承認欲求モンスターの日常③【超ショートショートまとめ】
遠くの空に、円盤状の光る物体が浮かんでいた。
(UFOだ!) 即座にスマホを構える。
画角にUFOが入り、あとは撮影するだけ。
しかし、私は思い止まって内カメにした。
顔と一緒に撮ってSNSに上げれば、有名人になれるかもしれない。
結果、映っていたのは私の冴えないキメ顔だけだった。
〈堀田絵里のプロフィール〉
会話をしているとき、自分が話題の中心にならないと気が済まない。
例えば皆が「男の部屋にあったら幻滅する小物」について話していると、「部屋といえば、この前壁紙変えたんだよね」と無理やり話題を変えてしまうのだ。
毎回後悔するが、「ウザい」と噂されていると思うと、それはそれで……。
「見せるために開けてるわけじゃないし」
友達が通りすがりに谷間を見てきた男に舌打ちを鳴らして、シャツのボタンを留めた。
「巨乳でいいことなんて1つもないよ。汗疹は出るし肩は凝るしジロジロ見られるし……」
止まらない友達の愚痴に
(でも『巨乳』じゃん)と貧乳の私は思っていた。
公衆トイレの壁に書かれた電話番号に興味本位で電話をかけてみた。
すると「ようこそ秘密結社へ」と言われたので、
秘密結社(笑)の話を詳しく聞いてから冷静に設定の矛盾を突っついたら、
最終的に「アドバイザーになってください」って言われたけど流石に断った。
という作り話をポストした。
深夜3時、一向に「いいね」が増えない自身のポストを眺める堀田絵里に、肥大した承認欲求が倫理の外側から手招きをした。
承認欲求は、その当時悲惨な事件として世間の同情を集めていた交通事故の被害者を、誹謗中傷するようにけしかけた。
堀田絵里は文章を投稿した。
が、直後に削除した。