小説|福岡天神 流しのバーテンダー 2
再会 あるいは逃避行
十月に入り、コートが欲しくなる日も時々訪れるようになった。
そんな薄ら寒い夜に、あいつが姿を現した。
「お久し振りです、お嬢さん」
会社の人たちとの飲み会の帰りだ。
一緒にいた同僚や部長が、私から一歩遠ざかるのが判った。
当然だろう。
私の目の前に立ちはだかったのは、何処からどう見てもまともではない、大荷物を背負った流しのバーテンダーなのだから。
「探しましたよ」
「私は二度と会いたくなかった」
「そうは問屋が卸しません。あなたには僕の修行に付き合ってもらいます」
「勝手に決めんな」
「緑川くん、君の知り合いかね?」
一番近くにいた部長が、何故か標準語じみた口調で、恐る恐る私に声をかけた。
いつもは博多弁丸出しの気さくな部長なのに。
「知りません」
「涼子、付き合ってる人いたんだ。初耳ぃ!」
「付き合っとらんって」
大荷物の怪しい男と数人の会社員が立ち止まったことで、天神西通りの狭い歩道は急速に渋滞してきてしまった。
「早く歩け!〇〇もん!」
「ああっ、車道にはみ出して車にひかれるぅっ」
「おお!放置自転車が積み木倒しに!」
方々から野次や悲鳴が飛び交い始める。
いつ大惨事に発展してもおかしくない状況になってきた。
私は唇を噛んだ。
バーテンダーは不敵な笑みを見せ、言う。
「どうしますか?こんな鬱陶しい状況をあなたは放っておけるんですか?」
「ク、クソー、苛々する。このマゴマゴした雰囲気」
「オラ、誰か!さっさと歩かんね!」
ガラの悪い罵声まで聞こえてきた。
行き詰った人波はみるみる膨張し、すでに車道を半分埋めてしまっている。
今、暴走自転車が白タクに衝突して吹っ飛んだ。
「さあ、僕と一緒に少し広い道まで行きましょう。じゃないと、この否スマートな現状から抜け出せませんよ」
「おのれ、そこを退け!道を開けろ!」
「嫌です。ずっと探してたんです。やっと見つけたのに、みすみす逃がす訳にはいきません。さあ、どうします?クレバーなあなたにこの、どうしようもないまごついた状況が我慢できますか?」
「こ、姑息なっ」
「緑川くん、なんだか込み入った事情があるようだから、我々はお先に失礼しようかな」
部長は明らかにこの現状に動揺して、視線が定まらないままそう言った。
「そんな、部長、私を見捨てて行くんですか?夜道は危険だから、女子は全員部長が福岡駅まで送ってやるって約束なのに」
「でも涼子の彼氏なんでしょ。行きましょう、部長。このままでは車道が人波で埋まってしまいます。この状況では向こうの歩道でも渋滞がおきかねません。非常に危険です」
「そ、そうだな。ここは原口くんの提案を採用しよう。じゃ、そういう訳で、緑川くん。また明日会おうな」
「しっかりして下さい、部長。明日は土曜日ですよ。うちの会社、今年からやっと週休二日制になったじゃないですか」
「おお、そうだった。じゃあ、月曜日に!」
部長は言い切らないうちに人波に身を躍らせた。
「ぶ、部長ぉーっ!」
同僚たちもそれに続いて、駅の方角に流れていく。
その列はすぐに見えなくなった。
虚しくその方へ差し伸べていた私の手を、いきなりバーテンダーは掴んだ。
「何をする!」
「今はそんなことを言っている場合じゃないでしょう。早くここから抜け出さなければ、命が危ない!さあ、行きますよ」
「あんたのせいやん!」
「いいから!」
バーテンダーは私をひょいと抱え上げると、軽やかに人並みの上空へ舞い上がった。
そして車道に溜まった自動車の天井を伝って、明治通りの方向へと進む。
もちろん福岡駅とは正反対の方向だ。
コノヤロー、と思ったが、その身のこなしに感心したのも確かだった。
