HSP(繊細さん)の日常②【超ショートショートまとめ】
「満員電車が暑すぎて
会社に着く頃には整ってる可能性ある」
とXに入力していると、
電車が揺れて隣に立っていた人が寄りかかってきた。
スマホの画面を見られたかもしれない。
サムいやつだと思われただろうか。
熱いのは自分のせいだと思わせてしまった可能性もある。
だが今ポストを消すのも…
〈薄井一彦のプロフィール〉
「繊細さん同士で気が合うでしょ」
上司は意気揚々と、
HSPの新入社員の教育担当を薄井一彦に任せた。
しかし、相手の機嫌に敏感なHSP同士では、
互いの思考を合わせ鏡のように無限に読み合い、
寧ろ疲弊する場合もある。
「よろしくお願いします」「お願いします」
2人は目を合わせなかった。
「ほら、食べな食べな」
上司が食べ残したご飯を差し出してくる。
「やったー」
ぎこちなくも笑顔で茶碗を受け取って見ると、
ご飯に肉じゃがの汁が沁みている。
絶対に上司の唾液も。
初めに断っておけば、毎回食べる羽目にならなかったのに。
息を止めて一気にご飯を掻きこむ。
「うん、いい食べっぷりだ!」
エレベーターの中でサングラスをかけた。
この時間だと1階のエントランスには日の光が差し込んでいるだろう。
到着する前に眩しさへの対策しておかなくては。
しかし1階に着きドアが開くと俺はサングラスを外した。
小さな女の子が待っていたのだ。
日の光が頭の中で破裂する。
駅の階段で子供にぶつかってしまった。
「あ、ごめ…」 謝ろうとした瞬間、
鼻を抑える子供の手の隙間から血が滲むのが見えた。
母親と思われる女性がこちらをキッと睨んだが、子供を連れてホームに消えた。
(よかった。訴えたりされなかった)
まず俺の胸中に起こったのは、罪悪感ではなく安堵だった。
この事実が後に罪悪感をさらに大きくした。