TOKYO NODE LAB FREE GREEN 体験後記
虎ノ門ヒルズにあるTOKYO NODEで開催中のTOKYO NODE LAB OPEN LAB 2024 ANNUAL EXHIBITIONに行ってきた。そこではFREE GREENというスタジオを体験できるとXで見かけて、おもしろそうだったので体験してきた。
聞いたところ、もう今日で終了ということなので新鮮な今のうちに感じたこと、考えたことをnoteに残してみる。
概要
こちらのワークショップは全方位グリーンバックに囲まれたスタジオで、360度で3D撮影を行い、それに背景を合成してもらえるというもの。動画は30秒程度で、テストを含め3回行う。背景・カメラワークを選択したら、撮りたいところの少し前から音楽を自分のスマホから再生し、それに合わせて踊るだけ。本番は2回なので、好きな方をQRコードのリンクからダウンロードすることができる。
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感想
PerfumeやWarpsUpがこういうスタジオで撮影していたことは知っていたので、実際に自分で目にして、体験してみたかった。Perfume DISCO-GRAPHYもTOKYO NODEで開催中だったこともあり、Perfumeを踊りにくるお客さんが多いとか。実は私もその1人。XでFREE GREENと一緒にPerfumeをタグ付けしている方がいなかったら見逃すところだった。危ない危ない。
順番は整理券式。所要時間は1人15分程度で、行くとスタッフの方が次の時間を案内してくれる。順番になると奥の通路で背景・カメラワークが選べて、撮影時の注意事項を動画で見せてくれる。背景とカメラワークはセットで、背景を選ぶと自動的にカメラワークのプリセットが決まる仕組み。スタッフさんによると場合によってはカメラ位置とタイミングを教えてもらうこともできるそう。複数人で背中合わせとかで撮ると有効活用できそうだ。
私は松本梨香さんの「コツコツ-PONPON」は宇宙船で、Perfumeの「edge」はトンネルで撮ってもらった。
グリーンバックの部屋に入ると数々のカメラレンズが幕から飛び出している。レンズを差し込むために幕に切れ目が入っている。床にはテープで場ミリが貼られている。それを見て、「ハイテクってそれを創り上げる人々の手間がかかっていて、それ自体はかなりアナログだったりするんだな」と改めて感じた。
私が過去に仕事でVR案件を請け負った際に「鏡の表現を修正したい」という依頼があったとき、巨大な鏡があるトイレに、ノートを持って鏡の中の映り方のスケッチを取りに行ったことを思い出した。
VRの実験室も場ミリを自分たちでカメラ台からの位置をメジャーで床を這いずり回りながら計測してテープを貼っていた。
//people easily say "but it's digitally manipulated"
//without knowing how much work it takes
というわけで、edgeはサビへの入りが音では拾いにくいので、入りは長めに尺を取って、360度撮影を開始するタイミングを私がカウントで指示するというスタイルで撮影。みなさん親切で「ここでこういう指示が欲しい」と教えてくれるので技術的なことを知らなくても安心。
そしてスタジオを出ると、撮影した2本の動画をスクリーンに投影してくれて、好きな方を選べる。選んだらQRコードの書いたカードを渡される。そこから動画がダウンロードできるのだが音声は著作権の関係上無し。自分で音を合成するスタイル。
というわけで出来上がったものがこちら(gifなので音無し):
edgeは振り返る振り付けがあるので3D映えする。
にしてもプロはすごい。自分の時間で練習したことを、スタジオに入って同じようにやって、本番時も同じようにできるって凄いことだと改めて感じた。どうしても「本番行きまーす!」と言われると緊張するし、撮影に行った2回とも2本撮ったうちのどちらかは必ず間違えていた。踊れる、踊れないは関係なく、一度体験してみると訓練と経験を積んだ演者の凄さがわかる。仕事で舞台に立つ人への理解が深まる。
小学生の時クラシックバレエを習っていた時、一度だけ(お金を取るタイプの)本番に出たことがあるが、あまり気負わずやっていたのでその大切さはあまり理解できていなかったかもしれない。いや、逆に訓練を積んだ状態で行ったのでとても集中していたのかもしれない。よく覚えていない。
真面目な体験後記
(ここからはXにも書いたことの長い版)
実は1回目の撮影に行った時、動画渡していただくときは結構時間があって、スタッフの方とお話しさせていただいた。「実は昔デジタルアート専攻に進もうと思ってたけど結局文学部に入って今は会社員している」とか、「Perfumeのお客さん多いでしょう。こういう技術に関心ある方が多いタイミング」などと話をしていると、「常設するとしたらいくらくらい出せそうですか?」という質問がスタッフさんから飛び出た。「現実的には1500円くらいかなあ…」と結構軽く答えてしまったなあと思い、改めて思考を巡らせて見た。
やはり「娯楽」として考えると価格設定は低くなってくる気がしている。今回のように30秒なら¥1500くらい、一曲フルで¥3000あたりとか。ただもっと細かいカメラワークや背景のオプション、プロ向けの貸切日など運用方法でアイディアを出していくともっと利益が出せるかもしれない。例えばインディーズアイドルがこのスタジオで撮るとしたら、商業利用だし、2桁万で貸切は需要がありそうな気がする。
一方で体験コースとして今回同様の使用で最大3人で30秒なら料金制度を設けて学生は1人¥1500前後、大人は1人あるいは1グループあたり¥3000も視野に入ってくるかもしれない。
また、ダンスパフォーマンスにこだわらず、お祝い動画、応援動画、それこそ推しへのメッセージ動画とか、動くプリクラ(メッセージがかわいいフォントで合成できるとか)、動くウェディングフォト、動く家族写真(子供の成長記録等含む)など、使い方に幅が出てくるとより多くの方に訴求できるのではと考えたりもする。子供のスキャンデータをもらえたら嬉しいという方もいそうだ。運用イメージを膨らませると幅広いプロモーションが打てるかなと考えた次第だ。
実際に隣の展示室にはこのスタジオを使って3D動画を撮影し、名刺にQRコードで動画をARで出現させるという例もあった。これもとても良い運用例だと感じた。
前述のプロ向けの貸切だが、そうなってくると5人は同時撮影できた方が実用的かもしれないが、2回目の時のスタッフさんに聞いたところによると川崎に大きなスタジオがあるとのことなので、この技術がもっと知られて行くと、「3Dで撮影したい!」というアーティストさんもたくさん出てくるかもしれない。「全方位から撮影する前提のコレオグラフィー」という形でこれまでのダンスパフォーマンスの常識を変えそうだ。
せっかく創り上げたテクノロジーであるわけだから、多くの人々に使ってもらい「特別な体験」から「あたりまえ」にしていくことを目指してもいいのではないかと思った。少なくともエンタメ界ではこの技術があたりまえになればMVとステージでは、同じ曲でも違うコレオグラフィーやパフォーマンスを実現できるでしょう。
まあ、素人が色々書いたわけだが、「技術がすごい」のと同じくらい「技術者がすごい」のは私も身を以て知っているので、関わった方々が誇りに思える価格帯が1番のような気がしてた。
ちなみに2回目の時は「まさにこういうスタジオで撮影したMVを見たことがあって」とスタッフさんにご紹介したのがWARPs UPの「Hali Gali」。ボリュメトリックデータも使っていて、この技術で実運用上どのような映像作品が作れるのか、ご興味のある方はぜひ見ていってください。
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