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宗教や信仰についての雑記 #34

◯母の夢

先日、電車に乗っている夢を見ました。
電車の中には、少し離れた席に数年前に亡くなった母も乗っていました。
母はどこかに寂しそうな眼で、窓外に流れる景色を見ていました。

母は子供の頃戦禍に遭い、両親を亡くしました。
その後しばらくの間は「幽霊でもいいからお父さんとお母さんに会いたい」と、毎晩のように願っていたそうです。
窓外の景色を眺めている母は、その両親のことを考えているかのように思えました。

やがて目的地に着いたのか、母は電車を降りてゆきました。私が降りる駅はまだずっと先です。

私は実のところ、両親が亡くなってもあまり悲しいとは感じませんでした。両親共に80過ぎまで生きたからということもあるのでしょうが、それにしても冷たすぎないか、とも感じました。
それで自分自身の心をよくよく観察してみたのですが、私は学校を卒業してからずっと両親と離れて暮らしていましたが、どうやら今でもその延長線上にいる感覚のようなのです。
両親は今でもどこか遠くに暮らしている、あるいは旅行していて、時々夢に現れることで連絡をくれる、そんな感覚です。

夜空を飾る星々に比べれば、我々の一生はほんの一瞬ですが、それでもやはり順番は大切なようです。
昔、仙厓義梵という禅僧が何かめでたい言葉を書いてくれと人から頼まれて、「祖死父死子死孫死」と書いたそうです。頼んだ人は渋い顔をしたのですが、仙厓は「順番通りに死んでいる、こんなめでたいことはない」と言ったそうです。
私も子供の頃母から「親より先に死ぬのが一番の親不孝だよ」と聞かされました。

母は私より先に電車を降りました。私はまだ電車に乗り続けられています。どうやら一番の親不孝は避けられたようです。

母が降りた駅には、もしかしたら毎晩会いたいと願っていた、母の両親が待っていたのかもしれません。それで母が幸せならば私と降りる駅が違っても、それはそれでいいのかなと、そんな気がしました。

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