ゼクシィの罪と罠:幸せの方程式を売る105億円ビジネスの矛盾
「結婚=幸せ」の象徴ともいえるゼクシィ。しかし、豪華な式場、純白のドレス、祝福に包まれる披露宴──そんな「理想の結婚」の裏には、どれだけの現実が隠されているのでしょうか?結婚情報誌として絶大な影響力を持つゼクシィが提示する「幸せの方程式」とは、本当に普遍的なものなのでしょうか。それとも、結婚というビジネスの罠が仕掛けられているのでしょうか?この記事では、業界人が、ゼクシィの歴史や成功の裏側、そしてその構造的な矛盾について掘り下げていきます。
1.ゼクシィってどんな媒体?
創刊の歴史と業界でのポジション
ゼクシィは1993年創刊、リクルートが手掛ける結婚情報誌。年間約350万部の売上を誇り、ウェブ版の「ゼクシィネット」と合わせて業界の圧倒的シェアを占有しています。CMには広瀬すず、新木優子、吉岡里帆など、後に大物女優となる人が「ゼクシィCMガール」に選ばれ、世間の注目を集めてきました。
さらに、「結婚=ゼクシィ」の認知度は、結婚を考えたカップルの約70%が利用するほど。結婚情報誌として、純利益を年間数十億円規模で生み出していると言われています。ここには「結婚=幸せ」という明確なメッセージと、それを実現するための「式場」「指輪」「新居」など、結婚準備全般の情報が巧みに盛り込まれています。
ゼクシィは年間約350万部を販売しており、1部300円程度として単純計算すると年間105億円の売上が見込まれます。これに、広告収入が加わり、リクルートグループの収益源として重要なポジションを確立しています。ゼクシィの広告費用は1ページあたり数百万円と言われ、多くの結婚関連企業がこのプラットフォームに集まることでさらに利益を拡大しているのです。
また、年間約50万組が結婚すると言われる日本において、ゼクシィ利用者は7割以上。つまり、年間35万組以上のカップルがゼクシィを参考に結婚を計画していることになります。
2.ゼクシィが語る結婚の「ゴール感」
理想を形作るマーケティングの巧妙さ
ゼクシィのCMや広告には共通してこんなイメージが描かれます:
• 純白のドレスをまとい、愛を誓い合う二人。
• 親族や友人の祝福の中、笑顔が輝く披露宴。
• ハネムーンのエキゾチックな風景。
このように、「結婚」という儀式を成功させることで、「幸せ」が手に入るかのようなストーリーを強調しています。その裏には「人生で一番大切な日を完璧にしたい」と思わせるマーケティングが仕掛けられています。
3.ゼクシィの罪と罠
幸せの錯覚を生むメカニズム
結婚情報誌として、ゼクシィが果たしている役割は確かに大きい。しかし、同時に以下のような「罪と罠」も内在しています:
結婚はゴールではなくスタート。しかし、ゼクシィは結婚式というイベントに過剰な価値を与え、人生の「ゴール感」を演出。結婚式後の長い結婚生活や、そこに伴う課題についてはほとんど触れていません。 → たとえば、式場選びや予算管理に追われる中、夫婦間の本質的なコミュニケーションが二の次になりがちです。
ゼクシィが提案する理想の結婚生活は、美しい写真や豪華な式場に象徴されるもの。しかし、実際の結婚生活は「子育て」「家事の負担分担」「義理の両親との関係」など多くの現実的な課題が待っています。それを十分に準備せずに結婚するカップルも少なくありません。
結婚式の必要性を強調することで、「結婚しない人生=幸せになれない」という無意識のメッセージを発信。これが若い世代へのプレッシャーとなり、時には婚活疲れや無理な結婚を生む原因にもなっているのではと考えます。
4.離婚率の視点から見るゼクシィの矛盾
結婚の現実と「幸せの方程式」の乖離
日本では、結婚するカップルの約30%が離婚に至るとされています。仮にゼクシィを利用した年間の結婚組数が35万組だとすると、その30%にあたる約10万組が離婚する計算になります。この数字を見てみると、ゼクシィを経由して結婚したカップルの約10万組が、結婚後数年以内に離婚に至る可能性があるということです 。ゼクシィが描く「幸せの方程式」と成立しない場合が多いことを示しています。
ゼクシィが提供する「結婚=幸せ」というメッセージは、単なる結婚式の演出や婚姻そのものの価値に焦点を当てており、結婚後に直面する多くの現実的な問題(例えば、子育てや経済的な負担、夫婦間のコミュニケーション問題)については触れていません。このような点で、ゼクシィは結婚後のリアルな課題に対する認識を欠き、「結婚式=幸せ」の神話を無意識に強化し続けているといえます。
そのため、ゼクシィが提供する「幸せの方程式」は非常に短期的な視点に基づいており、現実的には結婚後の課題に直面した際にそのイメージが崩れることが多いのです。それでもなお、「結婚=絶対的な幸せ」としてビジネスモデルを展開している点は皮肉です。
5.皮肉たっぷりな結論
ゼクシィが描く幸せとその裏側
ゼクシィは確かに、結婚を夢見る多くのカップルに希望を与える存在です。しかし、その裏側には「結婚式」をゴールに設定し、それ以降の現実的な結婚生活を顧みない構造的な問題があります。
結婚後に待ち受ける困難を見越して準備するよりも、ゼクシィを見て「ドレス選び」に夢中になった結果、のちに夫婦間で「分担すべきはドレス代ではなく家事だった」と気付くカップルも多いのではないでしょうか?
結婚を祝福するゼクシィの裏に、無数の「結婚後の現実」が隠されていることを知ると、幸せの方程式がいかに単純化されていたかが分かります。ゼクシィが描く「純白の世界」の外側には、もっとグレーな現実が広がっていると考えます。
皆さんはどう思いますか?