あの大荷物の上、私を抱えているのに足元がふらつくこともなく天馬のように駆けていく。
私たちは混乱の西通りを抜け、明治通りを西に歩いていた。
「いやあ、この辺も人通り多いですね。昭和通りに行きましょうか?あっちの方が歩道も広いし」
「どうでもいいけど、いい加減降ろしてくれませんか?」
先刻から私はお姫様抱っこされたままだった。
「他の通行人の邪魔にもなりますから」
「あ、そうですね。すみません」
私は降ろしてもらうと、仕方ないので横に並んで歩いた。
「それで、あれからどうなったんです。お客さんは見つかりましたか」
「それが、なかなか」
「でしょうね」
中央区役所前の横断歩道まで来ると、私は立ち止まった。
「あ、信号渡りますか」
「あんまり馴れ馴れしく話さないでくださいね。私、怒ってるんですから」
男は頭を掻いた。
「すみません。先程は確かにやり過ぎたと思っています。でも、やっとあなたに出会えたので、どうしても付き合ってもらいたかったんです」
「先刻のこともですけど、この前のことだって怒ってるんです」
「え?」
信号が青に変わり、歩き出す。
一歩遅れて男は付いてくる。
「どういうことですか?」
「私、あの日、急いでたんですよ。それなのに、あなたのせいで間に合わなかった」
「何があったんです?」
「ラジオ」
「ラジオ?」
昭和通りへ抜ける細い道に入り、私はキッと男を振り返る。
「6時45分からラジオ番組に〇田〇吾が出てたのに!」
「〇田〇吾ですか…。僕はあまり知らないですけど…」
「きーっ!TVじゃなかなか見れんとよ!ラジオだって偶にしか出らんのに!」
「生放送だったんですか?」
「そうくさ!」
「予約録音してれば良かったのに…」
「うるさい!生は生で聴かんと意味ないったい!」
「まあ、そう気を荒立てずに。そうだ、お詫びに僕のカクテルを、」
「貴様の酒がなんぼのもんか 」
「ひ、酷い。この間は美味しいって言ってくれたのに…」
男は目を潤ませたが、もう泣き落としには乗らない。
「なん泣きようとや、きさん。泣く暇あるなら〇田〇吾の声を返せ!私のこの耳に!ほら今すぐ!」
効き目がないと判ると男はすぐに泣くのをやめた。
やはり泣き真似だったのだ。
私に片手の掌を向けて、まあまあと言う。
「判りました。〇田〇吾のDVDを今度プレゼントしましょう。だからお詫びのカクテルも受け取ってください」
「よし、乗った!」
私が勢いよく返事をすると、男は早速その場で、即席カウンターバーの用意を始めた。
「僕のオリジナル・カクテル『テンジン』です。この街をイメージしてみました」
一口飲んで、私は言った。
「ベースはジンって訳ね?」
「はい、そうです。涼子さん、今日はこれだけじゃないんですよ」
男は右手を上げて、リュックの上にくくりつけてあるCDラジカセのスイッチをオンにした。
流れてきたのはヘレン・メリルの歌声だった。
「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥー・カム・ホーム・トゥーね。大好きな曲の一つよ」
「良かった。どんな曲なら気に入っていただけるか、とても悩んだんです」
「ありがとう。素敵な選曲だわ。だけど、そんな大きなCDラジカセ抱えなくてもいいんじゃない?もっとコンパクトな物にしたら良かったのに」
男の瞳に、かげりが差したような気がした。
「実は…」
「なに?」
「お金がなくて、小さくて高性能な物が買えなかったんです。これが一番安くて、仕方なく…」
「ごめんなさい。悪いことを聞いちゃったわね……」
「いいえ、いいんです。僕の甲斐性なしが悪いんです」
「でも、あなたのあの身のこなし、素晴らしかったわ。この間とは比べ物にならないくらいよ。特訓でもしたの?」
