざまな状況に対応しなければならず、「自分の思うようにはいかない」と感じることがあるかもしれません。
入居者様やご家族のニーズ、職場でのルールや業務の流れに従って動くことが多い中で、時には「自分は受け身で生きているのではないか」と感じる瞬間もあるのではないでしょうか。
でも、「受け身でいること」は必ずしも悪いことではありません。むしろ、それを「能動的な受け身」に変えることができれば、日々の生活や仕事に前向きなエネルギーを生み出すことができます。
この記事では、「受け身」という考え方を見直し、介護士として、そして一人の人間として充実した日々を送るための「能動的な受け身な生き方」について考えてみたいと思います。
「受け身」と「能動的な受け身」の違い
まず、「受け身」という言葉について考えてみましょう。一般的に「受け身」と聞くと、自分から行動しない、流されるだけの状態をイメージするかもしれません。
しかし、実際には「受け身」でいることは悪いことばかりではありません。
介護の現場では、入居者様のニーズに耳を傾け、相手に寄り添うことが求められます。
このときの「受け身」は、単なる消極性ではなく、むしろ相手を尊重し、相手の言葉や気持ちを受け取るための重要な姿勢です。
しかし、「ただ受け身でいる」ことと「能動的に受け身になる」ことには大きな違いがあります。
ただ受け身でいる状態
・状況に流されるだけで、自分の意思や選択が曖昧になる。
・「仕方ない」「どうせ自分には無理だ」と諦めてしまう。
能動的な受け身な状態
・状況を理解し、相手のニーズや環境に応じて自分の行動を選択する。
・相手や状況に対応しながらも、自分の意思や目標を持つ。
例えば、入居者様の要望に応じて動くのは一見「受け身」のように見えますが、そこに「どうすればより快適に過ごしてもらえるか」という考えが加われば、それは「能動的な受け身」に変わります。
能動的な受け身を実践するための3つのステップ
「能動的な受け身」を実践するには、いくつかのポイントがあります。以下の3つのステップを参考にしてみてください。
1. 自分の役割を理解する
まず、自分の役割をしっかりと理解することが大切です。介護の現場では、入居者様一人ひとりの生活を支えるために、あなたが果たしている役割はとても重要です。
たとえば、入居者様の要望を聞く場面では、「どうしてこの要望を伝えているのか?」という背景に目を向けると、自分ができることの意味が見えてきます。
例: 食事の場面
入居者様が「お茶をもっと飲みたい」と言ったとき、「どうしてそう感じたのか」を考えることで、喉の渇きや食事の味への感想、日常の満足感など、さまざまなニーズが見えてきます。
このように、相手の言葉をそのまま受け取るのではなく、その背景にある気持ちや理由を考えることで、「受け身」な行動が「能動的」になります。
2. 自分にできる選択肢を考える
次に、「自分にできる選択肢」を考える習慣を持つことです。「受け身」と感じる瞬間の多くは、「自分には選択肢がない」と思い込んでいる場合が多いのです。
しかし、どんな状況にも必ず選択肢はあります。
· 時間がない中で、どの仕事を優先するべきか。
· 入居者様のニーズに応じつつ、自分が無理をしすぎないためにはどうするか。
· 同僚と協力するために、どう声をかけるか。
これらの選択肢を自分で考え、選び取ることで、「受け身な状況」が「自分でコントロールしている状況」に変わります。
3. 柔軟に対応しながら、自分の軸を持つ
最後に、「柔軟さ」と「自分の軸」を持つことが大切です。介護の現場では、予定通りにいかないことが多々あります。
急な変更や予想外の出来事に対応する柔軟さを持ちながらも、自分の目指す目標や価値観を見失わないことがポイントです。
柔軟性
・「これは計画外だけど、どうすれば解決できるか?」と前向きに考える。
・一度立ち止まり、状況を整理する。
自分の軸
・「自分は何のためにこの仕事をしているのか?」と問い直す。
・「自分の大切にしたいものは何か」を常に意識する。
例えば、「入居者様が安心して暮らせる環境を作ること」があなたの軸であれば、どんな状況でもその目標を見失わずに対応できます。
能動的な受け身で得られるメリット
「能動的な受け身」を実践すると、いくつかのメリットがあります。
ストレスが減る
自分の意思を持ちながら状況に対応することで、「自分がコントロールできている」という感覚を得られ、ストレスが軽減します。
周囲との関係が良くなる
能動的に受け身でいることで、相手を尊重しつつ自分の意見も伝えられるため、入居者様や同僚との信頼関係が深まります。
自己成長につながる
受け身な状況を「学びの機会」として捉えることで、問題解決能力や柔軟性が高まり、自分自身の成長を感じられます。
おわりに
「受け身」という言葉は、時にネガティブなイメージを持たれることがあります。
しかし、「能動的な受け身」に変えることで、状況を前向きに受け入れ、自分自身の成長や周囲との関係をより良いものにすることができます。
介護の現場で働くあなたは、すでに日々多くの選択を行い、周囲に貢献しています。
その中で、「自分は何を大切にしているのか」を意識しながら、「能動的な受け身な生き方」を取り入れてみてください。それが、仕事や生活の中での新たな充実感につながるはずです。
あなたの日々の努力が、たくさんの人を支えていることを忘れないでください。そして、その中であなた自身も心穏やかに過ごせる日々を作っていけることを願っています。
最後までお読みいただきありがとうございます。