最近の記事
19,食卓に並ぶディリティリオ
シリーズもの19曲目です。 「03,ディーワ・クアエダムの秘薬」のアレンジとなります。元々のチープさを残しつつつかみどころのない曲になりました。物語終盤で徐々に張り巡らされていた伏線が回収されていく様を想像しながら書きました。 以下この曲の物語。 「゛うちの近辺じゃよく取れる雑草を使った痺れ薬だ。あれが薬になるなんて、俺は知らなかったよ。乾燥させたら適当な食用粉に混ぜて固めて団子にするだけで良いんだ。量もなにも考えなくていい、簡単だろ。乾燥した状態の草が口に入ることが大事なんだそうだ。゛ ゛今は中々食べ物が手に入らないんですよ。親や兄弟の為にいくつかの町をまわったこともありましたが、食べ物を置いている店を見つける事すら難しくて…あっても高額で買う事はできませんでした。゛ ゛夫から見れば口うるさく節約を押し付ける私がとんでもない守銭奴に見えていたのかもしれません。゛ この街の家々の台所で必ず見つかるハーブを見ながら…今まで聞いた話を思い出していた。」
マガジン
記事
16,イポゲイアの軽便鉄道
シリーズもの16曲目です。 地下を走る小さな列車に乗って冒険するイメージで書きました。 ゴトゴトと音を立てて走る列車の音を耳で追いかけながら列車の旅を楽しんでいると、急に外の景色が変わってワクワクする情景で書いてます。いつもより表情豊かな曲になった…気がします。 以下この曲の物語。 「薄暗い地下道の奥の奥。代り映えのしない景色が突然変わる場所がある。それは小さな小さな鉄道の駅。敷かれた線路は細く頼りないが、停車しているぁ車両は小さくとも立派な蒸気機関車に見える。列車の側面に着けられたプレートには誇らしげに「メサストブカリ」と書かれていた。 三両目の右側の三列目の窓際、其処が僕の定位置だ。列車に乗るのならこの場所は外せない。 …意味は特にないけれど。」
エリュシオンの夜空に想いを馳せて
シリーズもの14曲目です。 限りなくシンプルな曲を目指しました。目指しましたが、出来上がった曲を聴き直すとシンプルではなくなった気がします。テーマは夜空と、仄暗い望みです。明るく成り切れないメロディがお気に入り。過去に作った曲のメロディをがっつり入れてます。 以下この曲の物語。 「それは晴れた星の綺麗な夜だった。多くの子が窓から外を眺めていたのを覚えている。星を見ていたのかもしれないし、出る事の出来ない外に焦がれていたのかもしれない。 一人、窓際で空を見上げ手を胸の前で合わせて何か呟いている子がいた。その声はとても静かで、まるで何かに語り掛けているように私には聞こえた。声をかけると、その子は笑顔で教えてくれた。 「お空にいる母様に御祈りをしているの。私も早く母様のところに連れて行ってくださいって。」 「母様いつも言ってたの。迷子になっても必ず迎えにいくからねって。」 「だからきっと、母様迎えに来てくれるの。お空のその上から、きっと迎えに来てくれるの。」 他の患者たちが憂いている中で、この子は曇りのない笑顔で夜空のその先にいる母に祈りを捧げている。 気が付くと私も彼女の横で空に祈りを捧げていた。 たとえ町に広がる病が収まらずとも、住人たちのその先が幸せなものでありますように。最期のその先が、今の彼女が見せるような笑顔であふれる場所でありますように。」
Re01,絵描き猫ニルギリ
過去に書いた曲『絵描き猫ニルギリ』のアレンジです。 音源が変わってちょっと豪華になりました。絵を描くことを生業にしている猫をイメージして書いた曲です。わちゃわちゃガチャガチャと楽しそうで、どことなく繊細な曲になりました。特にループ前の盛り上がりはガチャガチャさせ過ぎて一部ドラム音がノイズのように聞こえる…。 以下、『絵描き猫ニルギリ』の物語。 「道行く猫を目で追いながら散策を続けていると、小さなの画廊を見つけた。 外にまで絵画や彫刻が飾られた画廊の入り口に一匹のエプロン姿の猫が佇んでいた。 "おや、猫以外がいるのはめずらしい" 猫はこちらに目を向け微笑む。 何となく相手にしてはいけない相手に声をかけられたような気がした。 飾られている小さな木彫りの鳥を手に取ると、猫はこちらに歩み寄ってきた。 "初めましてではあるけれど、君たちの話を聞かせてほしい。君たちは何をしにこの国に?どこから来たの?君たちは何処で生まれたの?今は何を感じているの?この彫刻、どう思う?" 猫は名乗りもせず口早に質問を投げかけてくる。 あぁ、本当に相手にしてはいけない相手に声をかけられたようだ。」
