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【演劇】2025.2.23下北沢でタカハ劇団を観た

今年初の演劇はタカハ劇団。
初めて観たのが6年位前で同じく下北だが今回の名門本多劇場ではなく少し小さめの駅前劇場で「ネジ工場」。
目の前で生身の人間が演じているのを観るという経験もだが作品のテーマについて考えたくなるようなタカハ劇団の舞台は毎回楽しみにしていて、今回で4回目。
時代は日本が暗い時代に足を踏み入れようとしていた大正時代で、死刑が確定している凶悪犯の脳を解剖し科学的に研究することで、危険な人間を排除し国家にとって必要な(都合の良い)人間を増やしていこうというナチスに通じる優生思想がメインテーマ。
当時の時代背景を踏まえた今では許されず消滅した差別用語も出てくるが、根底にある差別的思想は、今のほうが節操なくSNS界隈で盛んに発信され、刺激的な発言で扇動する人間がそれなりに支持されたりもしている。
相模原障害者施設の犯人は当時の首相に対し、貴方のために国にとって不要な人間を排除するといった手紙を送っていた。
登場人物の医者達による、この行為は犯罪か研究かの葛藤や議論を観ながら観客である我々は自身の中にある良心に疑問を抱かされ、危険な思想に惹かれていく。
議論が尽きた後、追い詰められた助手の自らの出自の告白で幾重にも重なる人間の倫理や尊厳について深く考えさせられ、そしてラストの大どんでん返しまで惹き込まれていく。
自身にとっての正義が脆く、差別は『マシになった』とはいえ過去に清算されたものではなく、戦争が身近なものでなくなった我々が日本人は何かにきっかけですぐに簡単にあの時代に戻ってしまう国民気質であることを否応なしに突き付けられる。
打算や窮地を前にした人間の姿、潜在的な意識、今も根強く残る女性軽視と、観た後にいくつものテーマについて考えがよぎる余韻が残る贅沢な舞台だった。