宗教や信仰についての雑記 #82
◯二重予定説
先日、二重予定説という言葉を何かで読みました。
これは、16世紀の宗教改革者ジャン・カルヴァンによって提唱されたキリスト教の神学思想で、神の救済にあずかる者(天国行き)と滅びに至る者(地獄行き)が予め決められているという考え方です。
この思想は人間の自由意志を否定するものだと言われています。
一方、全能の神が人間の罪をなぜ造ったのか、あるいはなぜこの世界に悪が存在するのかという、いわゆる神義論では、神は人間に自由意志を与えたからだとも言われています。
双方の思想は矛盾しているように思えます。
個人的には二重予定説について、自由意志によらない罪や悪に対して、なぜその個人が責任を問われ滅ぼされ地獄に堕ちなければならないのか、もしその説の通りならば、イエスの受難は何のためだったのかなど、いろいろと疑問が湧いてきて、この説には共感を覚えません。
どうやら信仰を持つということは、矛盾の中を生きるということのようだ、と思うときもあります。
そもそも人間とは、あるいは人生とは矛盾に満ちたものなのだと。
信仰の中には、そんな矛盾だらけの人生を、もがきながら生きてゆこうとしている人間の姿が映し出されているような気がします。
ときどき政治家などがその言動のダブルスタンダードを批判されることがあります。
批判すべきは批判するとしても、人間とはそんなものであって、自分自身もその例外ではない、ということを心に留めておいたほうがいいようです。
私は二重予定説を信じることはできませんが、それを必要としている人々にとっては、決して譲れない大切なものなのでしょう。