日本の若者は「商品」になったためにメンタルが弱くなったのではないか
日本の若者は様々な精神的な弱点を抱えています。
〈日本の若者の精神的な弱点の例〉
傷付きやすい
人間関係に気疲れしやすい
他者に劣等感を覚えやすい
マウンティングしてしまう
メンヘラになる
上記の精神的な欠点は私たちのメンタル不調に繋がっています。
日本は先進国で唯一、若者の死因の1位が自殺であり、不登校生徒の数が増えています。
なぜ日本の若者に精神的な欠点が見られるようになったのか。
原因は「商品化」による「絶対的な自己肯定感の喪失」です。
「商品化」「絶対的な自己肯定感の喪失」とは何か。順を追って説明します。
「商品化」とは
商品化とは、自分自身を誰かに購入される商品として扱うという意味です。
商品化は資本主義社会の構造によって起こる現象です。
資本主義社会の原則と構造
資本主義の原則は私有財産の保有と自由競争。
資本主義社会を生きる私たちには、投資家・経営者・労働者の3つの立場から私有財産を増やす方法があります。
〈私有財産を増やす方法〉
投資家としての投資
経営者としての商品販売
労働者としての労働
3つの方法のうち最も重要なのは、経営者による商品販売です。経営者が商品を販売しなければ投資家は投資先を失い、労働者は雇用されません。
経営者たちは自由競争が許されているので、
自社の商品を他社の商品よりも高品質にする
需要があるのに商品になっていないものを他社よりも先に商品にする
上記のどちらかで自社の商品の希少価値を高める競争をします。
投資家は経営者たちの競争を外側から眺めて、競争に勝ちそうな経営者に投資します。
では労働者はどうでしょうか?
労働者と商品は同じ性質を持つ
労働者は経営者が販売する商品と同じ性質を持ちます。
労働者は高い給料を払ってくれる(雇用環境のいい企業の)経営者に雇われるように、自分自身の希少価値を高めるための競争をします。
偏差値の高い大学に行ったり資格を取ったりこれから伸びそうな業界の会社に応募したり……。
労働者が自分自身の希少価値を高める。これは経営者が商品の希少価値を高める働きと全く同じです。
偏差値の高い大学に行く・資格を取る
=自社の商品を他社の商品よりも高品質にするこれから伸びそうな業界の会社に応募する
=需要があるのに商品になっていないものを他社よりも先に商品にする
資本主義社会において労働者は自らを商品として就職・転職市場に売り出すのです。
「絶対的な自己肯定感の喪失」
商品化した人間は精神的に不安定になります。
なぜなら商品化の過程で、無条件に自分を好きでいられる絶対的な自己肯定感が失われるからです。
商品化のプロセス
前提として資本主義社会の大多数は労働者であるため、親と教師は子供が労働者(商品)になる前提で育てます。
(子供を経営者・投資家にするつもりで育てる子供は滅多にいないでしょう)
親と教師は「将来苦労しないように」と主に子供の学力を伸ばして商品としての希少価値を上げようとします。
子供は、
他の子供よりも優れた成績を出す→親と教師が喜ぶ・褒める
他の子供よりも劣った成績を出す→親と教師がガッカリする・叱る
以上の経験を繰り返し「自分は人よりも優れていると評価されるべきなのだ」と学習。
この価値観は受験や就職活動などの競争によって深化し「自分が人よりも優れていると評価されること」がアイデンティティになります。
この状態になると「商品化した」といえるでしょう。
商品化によるメンタル不調
「人よりも優れていると評価されること」がアイデンティティの商品化した人間は、次の精神的な特徴を持つようになります。
〈商品化した人間の精神的特徴〉
他者から評価されないと自己肯定できなくなる
あらゆる事象を自分の付加価値にしようとする
他者と自分に優劣をつける
他者からの評価によって自尊心が大きく左右される
他者に弱味を見せられなくなる
先述の〈日本の若者の精神的な弱点の例〉は商品化した人間の精神的な特徴によって生じています。
他者から評価されないと自己肯定できなくなる
→「いいね」への渇望、メンヘラ化あらゆる事象を自分の付加価値にしようとする
→意識高い系、ファッション○○他者と自分に優劣をつける
→劣等感、マウンティング、陽キャ・陰キャ他者からの評価によって自尊心が大きく左右される
→傷付きやすい他者に弱味を見せられなくなる
→人間関係への気疲れ
若者の自己肯定感は世代を跨ぐほど低下
商品化によるメンタル不調が若者において顕著なのは、世代を跨ぐごとに親が子供を絶対的に肯定できなくなるからです。
大多数の親は見返りを求めない愛情を子供に注ぎ、子供は絶対的な自己肯定感を育みます。
しかし資本主義社会では他の子供と比較してしまうため絶対的な自己肯定感を育めません。
では商品化した子供が親になるとどうなるか。
子供の出来不出来を親自身の評価に加えてしまうのです。
アイデンティティに関わる分、親が子供の成績に応じて行う褒め・叱りは「将来苦労しないように」という動機よりも激しくなり、世代を跨ぐごとに「人よりも優れていると評価されなければならない」切迫感は強くなります。
さらに日本では長らく続く不況によって、生き残るために自身の商品価値を上げる必要性が高まっています。
以上の理由から日本の若者は「商品化」によって精神的な問題を抱えるようになったといえるのです。