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爺さんの一日、一景、一笑 #21 続 張り紙

この作品は続編です。まず「#10張り紙」をお読みいただいた後にお読みください。

 字の読めない狸は、その後もわが家の前の溝を、自分のトイレとして使い続けた。
 毎日、溝を見る度に、
『またしてるわ!』
と1メートル下の溝に降り、糞を取り、その後、ホースを取り出しきれいに水で流す。
これ水洗便所だろうと思う。
 この間、じっと手を拱いているわけではなかった。
木酢液や狼の臭いのする液剤を買って試してみたが、さっぱり役にたたなかった。
 天気のいい日は必ず糞はあったが、なぜか雨が降った翌日は見当たらなかった。どうやら、雨でうっとうしいのか、濡れるのが嫌だったのか。
まさか、こっちの雨の中の手間を考えてくれたわけでもなかろう。
 梅雨が明け、晴天が続いたが、いつの間にか、全く糞を見かけなくなった。
 初夏になっていた。
いなくなったのか、それとも場所を替えたのか、まあいい。
楽になるのにこしたことはない。
 ところが、ある日、またもや溝に糞を見つけた。
『え~。また帰ってきたのか。』
半面、なぜか、ちょっと笑みがこぼれた自分がいた。
『生きてたんだ』
 それから、またもや、やっかいなトイレ掃除の日々が続く。
やがて、庭の柿の実が所々熟し、二日に一個、ポトンと地面に落ち始めた。狸の糞よりよっぽど臭くはないが、そのままにしておくと臭いが出るので、拾っておく。
 ある日、いつものように、糞をかたずけていると、なんと糞の中に柿の種があるのを見つけた。
『え?こっちが知らぬ間に、狸に餌をやっていたということ?!』
灯台下暗し。
つまり、もしかして、俺が狸を飼ってたってこと!
になるわけ?

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