宗教や信仰についての雑記 #247
◯高層心理
先日「高層心理」という言葉を聞きました。
これはオーストリアの精神科医であるヴィクトール・フランクルの言葉で、フロイトの精神分析学などで唱えられている「深層心理」に対比して用いられているものだそうです。
「高層心理」は、個人が自己を超えた目的や意味を見出すこと、つまり自己実現や自己超越のプロセスを指します。つまり、人間は、単なる生物的な欲求だけでなく、精神的な成長や自己実現といった、より高次の欲求を持っているという考え方です。
フランクルは、特に逆境や苦難の中でこそ、人間は意味を見出すことができると考え、これが精神的な健康や幸福に寄与すると述べています。彼の理論は、ロゴセラピーとして知られ、個人が自分の人生に意味を見出すことが重要であると強調しています。
しかし上記の「自己実現」とか「自己超越」とかいった言葉はすでに人口に膾炙していて、その意味がインフレを起こしているようにも思えます。
この高層心理が、逆境や苦難の中で意味を見出すことを経て到達する心的状態であるならば、むしろ、それまでの意味や意義が断ち切られた、言わば「断層心理」とも言えるような心理状態にこそ、注目すべきではないかとも思えます。
なぜなら、そのような不安定な心理状態をまず知ることが、自己実現や自己超越のプロセスには必要だと思うからです。
さらに言えば、現代の社会で意味のインフレを起こしている「自己実現」とか「自己超越」とかいった言葉が、逆に断層を引き起こす「ひずみ」を生んでいないか、そのことを改めて考えてみる必要もあるような気がします。