【ショートショート】男たちの戦い
「俺に勝とうなんて、百年早いですよ」
虎鉄は、不敵な笑みを浮かべる。
「うるせえ……! まだまだ、戦いはこれからだぜ!」
雪之丞は、勝負を諦める気など毛頭ない。
「あはははは! くらえーっ!」
虎鉄がパンチを繰り出す。雪之丞は、それを素早く交わしながら壁を蹴り、小高い障害物の上にある、丸みのある物体の上に乗る。そこは、上部があたたかく、妙に落ち着く場所だった。
「くそう……! ここは俺の縄張りだ! 貴様には渡さん!」
雪之丞は、悔しそうに叫ぶ。
「そこも、俺の場所です!」
虎鉄も、叫んだ。そのときだった――。
「こらあっ! あんたたち! なに炊飯器の上に乗ってるの!」
「ニャー!」
猫だった。
虎鉄が、トラ猫、雪之丞が、白猫。
「まったくもう! あんたたちは、いたずらばっかりして!」
「ニャー」
雪之丞があっさりと抱きかかえられ、戦いに幕が降ろされた。
「勝負は、おあずけです」
「あの場所は、俺のものだからな!」
二匹は並んでご飯を食べる。今日はご主人のご機嫌がよいらしく、カリカリの上に美味しいトッピングがされていた。
「虎鉄―! 雪之丞―! ご飯美味しかったー?」
「美味しかったー!」
二匹は声を揃えて返事をした。
外は晩秋の夕暮れ。黄金色の木の葉がそっと舞い降りた。
「夜は長いですからね」
「とりあえず、寝るか」
空腹も満たされ、二匹は丸くなった。
そしてまた深夜、二匹の熾烈な戦いの幕が上がる――。
◆小説家になろう様、pixiv様、アルファポリス様、ツギクル様掲載作品◆
※結構前に書いたショートショート。私的には結構好きな話ですが、現在に至るまで、あまり反応はよろしくない……。複雑な思いを抱きつつ、noteにも載せて少しでも日の目を見るよう足掻いてみる。合掌。