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積極的な不妊治療している人に罵倒された

30年くらい前のこと。
知り合いもない町に移り住み
一人で居るのが好きという私でも
これはまずいと思って
小さなパッチワークのサークルに
入れてもらいました。

そこで知り合った同世代の女性たちのなかに
「不妊」「二人目不妊」の悩みを
抱えている人が幾人かいました。

ちまちま縫物をしながら
お喋りに花が咲くのだけど
あるとき「更年期障害の始まり」の話題が出てきて
皆さんから出てくる様々な更年期アルアル。
困ったり情けなかったり哀しかったり。
そうしているうちに
長く不妊に悩んでいたらしい
Aさんが泣き出してしまいました。
笑い話で終わりたかった座が沈黙してしまいました。

お針の会が終わった後
彼女に誘われてお茶を飲みました。

聞けば、不妊治療のため
他県の専門病院に長く通い
500万円も使った、とのこと。
費用だけではなく身体への負担も大きく
その時は治療をお休みしているのだそうでした。

治療を休んでいる間にも年齢を重ね
年齢を重ねればさらに妊娠の可能性が下がっていく。
そうしている間に
理由もわからないイライラや
ホットフラッシュに悩まされ
もう更年期に差し掛かっているではないか!

その人は、私に具体的に
どういう不妊治療をしているのか聞きたがり
かいつまんで話すと
同じ病院へ行こうとしつこく迫りました。


私自身の持病のこともあるし
不妊と一口にいっても
原因やらアプローチはそれぞれのこと、
それぞれの夫婦が選ぶことだと私は思っています。

当たり障りのないように気遣いながら
そんな話をしたら
彼女は激高して
あなたは本当はこどもなんか欲しくないんだと
私をなじり始めました。

なんだか気の毒で言葉になりませんでした。

その人は続けます。
なんの不自由もなく結婚して子宝に恵まれる人が
たくさんいるのに
なんで私だけ、こんなに努力しているのに
こんなに欲しいのに授からないんだと嘆くのです。

新しい家が立ち並ぶ団地のなかでも
美しい家が並ぶ「特区」に彼女の家はあり
容姿にも知性にも恵まれて
優しいご主人がいて
望むものはなんでも手に入れたのに
こどもだけが授からないと叫ぶのです。

私がこんなに苦しんでいるのに
あなたはふわふわとしていて
不妊で治療を受けているなんて
言わせたくないと叫ぶのです。

本当に気の毒でした。
ただただ、気の毒でした。

私は、悲しみの悲しみ方は
ひとそれぞれだと思っています。
その悲しみを言語化できる人もいれば
できない人もいます。
自分の感情を人にぶつける人もいれば
そうしない人も
そうできない人もいます。

私が特別、悪いことをしたとも思えないのに
これほどの罵倒を受けねばならないとは
理不尽極まるのだけど
怒りは湧いてきませんでした。
一緒に泣くこともできませんでした。

そんなことがあって
しばらくして私は引っ越しをしたり
懐妊したりしてサークルを離れました。

そのサークルで知り合った親友が
ちょくちょく訪ねてくれました。

親友は彼女と同じ団地に住んでいて
久しぶりに彼女に会ったといいました。
サークルで会えなくなっていたから
気になっていたそうです。

少しふっくらして幸せそうで別人のようだったと。
驚いたことに赤ちゃんを連れていて...…
お祝いを述べると嬉しそうに話してくれたそうです。
治療を休んでいるうちに何故か懐妊して
男の子が生まれたと。
それは私と同じ時期のお産でした。

ふたりで彼女の幸せを喜びました。
そして、二人目不妊で悩んでいたあの方も
やはり同じ時期にこどもを授かったとか。
サークルのメンバーが大分変わったとのこと。
主催のBさんは
ここは子授けサークルじゃないのよ~と
笑っていたそう。
パッチワークは、不妊に効くのかしら?
あ、いや、そんなことはない、よね。







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