移動販売トラックと、時超えのエネルギー源
そんなに昔でもないはずですが、
夏休みはほぼ丸々、山奥の祖父母の家にいた、私が小中学生時代の話。
一応避暑ということで、
宿題を担いで山にこもり、
働かざる者食うべからずを地で行き、
特に娯楽もない毎日を、
不満とかいう概念を知らず
過ごしていました。
山奥の事なので、当然店はとても遠く、
車もないので、
食料は基本自給自足です。
ただ、週1だったか、隔週だったか
たしか水曜日、
移動販売のトラックがやってきていました。
大きな音で演歌を鳴らしながら、狭い山道をゆーっくりやって来る間、
大人もソワソワして、
みんな道横の広い場所に集まり始めます。
トラックが着くと、
パカッと開いた周囲のパネルの
上半分が屋根、下半分が台になり、
あっという間にお店になりました。
大人が夢中になっていたのは、
たくさんの氷に詰められた生魚。
私はお菓子や、同じ氷で冷やされたチューチューアイスを真剣に見ていました。
住んでいる子どもがいない集落で、
知らない方でも、
きちんと挨拶ができたからというだけで、
お菓子を買ってくれたりしていたので、
お小遣いが無くても、
荷物持ちという体で、
期待する心を隠しつつ
ウロウロしていました。
多分ぜんぜん隠せていなかったけど。
なんで、私は今あそこにいないんだろう。
いつのまに、あそこでしゃがんでいた時から、こんなに時間が経ってしまっていたのだろう。
そういう、マイワープポイントの一つで、
大音響の演歌がトリガーとなって、
引き戻される場所です。
どうやら、
抑制しながらの期待、
というのには、
なぞの強いエネルギーがあり、
時代すら超える力を持つ、
そう、私は推測しています。
ああ、あそこに戻って、
どぎついピンクのチューチューアイスを、半分でなく、1本食べたい。