恐れられなが生きるということ
推しは仮面ライダードライブが大好きである。私も同シリーズが大好きで、悪役のおもちゃを持って2ショットお話会に参戦した。私は銃のおもちゃの電源を入れて彼に迫った。「怖い怖い怖い!」彼は笑った。ちょっと嬉しかった。
怖がられて何が嬉しいんだよと思うかもしれないが、海外で外国人として育つと「怖がられること」は一つの需要なサバイバル方法になる。恐れられることは私の誇りである。
私は日本からやってきたばかりの日本人をたくさん見てきたが、全員揃いも揃って警戒心がないというか、服装がやけにおしゃれで着飾っていたり、雰囲気に棘がなかったり、常に緩んだ顔をしていたり、現地暮らしが長い人と全く様子が違う。
日本に来たばかりの私はよく怖がられた。現地にやってきた日本人からも同様だった。日本人学校で初めて日本人の中に混じった時は、動物に例えると「蛇みたい」と言われた。年上に見られることが多く、帰国後の大学時代は30代に見られた。会社に入ると「雰囲気が怖くてどう話しかけていいかわからない」と第一印象を少し年上の男性の上司に明かされた。逆に社内で「言い方が怖い」恐れられていた方とはノリが合い、私は話しやすかった。私たちの上長には「よく〇〇さんとうまくやってるよね。最初は大丈夫かなと思ったけど。本当にびっくり」と驚かれた。
最近やっと顔に年齢が追いついてきたのか、日本に適応したのか、怖いと言われることはなくなった。推しのライブで知り合った方に年齢を明かすと「全然見えないよ!若いね」と言われた。長年のニート生活で顔つきが幼くなっただけかもしれないが。
話を戻そう。
私たちは外国に暮らす限り、外国人への無差別攻撃の対象である。荷物を引っ張られて電車の中から引き摺り出されたり、建物の上階あらペンキをかけられたり、すれ違いざまに飲み物を引っ掛けられたり、悪意を持ってニヤニヤしながら「ニーハオ」と話しかけられたり、街中で様々な攻撃を受けるリスクを、特に西洋では、背負っている。私はこれらの事例を読み聞きしてはきたが、自分自身が被害にあったことは実は一度もない。学校でいじめられこそしたものの、街中で外国人相手の無差別な襲撃にあったことはない。
私は街に出ても絶対にオドオドしない。事件があっても怯えない。私は現地語が話せて、いざという時に警察を呼ぶことができ、自分の正当性を主張することができるからだ。自分を守る最低限の力を持っているという確固たる自信を持って街を歩く。
小学生の頃、バスが混んできたので私の隣の席に立てかけていたチェロをどかしたところ近くに立っていた男性に「俺にここに座れっていうのか」と言われたことがある。「座りたければ場所を空けたのでどうぞ。嫌なら拒否しても構いませんが。」と返した。
高校生の頃"Konnichiwa!!"とニヤニヤしながら大声で話しかけられた。私は流暢な現地語で「ごきげんよう!何かお手伝いできることはありますか?」と聞いた。彼はたじろぎ小声になり「コ、コンニチワ…これで合ってた?」と聞いてきた。「まあ悪くはないね」と言っておいた。
目には目を。歯には歯を。悪意には悪意を。
父も駐車場で現地人にボソボソと文句を言われたところ、顔を覗き込み「どうかされましたか?」と聞いたところその人は顔を背け無言で立ち去ったという。
このような環境で暮らしていると攻撃的な雰囲気を纏わずに外出するのは難しいのである。以前服装の話についても投稿したが、私は有刺鉄線がプリントされた黒とグレーのニットに黒に赤いステッチの入った編み上げパンツ、厚底スニーカーに黒いロングコートと、手にはヴィヴィアン・ウェストウッドのアーマーリングを纏い街を歩いてた。ちなみに黒いロングコートは学校では「なんだかとってもミステリアスなスパイみたいだね!かっこいいよ」とアメリカ人の英語の先生に言われた。「スパイみたい」という感想はとってもアメリカ人っぽくてなかなか良かった。厚底スニーカーは別のアメリカ人の先生に「素敵!こういうのは日本で買えるの?」と声をかけてもらえた。ちなみに靴は現地メーカーのものであった。
服装も、態度も、目つきも、全て武装して生きていた。その姿はまさに毒を持った生き物のようだったに違いない。
悪意が渦巻く社会では亀の甲羅だけでは自分を守れない。盾だけでは相手に隅っこへ追いやられてしまうだけだ。剣を、毒を、攻撃力を持ち、それを誇示しなければいけない。「私を攻撃したらどうなるかわかっているな」という顔をしながら歩くのだ。もちろん態度だけでは不十分だ。現地語をアクセント無く流暢に話し、いつでも法的手段に訴えることができることは重要だ。言葉で攻撃された時、自分は権力を味方につけられるということを相手に見せつけるのだ。
最後に、蛇は人間にとっては重要な文化的シンボルである。
様々な宗教において題材として取り上げられ、邪悪なものとされる一方で強い力の持ち主として祀られることもある。日本では八岐大蛇(ヤマタノオロチ)が日本神話の悪役として登場するが、白蛇は神の使いとして神社で祀られている。ツタンカーメンのマスクにはコブラが施されており、権力や神性の象徴となっている。米国では軍国籍旗において"Don't tread on me."の標語とともに独立自衛のシンボルとなっている。ファッション界ではブルガリのセルペンティコレクションやティファニーのエルサ・ペレッティコレクションのスネークシリーズのようにジュエリーにもなっている。
強い力は人を脅かすように見える一方で、人を守る力でもあるのである。
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