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深刻な病気ではないけど気力のわかない日々を過ごす入居者様

介護士として日々多くの入居者様と接する中で、特に心に残るのは、元気を出したくてもなかなか気力が湧かず、静かに過ごす日々が続いている方々です。

身体に大きな問題はなく、日常生活もなんとかこなしているけれど、心のエネルギーが枯渇してしまったように見える入居者様がいらっしゃいます。

彼らと過ごす時間の中で、「どうしたら少しでも気力を取り戻してもらえるだろうか?」と自分も一緒に悩むことが多くあります。

気力が湧かない日々の背景には


気力がわかない日々を過ごしている入居者様の多くは、以前は社会で活躍されていた方々で、介護施設に入るまでは家族や仕事、地域社会の中で忙しく過ごされていました。

しかし、介護施設に入ることで、それまでの生活や人間関係が大きく変わり、身の回りの環境もすっかり変わってしまったことで、「自分が何をしたらいいのか分からない」という状態に陥ってしまう方も多いのです。

ある方は、これまで家庭を支える役割を担ってきたのに、今ではその役割がなくなり、「自分はもう役に立たない存在なのではないか」と感じてしまっています。

また別の方は、職場や地域での活躍が自信の源であったのに、年齢を重ねることで、その自信が揺らいでしまったと言います。

身体の健康状態が比較的良くても、気持ちがついてこないことは誰にでもあることですが、高齢者の方にとってはその「気力の低下」が日常の大きな部分を占めてしまうのです。

無気力な日々と向き合う入居者様の様子


無気力な日々を送っている入居者様は、決して無理に明るく振る舞うわけでもなく、静かに過ごされています。

朝の挨拶を交わし、食事の場に顔を見せてくださるものの、どこか遠い目をしていて、こちらから何か話しかけても、応えることが億劫そうな様子が伺えます。

時にはベッドや椅子に長時間座り込んで、ひたすら外の景色を眺めていることもあります。その様子は一見穏やかですが、内側に抱えている寂しさや虚しさを私たち介護士にも感じさせます。

中には、昔の写真を静かに眺めながら、「あの頃に戻れたらな」とつぶやかれる方もいます。

話を伺うと、若い頃の思い出や、元気だったころの自分を振り返り、今とのギャップに気持ちが沈んでしまっているのです。

「自分にはもう未来がないのだろうか」と思い詰めてしまうこともあるようで、その言葉にこちらも心が痛みます。

気力を少しでも取り戻すためにできること


介護施設での生活が始まると、どうしてもルーティン化した日々が続き、気力を取り戻すのが難しいと感じる方もいらっしゃいます。

そんな中でも、私たち介護士にできるのは、小さな「変化」を日常に取り入れることです。

日々の中でわずかでも楽しみや新鮮な刺激を感じていただけるよう、少しずつ工夫をしています。

例えば、天気の良い日は外に出て日光浴を楽しんでいただいたり、季節の花を一緒に見に行ったりすることもあります。

また、歌が好きな方には昔懐かしい歌を一緒に歌いながら、昔の思い出話に花を咲かせることも。

料理好きだった方には、調理を手伝っていただきながら、「この香りが懐かしい」と笑顔を見せてくれることもあります。

こうした小さな活動を通して、ほんの一瞬でも心が明るくなる瞬間を感じてもらえるよう努めています。

心のつながりが気力の回復に与える影響


人と人とのつながりは、気力の回復に大きな影響を与えるものです。どんなに高齢になっても、誰かと心を通わせる時間や、共感してもらえる場があることで、少しずつ気持ちが前向きになることがあります。

私たち介護士も、入居者様に寄り添う時間の中で、ただ一方的に「元気を出してもらいたい」と思うのではなく、「あなたの気持ちを分かち合いたい」という気持ちで接することを大切にしています。

中には、少しずつ気持ちが前向きになって、他の入居者様と交流する機会を楽しめるようになった方もいらっしゃいます。

気力の湧かない日々を過ごしている方々も、心のどこかでは誰かとつながりたい、気持ちを共有したいと思っていることが多いのです。

そのため、私たちが声をかけ、一緒に過ごすことで、「自分はここにいていいんだ」と感じてもらえる瞬間が生まれ、それが少しずつ気力につながっていくのではないかと思います。

さいごに


気力のわかない日々を送る入居者様と接する中で、私自身も「どうしたら少しでも気持ちを楽にしてもらえるだろうか?」と日々模索しています。

介護の仕事は、身体のケアだけではなく、心のケアも非常に重要だと感じています。

私たちが寄り添い、少しでも心に寄り添うことで、気力を取り戻すきっかけを提供できればと思います。

入居者様の気力が少しでも回復し、日々に少しずつ明るさが取り戻せるよう、これからも寄り添い続けたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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