雨の季節に、雨のこと
ときどき、雨を眺める。
アスファルトや屋根に
落ちてくる一粒一粒が、
少しずつ世界を
濡らしていく様子は
不思議に感傷的で
遠い場所にいるようなそんな錯覚を覚える。
そういえば、
大切なことの多くは
雨の日だったような気がする。
小学生の頃の遠足も、
運動会も、卒業式も、
それから
入学式も、
初めて
海外留学に行った日も。
あとは
結婚しようと決めた日とか
離婚しようと思った日とか
やっぱり離婚はやめておこうと思った日とか
その全部が
雨だったような気がする。
雨には一種の鎮静作用が
含まれているのだと思う。
エッセイの中でそう書かれていたのは
江國香織さん。
うん、確かに。
感情という曲線の上を
ふらふら歩いているわたしを
理性という直線の上に押し戻してくれる
それが雨なのだと思う。
一度、帰省先の高知県で
お天気雨というものに巡り合ったことがある。
次から次へと
落ちてくる直線が、
光の粒子に包まれて
きらきらと金色に輝きを放っていた。
時間の流れが
スローモーションになったように、
それはゆっくりでそして美しかった。
あんな綺麗な雨は見たことがない。
あの雨に
また出会える日がくるかもしれない。
そう思いながら、
いつも雨をながめているような気がする。
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