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生まれ変わり

※この記事は創作大賞2023に投稿した作品をリライトしています
(現在、投稿専念中につき、お礼に伺えない場合がございます。お許しください)
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毎日襲い掛かる出来事に疲弊し、私は癒しを求めて平日の動物園を訪れた。

入口に着くと『無料開放day』の看板が見えた。
どうやら年一回の開園記念日だったようで、降りかかる災難の帳尻合わせをするための一筋の光のように感じた。
ここにいる人達も皆、人には言えない悩みを抱えていたりするんだろうか。


「辛気臭くするな」
亡くなった父が、祖母からよく言われていたという言葉を思い出す。

祖父はある日突然、若くして亡くなった。
祖父がいたら少し余裕のある生活も出来たはずなのに、幼い子供を抱える祖母は悲しむ余裕もなかっただろう。
幼い子供たちを長男である父とともに育て上げた祖母。

そんな強さに少しでも近づきたい。
どうにもならない苦しみを、動物という癒しでごまかすことにした。


平日ということもあり、園内は意外と空いていた。

幼い頃、何故かオランウータンに惹かれて、迷子になってしまった思い出のある動物園。
もう自分の好きに歩き回れる。
過去の記憶を薄っすら思い出しながら、出来るだけ頭を空っぽにした。

鳥のゾーンに進むと、大きな檻に色んな種類の鳥が放たれている。
私は他の人を避けるように、空いているスペースから鳥を眺めていた。

幼い頃に沢山の鳥と犬一匹を飼っていた私は、鳥の目から見て何か感じるものがあるらしく、この日も一羽の大きなインコがやってきた。

どうやら自分にはこんなに綺麗な羽があって、アクロバットの様な飛び方も出来ると見せたいようだ。
ボディビルダーのように羽を色んな角度から広げて見せつけ、幼い子供のように延々とアクロバットを見せてくる。

今になって振り返ると、生まれてから今まで、どこに行っても私の人生で主役になろうとする存在が必ず現れていた。
きっと私の心の弱さがそのようなものたちを集めてしまったのだろう。
それに私は負け続け、ステージを降り続けた。
「ここは私のステージだ」
今からでも主役として生きてみたいと思う。

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