男は嬉しそうにニコリと笑う。
「涼子さんのお陰ですよ。僕はあなたに言われて考えたんです。音楽機材を加えて抱えるのは至難の業でしたから。それで気付きました。氷を保存している持ち運び用冷凍庫を、魔法瓶に替えてはどうかと。それでタイガーの魔法瓶を買いました。CDラジカセより高くて、時間との勝負にもなりますが、とても重宝しています」
「そう。いいところに気が付いたわね。でも知らなかった、冷凍庫まで背負っていたなんて。大変だったでしょう」
「はい、かなり。冷蔵庫の方は早いうちにクーラーボックスを併用することを思いついて、小さめの物に変更していたんですが……。しかし、気付かないうちに筋力アップにつながっていたようです」
「だから私を、あんなに軽々と抱えることが出来たのね」
「ええ」
「言っとくけど、私がこの椅子に座るたびにパイプが軋むのは、体重のせいじゃないわ」
「ふふっ。判ってますよ。それは構造上仕方ないんです。あなたの体重はこの腕が覚えています。40㎏台を超えることはないと見ました」
「そんな話はもうそこまでにしておいて」
「そうですね。細かい事を言うと、またあなたに怒られてしまう」
「判ってるならいいの」
「ところで、お味はいかがですか」
「美味しいわ。だけど、私を少し甘く見てるんじゃないかしら?」
「どういうことですか」
男の顔が少し青ざめる。
「あなたのオリジナル・カクテルって言ったわよね」
「は、はい」
「でもこのカクテルの中身はドライ・ジンとライム・ジュースと見たわ。ライム・ジュースの分量をきっと10mlにしてtenジンって事にしたんでしょうけど、オリジナルだなんて笑わせるじゃない。これは紛れもなくギムレットだわ!」
「うっっっ、し、しかし、レシピは僕のオリジナルなんです!」
「そんな細かな分量の割合なんかどうでもいいの。問題なのは、あなたが私を騙そうとしたってこと」
「だ、騙すだなんて、そんな!これはギムレットと言えるかもしれませんが、僕はテンジンと言う名を付けたかった。これは僕の感じるこの街のイメージなんです!」
「でも、ギムレットだわ」
私はかぶりを振った。
男はがっくりとうなだれる。
「確かに…あなたの言う通りかもしれません…」
「もしこのカクテルにテンジンと名付けたいのなら、あなたの本当のオリジナリティーを付加しなければダメよ」
「僕の、本当の、オリジナリティー……」
「そうよ。それからあなたのお店の名前も、考え直した方がいいわ」
「それも…ダメでしょうか?僕、ハウンド・ドッグ・テイラーが大好きで…あの時なんとなくパッと思いついてしまい、口からポロッと...…」
「そんな事だと思った。どこかで聞いたような名前だったから気にかかっていたの。ダメね、そんな安易な思いつきは。きっと、今のあなたに必要なのは、オリジナリティーなんだと思うわ」
「涼子さん……、ありがとうございます。あなたのお陰で目が覚めました。精進します」
「ごめんなさいね。素人が偉そうなこと言っちゃって」
「いいえ。勉強になります」
男が頭を下げたその時、パチン、パチン、という不穏な音が辺りに響いた。
男ははっとして後ろに顔を向ける。
私も音のする方へ目をやった。
「ヘイ、兄弟。また会ったな」
「あ!お前は!」
暗くてよく見えなかったその人影は、数歩あるいて街灯の下に姿を現した。
冬用制服を着た警察官だ。
右手に持った警棒を、左掌に軽妙に打ち下ろしている。
その音が夜の大名町に静かに響き渡っていた。
「誰なの?もしかして…」
「そのもしかですよ、涼子さん。危ないからそこにいて下さいね。出来ればパイプ椅子をたたんで立っていてください。……何が起こるか判りませんから」
