見出し画像

近代教育制度の目的とその課題:起業家精神の欠如とその背景

はじめに

現代の義務教育の目的は何でしょうか?多くの人は、基礎的な知識やスキルを教えることだと考えるかもしれません。しかし、その裏には「毎朝同じ時間に同じ場所に集合し、それを習慣化させる」という目標も存在しています。特に、明治時代に始まった日本の教育制度の根幹には、近代化・工業化に適した労働者を育て、欧米に対抗する強い社会を作るという国家的な目的があったのです。

集団行動の習慣化と労働者育成

義務教育の一環として、中学の部活動が果たす役割も注目に値します。部活動は「目的を達成するために上級生と下級生が組織的に活動する」場として設けられており、これもまた、集団行動や規律を身に付けさせるための重要な要素です。これらの教育活動を通じて、近代化に対応できる労働者を育成するというのが、当初の教育制度の設計思想でした。

この背景には、産業革命による工業化が急速に進んだ時代、集団で効率的に働くことができる人材が必要とされた歴史的な背景があります。学校教育は、時間通りに行動し、決められたルールに従うことを学ぶ場でもありました。その結果、規律や効率を重んじる社会システムが構築され、教育の目的は、労働者としての基礎スキルを習得させることに向かっていたのです。

学生が「安定」を求める理由

この教育制度の影響は、現代社会にも色濃く残っています。多くの学生が、会社員や公務員という安定した職業を目指す背景には、長年の義務教育や社会の価値観が影響していると考えられます。大学での就職活動においても、大多数の学生がエントリーシートを出し、内定を早く得ることで安心感を得ようとする姿勢が一般的です。大企業でのキャリアや巨大プロジェクトにやりがいを見出す人もいますが、ほとんどの場合、安定を重視した職業選択が行われています。

一方で、こうした環境下で起業を選択する学生は少数派です。私自身、大学生のときに起業を経験しましたが、経済学部に所属していたにもかかわらず、周囲に同じような挑戦をする仲間はほとんどいませんでした。これは、教育システムや社会が「挑戦」よりも「安定」を重視する風潮を強化している証拠かもしれません。

起業家教育の必要性と課題

では、どうすればこの状況を改善できるのでしょうか?一つの解決策として、起業家精神を育む教育を導入することが挙げられます。起業家教育は、リスクを取って挑戦することの重要性を教え、生徒に独立心や創造力を養わせることが目的です。

しかし、ここで一つの問題が浮かび上がります。それは、現在の教育システムを担っている教師の多くが、ビジネスの世界とは無縁であり、超安定志向の公務員であるという点です。教師自身がリスクを伴う起業経験を持たないため、実際に起業家教育を実践するのは難しいという現実があります。起業家精神を教えるには、実際にビジネスの現場で活躍している人材や、リアルな経験を持つ講師が必要です。

未来の教育への提言

これからの教育に求められるのは、単なる知識の詰め込みや規律を教えることだけではなく、創造力や独立心を育むことです。学校という環境が、社会の要求に応じて働く人材を育成する場から、個々の才能を引き出し、挑戦を促す場へと進化する必要があります。そのためには、起業家教育や、ビジネス経験を持つ人材が教育現場に参画するなど、教育の多様化が求められています。

最終的には、学生たちが自らの将来を主体的に選び、安定だけでなく挑戦にも価値を見出せる社会を作ることが目標です。起業家精神を持つ若者が増えることで、社会全体に新しい価値観や革新がもたらされるでしょう。

結論

義務教育や現代の教育制度が、社会の近代化や工業化を背景に設計されたものであることは事実です。しかし、21世紀の今、私たちは新しい時代の教育の在り方を見直す時期に来ています。安定を求めるだけでなく、挑戦することの重要性を教える教育こそが、これからの社会に求められるのではないでしょうか。

サポートお願いします!