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宗教や信仰についての雑記 #283

◯エキスパート

「エキスパート」という言葉をしばしば耳にします。
世界には様々な分野にそれぞれエキスパートがいて、その人たちのはたらきで世の中がうまく回っているのでしょう。

この「エキスパート」(expert)という言葉の語源は、ラテン語の experiri「試す、テストする」という言葉だそうです。さらにこの experiri は「外へ」を意味する接頭語の ex に「試す、リスクを取る」という意味の per を付けたものに由来するとのことです。
そしてこの expert は、「経験」を意味するexperience と語源を同じくするものでもあるそうです。

これらのことから考えるとエキスパートとは、リスクを取って試行錯誤して得た様々な経験を元に、専門的で優れた仕事をする人、ということになると思います。この expert という言葉に「外へ」を意味する ex が付いているのは、自らが得た経験を仕事という形で外に出す、ということを表しているのでしょう。

しかしその、仕事という形で外に出す以前の「経験」(experience)にも ex が付いているのはなぜでしょう。

経験することとは一般には、その本人の内に蓄積されるものといったように受け取られています。しかし語源から考えて、リスクを取って試行錯誤することと捉えると、それは何かしら世界にも影響を与えてるとも受け取れます。
それは見方を変えれば、経験とはその本人だけでなく、世界も経験しているということなのではないのでしょうか。我々は常に世界の中に存在していて、決してそこから切り離された別々の存在ではありません。ですから自分の経験とは世界の経験でもあり、自分が経験によって学ぶということは、それと同時に世界も学んでいるのだと捉えることもできると思います。
あるいは、そのような感覚を持つことが、自分の経験を世界に還元するエキスパートになるために必要なことなのかもしれません。

エキスパートとは、ただ単に専門的な知識や技能を持つというだけでなく、そのような精神性を持つもののように思えてきました。
しかしそう考えると、そのことは高度に専門的な仕事に限らないのでしょう。
人と共に世界が経験し、世界が学び、それを元に世界が形成されてゆく。
どんな仕事も絶え間ない世界の自己生成の一環なのだと、そんなふうに思います。

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