13,賢者メターニア
シリーズもの13曲目です。 特にひねりもなく、純粋に聞きやすいメロディアスな曲を目指しました。 イメージは影のある賢者です。凛と澄んだ聡明さを感じさせる雰囲気を纏いつつも、語るその言葉の端々に感じるものは過去にあった罪を感じさせるものばかり。そんななんとも言えない雰囲気を表現…できているでしょうか。 以下この曲の物語。 「あぁ、こんな所でお会いするなんて…。 お久しぶりです。私がここに来てどのくらいになるのでしょうか、貴方は私を覚えていらっしゃいますか。 …貴方が此処に降りてくる事なんて今まで一度もなかったのに、そんな貴方が何故ここに…。あぁ、なるほど。あの町について調べていらっしゃるのですね。私もあの町の出身です。話せる事は何でもお話しますよ。 そうですね、私について改めて話しましょうか。かつてあの町で医者をやっておりました、私の名前は…忘れました。此処に落ちてから暫くは私も周りの人たちと同じように意識がぼんやりしておりまして…。こうやって会話できるほど自身を意識できるようになったのも最近なんですよ。だからか記憶が少し曖昧でして。 町の話をしましょう。ある日を境に病人が増えたことを覚えております。確か、行方不明者の噂が広まり始めた頃からだったような…。皆同じような病状でした。そうですね、なるべくわかりやすくお伝えするなら…最初は風邪のような症状で、徐々に意識が薄れていくんです。病状が悪化すると完全に意識が無くなって眠り続けるような状態に…最期は静かに息を引き取ります。病気はあっという間に町中に広まって…私の最後の記憶通りだとするならあの町にはもう誰もいないのではないでしょうか。 …私も、きっと病気にかかったから此処にいるのでしょうね。」
12,焦がれ集まるマリュス
シリーズもの12曲目です。 可愛く、ちょっと不気味な曲を目指しました。無邪気な悪意がテーマです。聞きやすく、少し爽やかな空気も出ていて、色々の側面が見える曲ではないでしょうか。 以下この曲の物語。 「此処は相変わらず臭う。城の地下に広がる此処を、僕は牢獄のようだと思っている。 至る所に人がいる。…座り込んだり、立ち尽くしたり。皆何かを常に呟いている。後悔だったり、懺悔だったり。そんなものじゃ此処を抜け出す事は出来ないのに。後悔、懺悔のその先。自身の想いや願いを持てれば、此処から引き上げる事も出来るのに。 今はその後悔、懺悔の物語を集める事の集中しなければ。きっとそこに知りたい事があるはずだ。」
11,燻り続けるフォティア
シリーズ11曲目です。 かなり自由な曲調の曲となりました。テーマは夢と焦りです。明るいような、少し物悲しいようななんとも言えないメロディになった気がします。 以下この曲の物語。 「すまなかった…許してくれ…そんなつもりじゃ、俺は優柔不断なんかじゃ、ない。あれは偶然だったんだ…。 最近は売れる物を手に入れるのも一苦労で…森を、彷徨っていたら倒れている野兎を見つけて…。そこの森は、妙に弱っている獣が多くて…そこ獣たちを拾っては捌いて売る事で、何とか生活を繋いでた。家の子供たちの為にも、稼がなきゃいけなかったんだ…売れるものは何でも売った…。 …あの日、森に子供が落ちていた。まるで眠るように地面に蹲っていて…。それを見て、思った。これは高く売れると。人買いに売ってもいいし、薬師に売れば材料として買い取ってくれるだろう。俺は迷わず、その子に抱えて家に帰って…。家のいつもの解体場に子供を寝かせて…。 そこで俺は怖気付いた。人なんて売った事も捌いた事もない。他人の子とはいえ、その幼い顔を見ていると躊躇いを感じた。バレて捕まればどうなるか分かったものじゃない。…森に返せば、自ら目を覚まして家に帰るかもしれない。けれど、そんな事をすれば大金を得る機会を逃す。迷いに迷っているうちに、子供の呼吸が荒くなっていることに気が付いたんだ…。 俺は何もしていない!子供がっ!勝手にっ!弱ったんだ!俺が手を下したんじゃない。…あの子は勝手に死んだんだ。」