「判ったわ」
私は言われた通りに立ち上がり、椅子をたたんだ。
バーテンダーは警察官の方へ体ごと向き直った。
おそらく、バーテンダーを不審者として追い掛け回した警察官だろう。
「何か用か?」
「何か用かだと?ヘイ、おふざけはやめてくれ。ここは天下の公道だぜ。誰の許可を得てここで営業してるんだい?ボーイ」
「営業なんかしていないさ」
「じゃあ、その台の上にあるカクテル・グラスは何かな?このあいだ教えてやったじゃないか、こんな営業方法は警察を敵に回すだけじゃないぜ。税務署や消防署、それに保健所だって黙っちゃいないだろうな」
「言ってるだろう。営業はしていない。ちょっと荷物の点検をしていただけだ」
「荷物の点検だあ?」
「そうさ。善良な一般市民が歩道の片隅で荷物チェックをするだけで、この街では罪になるのか?」
「笑わせるんじゃねえ!」
警察官は街灯の明かりにギロッとその目を光らせる。
「じゃあ聞くがな、そのお前の後ろに立っている可愛いお嬢さんは何だ?何処からどう見ても客じゃないか!」
「バカなことを。彼女には荷物点検の手助けをしてもらっていただけだ」
「ハッ。バカなのはお前だ。通りすがりの若い女が、お前みたいなイカれた野郎の手助けをする訳ないだろうが。どうせお前が無理やり引き込んだんだろう?さあ、四の五の言わずにそこの交番までご同行願おうか」
警察官は意地悪な笑みで近付いてくる。
しかし、バーテンダーも負けじと言い返した。
「誰が通りすがりの女だって?彼女はな」
「何だ?」
「彼女は……俺の恋人だ!」
「は⁉」
そう叫んだのは私だ。
何言ってんだ、こいつ。
警察官は私の様子を見て、薄ら笑いを浮かべる。
「よく言うぜ。お嬢さん、今、思いっきり驚いちまったぜ。口から出まかせもたいがいにしな!」
「ちょ、ちょっと、間違えただけだ!」
いかん、私の反応でバーテンダーが追い詰められている。
ここは、ひとまず話を合わせないとまずい気がする。
「間違えただと?何と間違えるって言うんだ」
「か、彼女は、僕の婚約者だ!」
はいーっ⁉
なんだその飛躍!
しかし、私は何とかその言葉を飲み込んだ。
ここは話を合わせるしかなさそうだ。
私が反応しないので、警察官は口惜しそうに顔を歪めた。
「ほざくな…誰がお前の言うことなんか信じるか、この…!」
警察官は何を思ったか、ホルスターから拳銃を抜いた。
両手で構えてこちらに向ける。
「うっわ、やばっ!ちゃんとそこにいますか?涼子さん?」
バーテンダーは言って、後退りしながらも、私の方へ手を差し向けた。
私を探すようにそれを動かす。
「お、おる、おる」
「この街で勝手なことをする奴は、俺が許さん!ここは俺の街だ!」
警察官はいきなり発砲する。
弾丸は私たちの上空をかすめて、何処かの電光看板にぶち当たった。
バシュッと音をたて放電し、火花を散らす。
「ひーっ、なんなの、このマッドポリスマンは⁉」
「涼子さん、逃げますよ」
警察官は火花を妖しい目付きで眺めてから、もう一度引き金を引く。
バーテンダーは私の前で大きく手を広げて立ちはだかってくれた。
しかし、銃声は轟かなかった。
警察官はあたふたとリボルバーのシリンダーから空薬莢を取り出す。
「しめた、弾切れだ!行きますよ、涼子さん!」
バーテンダーはまた私をお姫様抱っこして走り出した。
もちろんパイプスツールも背中に背負って。
アクロス福岡の裏側にあたる天神中央公園に来ていた。
芝生の上に座り込み、バーテンダーは息を整える。
夜の公園はストリートミュージシャンやらカップルやらで、比較的賑やかだった。
そのいでたちと、ゼーゼーと言う息づかいでかなり怪しいが、この際それは仕方ないだろう。
