台風と米騒動
台風が来る。
と言いながらまだ来ない。
遅いんとちゃうん?ささっとスピード感持って過ぎ去って行かんかい。
最初の予測では、もうとっくに通り過ぎてるはず。
立ててる計画がズレるやないか。ま、大したことない病院に行くだけやけど。
天気予報の後、朝のワイドショーで、お米が不足していると報道していた。
気をつけて店の米棚を見てみると確かに、少ない。
でもまだある。
「米が無くなるらしいで」
と奥様に言ったら
「今のうちに買っておいた方がええんとちゃう」
と言うので
「天下の台所を預かる農林水産大臣が、心配することないって言ってるんや大丈夫やろ。むしろ昔のように、皆がパニックになって買い急ぐことこそが社会問題になるやろ」
と聖人君主の返しをする。
三日経って、家の米が底をついた。
早速近所のスーパーに買いに行くが、既に1キロの米ももう無い。
2軒3軒と周るが、どこの米棚にも売り切れの紙が貼ってあるだけ。
まずいだろ。
このままじゃあ。
お米が買えない方じゃなく、誰かの煮えた切った鬼のような顔が浮かぶ。
米ぐらい食わんでも死にはしない。
麺もパンだって食う物はなんぼでもある。
何故か言い訳ばかり考える。
帰宅し報告する。
案の定、
「アホか!買っといた方がええと言ったよね!何が大臣が言う事は間違いないや!こっちの言うことを聞かんと政治家の話しを信用して!
大臣に米でももろうて来んかい!」
何も言い返せません。
ネットを見ると、なんや売ってるじゃない。
しかし、値段を見てびっくり。
5キロ1万2千円!
30キロかと思った。ちょっと手が出ない。便乗値上げかい!
足元みるなあ。
翌日、台風が目の前に来ているにも関わらず、心の呵責に耐えかねて、他の店に行ってみるわと奥様に伝える。
と流石に、我が食い物に関する一大事とでも思ったのか、一緒に行くと言いだす。
しかし、5軒、6軒と周るが、どこも同じ空になっている米棚を見て、ため息をつくばかり。
数十年前にも見てる光景だ。
あの時はどうしたんやろ。確か、タイ産かカリフォルニア米を買ったような気がする。あまり覚えてない。
喉元過ぎればやなあ。
「別に死ぬわけじゃないし、食うもんは他にいくらでもある。
ワテは米食わんでも構わんし、逆に米食わんでどの位持つか試しにやってみんか?なかなかないチャンスや」
とポジティブに車のハンドルを回しながら言うと
「私はご飯がなければ、せめておにぎりを食べればいいだけ!」
と、訳の分からない事を言い出す。
既に頭がお米欠乏症にでもかかってるんとちゃうか。
と、そこへ弟からメールが届く。
◯◯店はあるらしいで。
いや、その店は朝一番に行った所で無かったわと返信する。
今、隣のおばはんが米袋を見せながら、あったあったと嬉しそうに見せに来たと言う。
あそこの店員も、いつ入るかうちらもわからへんって言ってたやん。
と文句を言いながらも、直ぐに、方向転換し車で向かう。
駐車場に着くと、カートに米袋を乗せたおばちゃんがいるではないか。急いで朝には空だった売場に掛けって行く。
すると5キロの米袋が山積みしてあるやないかい。
でも見る見るうちに減っている。
何故か、その周りで電話をしてる人が多い。
そうやな。情報共有は大切や。
お一人様一袋と書いてある。
一家族じゃないんだ。
二人だから二袋でもええんちゃうと奥様が言う。
え?今、一袋あれば充分やろ。
と思ったが、目の前の米を見ると、もうここでは大臣の言う事は信じない。
それぞれレジに持っていって初めて値段の高さに驚く。
いつもの倍じゃない!
が奥様は平然と
「あっただけ、ありがたいと思わんと」
確かに。
やれやれ、これで、当分お米のことで嫌味を言われんで済むわと胸を撫で下ろす。
と、
家に帰り、買ったばかりの米袋を見ながら、
「私が言った時に買っておけば、こんなに高いことなかったのに!」
まだ、言うんかい!
今回の台風、ちゃちゃとスピード感持って通り過ぎんかい!
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