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不眠症と、眠る龍

20年ほど前、頸椎ヘルニアのため左手が麻痺してしまい
手仕事が思うようにできなくなった時期がありました。

この頃、仲良しだった近所の友だちがインターネットに乗り出しました。
彼女は間もなく、バルビレッジというゲームにハマってしまいました。聞いてみると、見ず知らずのプレーヤーとチャットで気楽に会話し、個人情報までもを気楽に話している様子に仰天して、私もそのゲームに登録して彼女の安全を確かめようと思いました。

ところが、そのゲームに大ハマりしたのは私の方でした。広大なマップをてくてく歩きまわり、素敵なアイテムを拾い集めてお庭を飾る。お家を担いで歩き、空き地にお家を置けば、それが私のスペース。引越しは自由で、他のプレイヤーのお家がなければどこに家を置いても良いのでした。

そのへんに落ちているバラを集めて ハートのオブジェを作るのが得意でした


そこで合流した友だちやホームページで知り合った友だちが加入し、気持ちの良い人たちと巡り合い、お家を寄せ合って小さな村を形成していきました。夜に集まるメンバーもあれば、日中に集まるメンバーもいました。お喋りが中心の人が多かったと思います。

そして、その広大なマップのどこかに一匹だけスリーピードラゴンが居るのだそう。そのドラゴンに会ってみたい。

バルビレッジのペンギン村で、不眠症の私は、静まりかえった夜、あてどもなく伝説の竜を捜してぷらぷら散歩を重ねるのでした。

大きなドラゴンというのを見てみたいな、そんな軽い気持ちでした。

ある時、仲良しが手招きします。
その友だちは、私が不眠症だときいて
「眠る竜」を見せてやりたいと思ったのだそうです。
あとから知ったのですが
その友だちは、ドラゴンハンターだったのでした。
その友だちは、私にドラゴンを手渡して
あとは好きなようにしていいからといって
去ってゆきました。

それはそれは大きな竜でありまして
家の中に持ち込むと
家からあふれそうなほどでありました。
ドラゴンは、ぐうぐう眠り続け
ときどき耳をパタパタ動かしたり、
眠そうな目をあけたりします。

このドラゴンは、ささやかな条件をクリアすれば
誰にでも、持ち運びできます。
ですので、発見されると
あっという間に持ち去られてしまいます。
そうやって、手から手へ渡ってゆくものなのです。

このドラゴンは、私のそばに二晩いました。
誰かに持ち去られたときは、悲しかったのですが
そのあと、心が軽くなって
このドラゴンがどれほどに重いものだったか
思い知ったのでありました。

ドラゴンは眠り続けるのに
私は眠れなかったのでありました。


壁を組み合わせて LOVE 


その後、私はドラゴンハンターになり
かすめ取ったドラゴンを二か月ほど囲っていました。
ドラゴンを守ろうとすると
本当に寝ていられなくなって大変でした。

そのドラゴンは、持ち上げたままサインアウトして
広大なマップの中に飛ばしました。

誰かが野良のスリーピードラゴンに遭遇して
さぞかし驚いたことだろうと思うと愉快でした。


バルビレッジ
もう何年も前に終了してしまったゲームですが
実に楽しく遊びました。いつも懐かしんでいます。





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