私も疲れていたが、ここまで運んでもらったので、バーテンダーの疲れには遠く及ばない。
私はバーテンダーが喋れるようになるまで待ってやった。
「も、もうここ、まで来れば、大丈夫、ですよ。無事ですか?涼子さんは」
「ええ、ありがとう、無事よ。だいぶ遠くまで来ちゃったわね。そこそこ警察署に近いけど。でもまあ、もう少し休んでていいわよ」
「す、みません」
バーテンダーは前かがみになっていた体勢を立て直して、芝生に尻をついて座った。
「いやあ、しかし、驚きました。あの警察官があそこまでやばい奴だったなんて」
「やけにこの街に執着心があるようだったわね。何か理由があるのかも知れないわ」
「どうでしょうね。ただのマッド野郎にしか見えなかったけど…。でも、本当にすみませんでした。涼子さんを巻き込んじゃって」
「いいの」
私はバーテンダーに笑いかける。
バーテンダーは少し不思議そうに私を見た。
「怒らないんですか?」
「だって、あなたは私を守ってくれたでしょう?」
「あ……」
バーテンダーは照れたように頬を指先で掻く。
「夢中だったんで。へへ」
「ねえ、あなたの名前は教えてくれないの?」
「あ、はい。そうですよね。僕は涼子さんのフルネームを図らずも知ってしまった訳だから、お教えしないのはフェアじゃないですよね。僕の名は長谷川隆一郎といいます」
「あ、川つながりだ」
「緑川さんでしたね」
「うん」
私たちは、なんとなく笑いあった。
と、そこに若いカップルが話しかけてきた。
女の方が、恥ずかしそうにしている男の手をひっぱって、バーテンダーに声をかける。
「あのう、すいませーん」
「はい?」
「あのー、もしかしたら、流しのバーテンダーさんじゃないですか?」
「え?あ!はい!そうですけど」
「わーい、やっぱりそうやん。もしかして今、カクテル作ったりとか出来ますか?」
「は、はい、はい!出来ますよ、出来ます出来ます」
勢い良く立ち上がったバーテンダーに、私は座ったままそっと声をかける。
「落ち着いて」
バーテンダーはこくこくと頷いて、姿勢を正した。
「1杯500円になりますが、よろしいでしょうか?」
「はーい、お願いしまーす。最近、友達から聞いててー、そんな人いる訳ないって言って信じてなかったんですけどー、本当にいたんですね!」
「ええ、いたんですよ。そうですか、お友達から噂を。それは嬉しいですね。天神界隈流してますから、いつでも見かけたらお気軽に声をおかけくださいね。さあ、それじゃあ、何をお作りしましょうか?」
女は男の方へ何にするか尋ねた。
しかし結局、
「おまかせでお願いしまーす」
と、いう返事だった。
「はい承知いたしました。えっと、どうします?1杯でよろしいんですか?」
「はい。二人で飲むから1杯でいいでーす」
「はい。少々お待ちください」
バーテンダーは素早く両手を動かして、あれよあれよとボトルやら氷やらを用意してカクテルを作り始める。
すると、そのカップルの後に人が並んだ。
物珍しさに引かれてきたようだった。
「私、モスコー・ミュールでお願いします」
などと、先に注文が入る。
「あ、はい。少しお待ちくださいね」
バーテンダーは対応しながらも作業を進める。
そして客が少しずつ後ろに並び始めた。
その数はどんどん増えていき10mほどの行列になった。
良かったね、バーテンダー。
私はバーテンダーの後姿を眺めながらそう思った。
流しのバーテンダー、長谷川隆一郎は、少しだけ顔をこちらに向けた。
「待っててくださいね。ちゃんと福岡駅までお送りしますから」
私は頷いた。
長谷川は嬉しそうに微笑んだ。
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