10,目覚めを求め彷徨うアゴーリ
シリーズもの10曲目です。 少しシリアスに曲になりました。夢の中、不安な気持ちを必死に抑えながら彷徨う幼子をイメージして書きました。ふわふわ漂いながらも、出口の見えない不安感と何となくどこかに希望がある気がして諦められない子供らしさが出せた気がします。 以下この曲の物語。 「僕は何で此処に居るんだっけ。…そもそも僕は何処から来たんだっけ。覚えている事…一番昔の思い出は、母さんと父さんと妹と。 そうだ、母さん言ってた。お前はよく食べるから困るって。せめてお前さえ居なければ、皆飢えずに済むのにって。…その言葉が、始まりだったような。 僕は、そうだよ。だから僕は考えたんだ。横でいつもお腹を空かせていた妹を見てたから。せめて森に行けば、何か食べられるものがあるかもしれないって。何度も森に連れて行ってもらって。ポケットに入るだけ、たくさん木の実を取って、妹と分けて。…少しでも皆の役に立ちたくて。でもそれは母さんには内緒。だって、母さん僕が何かする事を嫌うから。お前はいつも余計な事をするって、よく言われたから。森に行くのも、遊びに行きたいって言って連れて行ってもらってた。 そう、…そうだ。あの日もそうやって森に連れて行ってもらって、そしたら見つけたんだ。白くて丸いお菓子。小さい頃はよく買ってもらってたお団子を。一口食べて、口いっぱいに広がる甘さに涙が出そうになった。お腹がいっぱいになるのを感じるくらい食べて…そしたら、とても悲しい気持ちになって。どうして僕は、いつもお腹を空かせながら、母さんに嫌われながら、こんなに一生懸命に生きているんだろう。思えば思う程涙が止まらなくて。 だめだ…、考えてたら眠くなってきた。…考えなくちゃいけないのに。なぜかは解らないけど、せっかくここまで思い出したんだから、もっと考えたいのに。…もう眠い。」
07,貴方の為のドミキリウム
シリーズもの7曲目です。 キャッチーな曲を目指しました。結果いつも通りの曲になりました。ちょっと不気味で、それでいて切なくなるような曲を目指しました。 以下この曲の物語。 「おや、貴方が部屋を出ているなんて珍しい…、何処かへ向かわれているのですか。私は変わらず此処に訪れる人達の話を楽しく聞いて回っております。 どうも昔から好奇心を抑えられないものでして…。丁度あなたにも話を聞いてみたい事があったのですよ。 貴方もご存じの通り、私は此処に来た日から色々な人へ様々な話を聞いているのです。"此処"へ何をしに来たのか、どのようにして"此処"へやってきたのか、"此処"に来るまでに何か見たか。…今の私の興味は"此処"に向いているのですよ。 それで話を聞いていくうちに、いくつか気になる点が出てきました。 一つ、皆此処へは願いを叶えにやってきたと言いますが、私が今まで見てきたこの城を去る方の中に何かを得たと言って去った人を見た事がありません。去る方は"もう振り返らない"だとか"今度こそは大丈夫"だとか、どちらかというと過去のしがらみから解放されたような事を言う人ばかりでした。 一つ、此処辿り着くまでの記憶を持っている方に私は会ったことがありません。皆気が付くとこの建物の前にいたらしいです。…でも皆自分の足で此処に来たって必ず言うんですよね。 一つ、この建物の外観。皆が話すこの建物の外観が誰も一致しないんです。古い古城のようだと言う人もいれば病院のように見えたと言う人もいて…私にはかつてお仕えしていた方の屋敷に見えました。皆同じ建物の中にいるはずなのに皆が語る建物の外観が全然違うんです。 此処は一体何なのでしょうか。そして貴方は一体誰なのでしょうか。…何故かはわかりませんが、初めて会った時から懐かしさのようなものを強く感じるのです。」