メニュー写真と実物が違う!という海外あるあるの理由 —ドイツのアイスカフェ編—
ヨーロッパ、少なくともドイツではレストランのメニューに写真が載っていることはまずない。2000年代までは確実にそうだった。しかしアイス屋だけは別で、どこも同じようなメニュー表が使われている。そしてそれには理由がある。
写真と商品の秘密の関係とは?
アイス屋のメニュー表はちょっと特徴的だ。グラスに盛り付けられたパフェのような豪華絢爛な商品の写真が並んでいることが一般的だ。
以下にドイツのアイス屋メニューあるあるを羅列してみる:
- 傘やセロハン?飾りのピックが刺さっている
おうぎ形/ハート形/シガール風ワッフルが刺さっている
グラスの淵にメロン/スイカ/パイナップル/オレンジ(グランデとかだと一周)刺さっている
チョコレートバーがパッケージのまま刺さっている
ドリンクにやたらストローが刺さっている
ホイップ+ソースは必須(一部メニューを除く)
ドイツでは欠かせないアイスメニュー:ヨーグルト系、デンマーク/スウェーデン風、スパゲティアイス
キッズメニューの定番:ピノキオ、みつばちマーヤ
背景がなんか青い/暗い
写真の配置が斜め
ビニールコーティング、折りたたみ3面の縦長が多い(気がする)
たまにお姉さんが背景になってるパターンがある(結構レア)
どういうことなのか?
実はアイス屋については既製品のメニュー表が売られている。
印刷屋は宣材写真やそれらを使ったメニュー表を作って販売している。そして店を始めるとき、印刷会社に発注し、それを店頭に置く。仕入れによってラインナップにパターンがあり、どのメニュー表にするかは店に合わせて選ぶ。すると何が起こるかと言うと品物をメニュー表に合わせて作ることになる。その結果として実際に出てくるものと写真はあくまで別物のである。冷凍食品なども同様だ。
私が思うに日本に旅行に来た外国人が「写真/や食品サンプル実際の商品と見た目同じだ!」となるのはそれが理由なのではないか。つまり現地の店がインチキだからとは限らなくて、運営方法が根本的に違うのだ。日本では店が出す実際の商品をもとに写真付きメニューや食品サンプルを作成する一方で、ドイツあたりでは「写真はあくまでも宣材」と言う常識がある。レストランのメニューは文字のみが一般的だが、これは日本のそれなりのレストランも同様だ。また、チェーン店などにおいては日本は競争率が高いから工夫してるのも大きそうだなと感じる。メニューの入れ替わりも激しい。
そもそも客が「おいしそう!」と思う必要があるのはどのタイミングまでなのか。注文が終わるまでなのか、はたまた商品を見て食べ始めるまでなのか。少し考えさせられなくもない。
そもそも日本にアイス屋さんがない!
ドイツは「アイスカフェ」という、アイスを出すカフェというものがある。もう少し説明するとドイツのような国ではどこでもアイスが食べられる文化ではない。アイスを食べたければアイスを出しているアイスカフェに入らなければならない。”Eis”と書かれた小さな垂れ幕が掛かっている。日本で言うところの「氷」だろうか。
ちなみに私の地元にはイタリア人たちがやっているかなり大きなアイス屋があって、あそこは見た目もメニュー表と同じようなものが出てくる率が高かった。ジェラテリアではなかったが、現地人受けを考えるとクラシカルなメニューを出していたことは大きな成功要因だろう。ただ難点は広すぎて店員が全然席を見ていないことと、注文の取り方も結構適当ということくらいだろうか。
もっと小さなお店で老舗のジェラート屋もあったがテイクアウトメインだった。ものすごい人気でよく並んでいるのを見かけた。(そもそも地元で並ぶほどの人気店は珍しい。)
日本ではアイス屋やジェラート屋もあるとはいえ、イートインコーナーがあるくらいで、「カフェ」という体裁をとっている店は私は見たことがない。カフェ文化が根本的に違うんだなと感じる。
雑学
ドイツ語ではEiscafe(アイスカフェ)と書くと上記で述べたようなアイスを提供するカフェの意味になるが、Eiskaffee(アイスカフェ)と書くと日本でいうところのアイスコーヒーの意味になる。ちなみにドイツの喫茶店にアイスコーヒーが登場したのは(多分)2000年前後で、それまでは冷たいコーヒーを飲む習慣はなかった。
というわけで
「外国人観光客が驚く日本のメニューの再現度の高さ」について、そのカラクリを書いてみた。メニュー表に写真があることがむしろ稀な社会の存在を知らない人もいるかもしれない。円安の影響がもちろん大きいとは思うが、食事処の写真の有無も観光客のとっつきやすさに繋がっているのかもしれないと昔から感じている。
私も幼い頃はアイスカフェのメニューを見て目をキラキラさせては実物を見てがっかりしていた。これを読んでいる方がもしドイツに行く機会があればぜひあのテンション爆上がり間違いなしのパフェたちの写真とその姿と遠くかけ離れた実物のギャップを楽しんでみてはいかがだろうか。