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騎馬戦で負けたことは、ない

学生の頃のこと。
当時、国立高専女子学生は圧倒的少数でした。
上級生の女子は6人。
私たちの学年は6人。全校で750人くらいのなか女子学生は12人。
それまで、卒業できる女子学生は半数だと言われていました。入学した時にお節介な上級生からそのことを告げられ、私たちは絶対に、6人そろって卒業しようと誓いました。賭けをする不遜の輩もあったとか。現代(!)の高専は女子学生が増えて半数にも及ぶと聞いています。隔世の感があります。

6人もいればそれなりに華やぎもあり、そのせいかどうかは知らないけれど性的な好奇心の対象になってしまって嫌な経験をすることもあったりしました。
たとえば...…体育。水泳の授業。
一年女子がプールに入る!と校内がざわつき、校庭の外れにあるプールが見える校舎には双眼鏡やらカメラやらを構えた上級生が窓に群がり、授業が中断されちゃうとかそんな事態も起きたりしました。それでも私たちは頑張ってスクール水着で胸を張るんです。女子更衣室のロッカーやトイレを荒らされたこともありました。

体育祭では部活ごとに新入部員がそれぞれにまとまってグランドを一周します。私はラグビー部のマネージャーでした。楕円のボールでパスをしながら走る。それだけで良かったはずなのに..…荒っぽい上級生たちに「ラグビー部!スクラム勝負をしろ!」などと挑まれ、スクラムを組む羽目になりました。人数の都合で私までスクラムの中に入っちゃいました。これはもう大受け....…ま、なんでもやってみるもんですわ。ケガもなく済んだから良かったわ。

体育祭で一番盛り上がるのは学科対抗の騎馬戦で、女子が多い私たち化学工学化はある意味標的でした。だけど負けるのは嫌!私は身体の大きな男子3人を選んで「馬になれ!」と命令して、馬を組んでもらいました。何故か工夫のある馬の組み方を知っていました。バラけやすいけれど、その分戦闘力が高いのです。彼らには、絶対私を落とすな、立てと言ったら必ず立ち上がれと言いつけました。それでもまぁ、戦闘が始まっても中心部へは飛び込まず、外周で様子を見守りました。そこに、私たちの馬を狙ってきた連中がいて、それがまた、野球部のでっかい上級生の馬で~。対峙して「女子の馬狙うなんて卑怯!」とか叫び、思いっきり上級生にスパンクをかまして戦い始めました。ぐっちゃぐちゃに縺れて乱闘、でも、私、根性で相手の鉢巻きを奪い取り「立てーーー!」と叫び、私の馬はゆらりと立ち上がりました。その時、ビリビリーーッと凄い音がして私のトレーナーの右袖が肩から破れました。どよめき。右腕に長い長い裂傷がありました。でも、勝ちは勝ち。女子が多くて人数も少ない化学工学科、騎馬戦だけは強いんです。優勝!1年から3年まで、体育祭の騎馬戦で私は負けたことがありませんでした。4年、5年のときは体重超過で馬様に申し訳なく、馬の組み方の伝授に努めましたよ。をほほ

上級生になると、校内ですれ違う下級生は上級生に道を譲り「チャスッ!」と挨拶をすることになっていました。上級生は「押忍!」と応じます。教室の移動で下級生たちの教室の前を通るとき、廊下に出ている下級生たちはサーーーッと両側に分かれます。私たちは腹の底から力を込めて「押忍!」を連呼しながら、下級生の挨拶に応え足早に通り過ぎます。私たちよりも頭一つ大きな男の子たちの間を歩きながら、いつも緊張していました。

「チャスッ」ってなんなの~?
こんにちはでございます、の略じゃない?
うっそ~!

私たちは華やぎと漢気で5年間を乗り切りました。

押忍!



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